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ぼくと彼女の変わった日常。  作者: ねむ。
変わった日常。
37/65

帰宅

竜に乗って空を飛び、時空を超えて日本に帰ってきた。本当、なんでもありだな。


「では、私は用があるので」


と、言ってウォシュレットは消えていった。

竜はウォシュレットの指示を受けて春都に帰っていったようだ。知能がすごい。


「ただいま〜」

「おかえりなさい。奏唄、ちょっと来な」

「……はい」


久々の我が家! やっと自分の部屋で落ち着ける!


そんなわけがない。数日間家に帰れなかったわけだし、連絡もしていなかった。説教を受けるのは当然だろう。


「まあ、そこに座れ」


親父に促され、ダイニングの椅子に腰掛ける。

隣に誰かが腰掛ける。え、待って。誰……?


「今回の件ですが、私に責任があります」


声を聞いて、ぼくは絶句した。


「ウォシュレット…──」


マジイミワカンネ。

なんでこいつがここにいるんだっ!?


「ウォシュレットくん、どういうことだい?」

「少しお待ちください。姫、早くこちらへ」


廊下とリビングを繋ぐ扉がゆっくりと開く。

アリスはゆっくりと歩いて、ぼくの隣の席に座って俯いた。


「姫、全てをお話しすると誓ったではありませんか」

「でも……」

「私がお話ししましょうか?」

「いや……私が話すわ」


なんの話をしているのかわからない。でも、それは〝他人にはあまり打ち明けたくないこと〟なのだろう。


「お父様。初めに告げますが、私たちは人間ではありません。この世界の者でもありません。異世界にある国、春都というところからやってきた者です」


理解できないだろう。と、親父のほうを見ると親父は真剣な表情で軽く頷いている。


「私はその国の王の娘であり、数多くある異世界の各国から命を狙われる存在です。そしてこの日本にも、異世界からの魔の手が伸びました」


真剣に話すアリスを初めて見た。さすがは一国の姫、話すところは話すし、大切な部分をわかりやすく話している。


「今回の件も、理由はそこにあります。あの日、私は命を狙われました。突然の出来事だったので、その場にいた奏唄も連れて逃げました」


うんうん……いや待て! お前命なんて狙われてないだろ。ウォシュレットが暴走したから帰ったんじゃん。


「そうだったのか……。君が……」

「え……?」


「キミガ……キミキミキミキミキミッ!!」


「逃げてください二人とも!!」


鎖に繋がれた鎌が振り降ろされる。ウォシュレットが剣でそれを弾き、一定の間合いを保ちながら親父のはずの生き物に語りかける。


「何者だ! 奏唄様のお母様とお姉様はどこだ!」

「シ、シシシンダ。シン…ダ……」

「死んだ……?」

「コロスコロスコロス!!」


無差別にすべてを斬り刻む謎生物。

もう、親父じゃない。母さんも姉ちゃんも……。


「奏唄! あいつが言ってることを信じちゃだめ!」

「そう、だよね……うん」

「奏唄様、姫、今は逃げましょう!」


家の前の通り慣れた道を三人で走る。あいつが追ってくる気配はないが、走るしかなかった。



アリスと出会ったことで変わった日常。

ウォシュレットと出会ったことで変わった日常。


気付いた時には、日常など存在していなかった。

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