表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくと彼女の変わった日常。  作者: ねむ。
変わった日常。
35/65

悲劇

春都の草原に伸びる桜の木。その内の一本にもたれかかる金髪の女性が呟く。


「奴は何者なのだ……」


脳内で思い返される先刻の映像。

龍の男に乗り移った呪いの存在を祓ったあの少年。あれはこの世界の住人ではなく、ただのなんの力も持たない人間に見えた。


──なのに、彼からは魔が香った。


近くで草を食んでいた一角馬が言う。


『確かめなくてもよいのですか?』

「ああ。今日は下見に来ただけだからな」


女性は馬に乗り、雷となってその場から消えた。



朝だ! 今日はやっと帰れる!

と、起きてすぐに浮かれていると……


「アリス姫! 奏唄君!」

「シャグル、こんな朝からどうしたの?」

「コトトさんが、話があると……」



螺旋階段を走るように下り、走って城から飛び出す。コトトは庭の真ん中、たくさんの春都の兵に囲まれながら立っていた。


「アリス……、たいへん……」

「どうしたの?」

「アリスに借りてたあの本……、喋った……!」


う、うぅん……、コトトが言ってることがよくわからないのはぼくだけ?


「貸してた本? ってなに?」

「彼は人喰いの……、なんたら……」

「アリスおまっ……」


貸してんじゃねーかっ! ものすごい数の本を漁らされた僕の時間を返せ!


「貸したっけ? まぁいいや。で、喋るっていうのはどういうこと?」


コトトも独自のルートで例の本とウォシュレットの血統についての情報を手に入れ、自分なりに色々調べていたらしい。


昨日の夜のこと。

本に影のようなものが入り込み、【願い】【辛い】【助けて】などという音声を発した。それ聞いたコトトは怖くなり、その本を夢の中に封じたらしい。まぁ無難な選択か。


「コトトちゃん、本の中身はどんなだった?」


「アリス……、怖い……、声……、頭の中から……、離れないよ……」

「大丈夫。大丈夫よ」


もういいよ。ぼくはコトトと関わらない!

いやまあ、関われないんだけどね。無視されるから。


「で、コトト。本の中身はどんな感じだった?」


ナイスだアリス。


「中身は……、簡単に言えば……」


一ページごとに書き手が違うお話。


──交換日記みたいな感じだった。


違う。二冊の本。題名は同じなのに……


「内容が、違うよ」

「え……? 奏唄、どういう意味?」

「ウォシュレットの家にあったのは、魔法陣だとか絵が描かれた……いわゆるイラスト本のようなものだったんだ」

「上、下巻があるっていうの?」

「うん。もしかすると……」


コトトの言う交換日記というのは正しいのかもしれない。時代は違えど、カカハの血を引く者が書いていたもの。


コトトが持つ本は、交換日記ではなく……


恨み辛みを吐露し続けた結果生まれてしまった呪い……長きにわたって続く呪いの核(、、、、)なのではないか?



「こりゃまた……ひどいな……」


クウヤは朝早くから日本にいた。カナタを安全に返すための下見だったのだが、事態は思わぬ方向に進んでいたらしい。


壊滅状態の街。空を飛び、地を這う奇形生物。


「他の世界からの使者が荒らしたっぽいな」


人気のない街を見下ろし、クウヤは呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ