対面
PM5:45。ガチャと扉が開いた。
どこの扉かって?そりゃもちろん……
「やべぇ、姉ちゃん帰ってきた! 尻尾隠せ!」
「んふ!?」
ちなみに上記は、勝手に冷蔵庫から引っ張り出してきやがったみたらしをこれまた勝手に頬張っているアリスの声である。
「たーだい……」
「じーっ」
明らかに、姉ちゃんとアリスの目があっている。
「Oh……ありえないぜ」
デジャビュ!!
「あはは、おかえり姉ちゃん」
「おかえりなさい、お姉さまっ♡」
ぼくは、アリスに会心のエルボを叩き入れる。
『なんだよその迎え方! 勘違いされんだろ!』
『だってお父様がこういう風に迎えろと……』
「奏唄……」
「はいっ!」
「あんたも隅に置けないわね!」
「は?」
困惑するぼくをよそに、姉ちゃんはアリスの肩を持って前後に揺らす。アリスは「あうー」とか言いながらされるがままに揺れる。
「私は奏唄の姉の実夏!」
「えと、私はアリスです」
「アリスちゃんかー!」
興味津々!といった様子の姉貴。このまま放置しておくと酒とか持ってきそうなので口を挟む。
「あの、姉ちゃ」「お姉さまっ!」
挟みきれなかった。
「いきなりどうしたのアリスちゃん?」
「わたっ、私をこの家に住ませてください!」
なんてことを言っとるんだこの女!口の周りにみたらしのたれ付いてるし。拭けよ!
「父さんに聞いてみないとわかんないけど、まぁいいんじゃない? こうなったら、頑張って夜ご飯作っちゃう!」
いやいや、おかしいでしょ。普通いきなりこんなこと言われたら「はい?」ってなるだろうよ。何が「まぁいいんじゃない?」だよ、自然すぎんだろ!
「奏唄、母さんたちにできるだけ早く帰るようにって連絡しておいてね」
「はいよ」
今時珍しいものでもなかろうに、アリスはメッセージを入力するぼくの手とスマホに熱い視線を送っていた。