アリスの正体
「ほぉ、つまりお前はこの世界とは別の世界の人間だってことか」
「ただの人間じゃなくて、王族の猫人族ね。これでも姫なんだから、慎みなさいよね」
「どの口が言ってんだよ。さっき馬鹿みてぇにみそラーメン食ってだだろうが! ほら……」
「むっ……」
口の端についていた小さなネギをティッシュで拭いてやる。
すると顔を薄いピンクにしてもごもごと、
「……ありがと」
短いが、確かな感謝の言葉を呟いた。
「そうやって素直にしてればかわいいのに」
そして、今度は真っ赤になる。
「あ、あんたね! 一国の姫に対してなんたる無礼な行いを!」
「あー、はいはい」
「なんで二回も『はい』を言った?」
「はい」
デジャビュ!!
「では、気を取り直して。アリス様が元いた世界のことを教えていただけますか?」
「よろしい。
私が元いた世界の名前は《春都》。あ、他にも《夏都》と《秋都》と《冬都》もあるわ。
春都には猫人族、夏都には魚人族、秋都には精霊族、冬都には竜族が住んでいるの」
「ふぅん」
「それでね、私は春都を治める王家の姫にあたる存在なの!」
「ふぅん」
全力で興味無い感じで返事してるのに、アリスは空気を読まずに祖国の自慢を語った。
〜〜10分後〜〜
「でね、お母様がウザかったから家出した」
「はぁ!? それ、一番重要な!!」
「そう?」
「だってさ、一国の姫が家出してんのに家族が捜さないわけがないじゃんかよ!」
「大丈夫よ、お父様とこんな会話をしたわ」
「お父様。あのババアがウザいの」
「へぇ」
「家出していい? ババアには内緒でお願い」
「俺が昔旅をした世界にはなぁ、『可愛い子には旅をさせよ』ってことわざがあったんだ。アリスかわいいしー、行ってきたら?」
なんか……家出ちゃうやん。許可もらってんじゃねーか。つーか、妻をババアと呼ばれていることに対して突っ込めよ。
「てかさ、お前さっき『困惑してて……』って言って記憶が曖昧ですオーラ出してたよな?」
「ああ、あれもお父様が……」
「いいかアリス。向こうに着いても行く場所がない。だから、地面に座り込んで通りかかった男性に猫なで声で話しかけなさい。きっと助けてくれるはずだ」
「他には何かありますか?」
「服を脱いでおけば、更に良しだ。きっと温かいみそラーメンでも食べさせてくれるさ」
「っておっしゃられたから」
俺の行動、親父さんの思惑通りじゃねぇか。
「くそっ! 自分がすごく恥ずかしい!」