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ぼくと彼女の変わった日常。  作者: ねむ。
変わってしまった日常。
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二刀、一撃

「レミアァァァァ!!」


ふっと抜ける凄まじい吹雪。

コトトが望まない限り、風の吹かない夢の世界に吹雪が吹いた。ヒュオォォォ……っと吹き抜けた風は富豪のボディに纏わりつくように形を変え、輝く。


「奏唄……」

「ん? どうしたの夜枷?」

「魔法、使えんじゃねーか」


富豪のボディはところどころ凍てついている。全身にまんべんなくとはいかないが、拳から胸のあたりにかけて厚い氷が張り、ぼくの「護れ」という願いをしっかりと叶えてくれていた。


「動カナイ……!?」

「動かなくていいんだよ」


空気中の冷気が生んだ氷の刀を握って構える。


「お前が消えても、誰も困らない」


空間から刀を引き抜いて構える。


「待テ、貴様ラ、コンナコト許サレンゾ!!」

「「知るか!」」


一歩、同時に踏み出した。

徐々に上がるスピード、後ろに流れる世界。隣で走るのは、ぼくを殺そうとした殺し屋の少年ではない。


ぼくの友達だ。


「夜枷!」

「奏唄!」


「「せーのっ!」」


氷の刀と鉄の刀。作り手も素材も違うが、二本は同じように夕陽の光を受けて輝く。

そして、ぼくは右側を、夜枷は左側を流れるように斬る。


確かな手応えと、富豪の最期の叫びを聞く。


夜枷は、泣いていた。



夢から出る。薄暗い工場の中、さっきまではなかった黒い立方体が目に入った。ロムが隠していたのだろう。


そして、立方体にもたれかかる人影。


「この匂い……ウォシュレット?」


アリスが問うと、すぐに返事があった。


「はい、ウォシュレットです」


歩いてくるウォシュレット。クウヤとウォシュレットは万が一増援がきた場合に対抗できるように展望スペースで待機のはずだ。なぜここにいるのだろう。クウヤの姿も見えない。


「おい奏唄。誰だこの竜人」

「ああ、こいつはウォシュ……」


「春都の騎士団長ですね〜?」


白仮面を被った長身の男が悠々と歩く。ウォシュレットもかなりの長身だと思っていたが、白仮面の男……ロムの方が少しだけ大きいように思う。


「久しいな白仮面」

「くっくっ、相変わらずお元気そうで」

「もう、その姿でなくてもいいだろう?」

「それもそうですね〜」


仮面を外すロム。ウォシュレットは小さく微笑んでいた。


「お久しぶりです、騎士団長さん」

「久しぶり。ロムちゃん、少し大きくなった?」


この口ぶりは。

夜枷もぼくと同じことを思ったようで、こちらを向く。


「なに、あいつら知り合いなのか?」

「知らね。おい! ウォシュレット!」


手招きしてロリコン(仮)を呼んでみる。


「はいはい、何かご用で?」

「ロムと知り合いなの?」

「まぁ、話すと長くなります。過去に会ったことがある、それなりに仲はいい。こんな解釈で結構です」


そのとき、アリスが焦ったような声で呼んだ。


「奏唄! これ……結界装置じゃない……」

「結界装置じゃない? どういうこと?」

「結界系の魔力の波長じゃないのよ。ねぇコトト?」


コトトは小さく頷いた。


「俺とロムは結界装置を護れという任務を受けたんだ。結界装置だと思ってたんだが、違うとするとこれはなんなんだ?」

「これは……爆弾……」


凄まじい威力を秘めた、爆弾。


視界が白く染まる。


言い表し難い轟音。


何かの圧に呑み込まれる感覚。

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