三つ目
「うーん、そう言われてもなぁ……」
「この街、結構広いものね。私たち五人で手分けして捜すとは言っても、少し無理があるよね」
コトトから出た指示は、手分けして結界の発生源を突き止めると言うものだった。ウォシュレットの「姫を一人にするのは不安だ」という言葉を受けて、こうしてアリスとその辺に転がっていた自転車に乗って街中を散策しているわけだが、全く進展しない。
「結界装置って、どのぐらいのサイズって言ってた?」
「一辺が1.5メートルくらいの立方体だって。一番スタンダードなタイプがそれみたいよ。どうして?」
「あくまで機械なんだし、野外に放置することはないよね。サイズによっては普通の住宅には入らないんじゃないかと思ってさ」
「ふむふむ。で、奏唄はどこかそのサイズの物体を運び込める建物を見つけたの?」
「うん。だいたいの見当はついてるよ」
厳密に言えば、候補は数ヶ所ある。
一つはさっきまで居たショッピングモールの地下駐車場及び、搬入口の先の倉庫。
だが、そんなに近くに発生源があるのならすぐに気づいたはずだということでその可能性は消える。
二つ目はビルの屋上。
建物の中に入れることはできないが、屋上なら障害なく設置することができる。でも、雨が降るなど天候的なリスクを考えると、これも消える。
「そして、一番有力な三つ目は……」
「うん、三つ目の場所は……?」
ウォシュレットは展望スペースで夕陽の神々しい光を浴びつつ、隣に佇み外の景色を眺める銀髪の少年を見る。すると、少年が言葉を発した。
「誰が、何のために……」
クウヤの頭には、これが引っかかっていた。
カナタが住んでいるだけの街。これと言ってこの国に関与するような施設はない。なのに、結界が仕掛けられた上にダミーの奇形生物まで用意されていた。
誰かのイタズラにしては大掛かりすぎる。
「カナタ……あいつは何者なんだよ……」
「奏唄様は普通の高校生男子ですよ、クウヤ様」
「いや、あいつは普通じゃないよ。何せ魔力を持っている。そもそもアリスはこの世界に来るのが初めてだった。にも関わらず、カナタはアリスを人として捉えた」
本来ならば。
この世界と俺たちの世界は全く異なるものだ。 物質の存在認識も大きく異なる。俺たちは干渉を重ねることによって認識され、認識できるようになったが、カナタは素人だ。初っ端からアリスを認識できたのはどうしてだろう。
───少し、注意深く観察するべきか?




