世界〜斬破〜
「とは言っても、俺は何もしないんだけどな」
「何なんだよ、働けよ」
「無理だろ!? 人に魔力もらわねぇと戦えない俺に何ができる?」
「盾? 踏み台?」
「……お前、意外とひどいよな。まあ、俺たちは何もしない……というか、できない。プロをお呼びしているのでね」
現れたのは、久々に会った(気がする)紫の少女。
「コトト? 何でお前がいるの?」
「……呼ばれた」
クウヤのほうを向くコトト。ぼくもクウヤを向く。
「呼んだ」
「人任せかよ!」
「いやー、ねー? 一番手っ取り早いでしょん」
確かにそうだ。コトトは夢という擬似世界を行き来することができる。今回も夢の中を通って来てくれたのだろう。それにしても、どうやって連絡したんだろ。携帯圏外なんですけど。聞いても答えてくれなさそうだから聞かないけど。
「確かに、夢に似てる」
「やっぱりか。どうだ? 破壊できそうか?」
「ここは現実じゃない、架空の世界。でも、夢とは似て異なるもの。これは結界に近い」
おそらく、道具を使用した結界。
このパターンの場合、道具を持ってきた者が必ず存在する。
──必ず、誰かいる。
「ふぁぁ……眠っ」
黒髪の少年はとある空間であくびをした。
空間の中心にある漆黒の立方体、結界発生装置を護るように指示された故、帰るわけにもいかない。
右手をゆっくりと持ち上げ、宙で棒状の何かを掴むような動作をする。そのまま手を真横に動かす。まるで、刀を鞘から抜くように。
宙から現れた銀色に輝く刃。
そろそろこの世界に到着したであろう数人分の血を吸うために召喚した、殺すための刀だ。
「ほらほら、俺はここだぜー? 早く来いよぉ」
一人で言ったことに一人で笑う。
刃に彫られた〝y〟の文字が紅く輝いた。




