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ぼくと彼女の変わった日常。  作者: ねむ。
変わってしまった日常。
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巡る。

「アリスー、散歩行こー?」

「じじいか。今何時? 12時〜♪ ご飯ー!」

「ご飯とは言えどもカップ麺だろ」


カップ麺の食べすぎはよくないんだぞ!

リン酸塩はカルシウムさんと仲良しでね、おてて繋いで体外に出ていくんだぞ!


「ラーメン〜♪ 焼きそば〜ん♪ ……って、ない!」

「そりゃお前、そのペースで食べてたらストックなんてすぐ尽きるよ……」


いやはやめんどくさいことになったな。


「買いに行くか……」

「行く!」



二人並んで雪道を歩く。そういえば今年の冬は雪が多い。外に出る度に降っている気がする。

向かうはいつぞやのコンビニ。


「何買うか決めとけよ」

「うん。やっぱりラーメンかなぁ」


しばしの沈黙。雪を踏む音だけが耳に届く。


少し前を歩くアリスの頭には三角の耳がある。腰からは尻尾が生えている。隠せと言ってもぼくの前では常に出している。

彼女は人間じゃない。異世界に生きてきた人外の女の子。


人間じゃない女の子と共に生活するなんて、ぼくが信じ求めた日常とは程遠い。


「アリス、今楽しい?」

「いきなりどうしたの?」

「いいから。答えて」

「楽しいよ、とっても」


そう答えたアリスの声は少し弱々しかった。


現世と異世界は背反する。


ぼくは魔力を持ち、異世界へ行った。

そしてこちらの世界に住んでいる身だから魔力を持っていても世界に弾かれることはなかった。


ならアリスは?

魔力を持ちこちらの世界に来た。

もともと現世で過ごしていたわけではないから適応はしていないはずだ。

その証拠に、異世界やコトトの夢の中に行ったときには表情が明るくなっていきいきとしていた。


「でも……」

「わかってる。わかってるから」


ふふっとアリスは微笑んだ。


「私、もうあまり長くないと思う」


雪を踏む音すら止んだ。

静寂の中に鳴るのはアリスの不規則な息遣い。


「ごっ、ごめんね。行こ、早く行こ?」

「うん」


何だよ。アリス、ふらふらじゃないか。

カップ麺なんてどうでもいい。早く春都に戻ってゆっくり休むべきだろ? 考えたらわかる───


───どさっ。


俯いて考え事をしていた最中、前からそんな音がした。

顔を上げたくない。嫌な現実を見たくない。

もしかしたらアリスがお得意のドジを発動したんじゃないか?

顔を上げたら照れ笑いを浮かべているんじゃないか?


淡い期待を寄せつつゆっくり顔を上げてみるが、現実は甘くない。


「なぁ…嘘だって、嘘だって言ってくれよっ!」


薄く積もった雪の上に横たわるアリス。


皮肉なことに、そこはぼくらが出会った場所だった。

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