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ぼくは電信柱

作者: さくら

いつも何気なく景色に中に入っている電信柱さんや電力柱さん共用柱さん達のお話です。

ぼくは電信柱。通信系の会社の柱です。

古い街の、細い道の角に、気がついたときには、もうここにずっと立ってました。

毎日何かしら、小さなハプニングがおきます。

昨日は車が曲がる時 こすられました。

今朝は眠たそうに歩いてた人がぶつかってきました。

「頭おもいっきりぶつけてたけど大丈夫かなぁ。」

午後は、ふいに小さな手をつかれ、見ると黄色い帽子かぶってランドセルをしょった小さな子どもがもう片方の手でなにやら靴を脱ぎはじめました。小石が出てきました。

「小石が入って痛かったんだ。この子、よく見かける子だ。最近までベビーカーに乗ってたのに、いつの間にか小学生になってたんだ。時間の流れは早いなぁ。」

「ぼくのかげでなら車のこと気にせずともできるね。危なくないね。少しはぼくも役にたってるかな。」

その子は靴を履きなおして、ぼくを見上げて「電信柱さん、ありがとう」と言ってくれました。横で待っていたお友だちが「電柱って言ってよ、電柱って略したほうがカッコいい。」と言いました。

「電信柱ってかっこよくないんだ。」ちょっと傷つきました。

確かに電柱のほうが響きがカッコいいけど電柱は電力柱の略で、ぼくは電信柱だよ。

気がつくと足もとがぬれてました。かわいらしい犬がいます。

犬におしっこかけられるのは日常茶飯事。

そして、このあいだは、夜中、ぼくに、もたれかかってきて仕事の愚痴をしゃべっていった酔っぱらいの人もいました。何も返事をしてあげられないけど、ささえるくらいはできたかな。

「ちゃんと家に帰りついたかなぁ」心配です。

ある日、空き地だった反対側の角に新しい家が立った。その角に花壇ができました。その中に新しい共用柱が立った。

みるみる仕上がっていった。

いつの間にかその柱のまわりはかわいくてきれいな色とりどりの花に囲まれていった。傷ひとつないピカピカ。

急に、こんな古びてる自分が恥ずかしくなってきました。

あの花壇の中の共用柱は、車にこすられることもなければ犬におしっこをかけられることもない。

自分がこすられたり、かけられたりするたび、恥ずかしくてしかたがない。

まわりの環境でこんなに違うのか。

それからというもの、情けない日々を送っていました。

そんなある日、力強くポンポンとたたかれ、

下から上を見上げてから、その人は「いいね。いい味出してるね。」と話かけてくれました。

もちろん返事はできません。

おもむろにカメラを出してカシャカシャパシャパシャと写真を撮りはじめました。その人は花壇の中の柱には目もくれず。

今はデジカメで、すぐ確認できるようになったから本当に便利になった。ついのぞきこんだ。古びたぼくが一番手前で一番大きく写ってる。

驚きました。レンズを通してみるとこんな風に見えるんだ。

電信柱や電力柱や共用柱が乱立するこの古い街並みが夕焼けに映えてとても渋くかっこよく写っていました。

写真におさめると、古びたぼくに歴史を感じました。

その人が「いい写真とれたよ。ありがとう。」とぼくに向かっていいました。

なんだか誇らしくなりました。

久しぶりに気分が晴れました。

しばらくすると、

あれ?このあいだの、酔っぱらってぼくに会社の愚痴をしゃべっていった人だ。

また、ぼくに、もたれかかってきてしゃべってる。

こんなぼくでも役にたつ?こんなぼくでよければ、いつでも愚痴聞くよ。

できることなら、よしよし してあげたい。

聞くくらいしかできないけど、相づちもうってあげられないけどと、酔っぱらって もたれかかってきてる人の 会社の愚痴を聞きながら 夜が更けていきました。






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