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英雄の記憶は空と海の狭間に



今日は久し振りに体調が良い。

僕を蝕む痛みたちが、休暇でもとったみたいに、体中が清々しい。


ベッドから起上がって、窓の外を見る。

そこには海が広がっていた。太陽に煌めく水平線が、僕のところに暖かい風を運んでくる。


僕は、あの場所にもうすぐ帰るのだろう。

静かで優しい世界に僕は沈んでゆくのだろう。


それは悲しい。

もっと、生きていたかった。あの場所に帰りたかった。

でも、僕にはそこへ行くための足が、ない。


戻りたくても、もう二度と、柳ケ瀬には戻ることはできないのだ。大切な人達にも、会う事は叶わない。


クエスは今どうしているのだろう。

今でも後悔している。あの子の本当の気持ちを汲み取らないまま、置いていってしまった事を。あれが、永遠の別れになってしまうなんて思わなかったから、僕は、置き去りにしてしまった。

ちっちゃいけど、頑張り屋で負けず嫌いで、けど、本当は寂しがり屋だったあの子の本当の気持ちを、知っていたはずなのに。


本当に、ごめん。

僕は、結局は君にとっての英雄にはなれなかったね。

世界は救われた。でも、沢山のものを失い沢山の事をやり残してしまった。僕は、まだ、ただの弱い人間だったんだ。悔しいな、本当に悔しいよ。


君のために残された手段は、ひとつしかない。

この海に祈りを捧げる。君のこれからの幸せを、願うこと。それが、僕ができる最後の「道」なのだ。


クエス、成長した君は今でもあの場所にいるのかな。

あの柳ヶ瀬の街で、君は今でも僕達の記憶を大切に守っていてくれるのだろうか。あの、天使のような笑顔で。


ああ、僕が涙を流しちゃいけないのに、涙が溢れてくる。

この世界が理不尽で残酷なのは解っている。解っているのに、こみ上げてくる。




















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