会議
向かい合って並ぶ三人掛けのソファー。
ぼくの隣にはアリスが座り、正面にはウォシュレット。その隣に、ウォシュレットと同じ、竜族と思われる赤髪のイケメンが座っている。
ホワイトボードの横でこの会議を仕切るのはクウヤ。おい、ウォシュレットやれよ。お前騎士団長なんだろ? あ、置物騎士団長か。こりゃ失礼。
「えー、今から会議を開始する。
皆の者には自己紹介をしていだだきたい」
ウォシュレットの隣に腰掛ける赤髪のイケメンと目が合った。ウォシュレットと同じく縦に裂けた瞳孔で見つめられちゃうと、本能的な恐怖を感じる。
「人間……、の方ですよね……?」
「あ、はい。織宮 奏唄です。よろしく」
「シャグルと申します。騎士団、副団長の地位に就かせていただいています」
ぺこりと礼儀正しく頭を下げるシャグル。
もうこの人が団長やるべきだろ。
「奏唄君、うちの団長が迷惑かけてない?」
「あははー」
本当、迷惑しかかけてませんよ。
「もしかしてシャグルさんも……?」
「あははー、困っちゃうな……」
確信した。あなたとは気が合うよ!
自己紹介の場は、ぼくのために設けてくれたのであろう。ぼくたちの会話が終わったタイミングでクウヤが口を開いた。
「では本題に入ろうか。奏唄」
「はい?」
「俺が言おうとしてることはわかるか?」
「んー」
んー、とは言ったものの、答えはひとつしか思い当たらなかった。
「逃げてきた……だけ……」
「そうだよ! なんで逃げてくんのさ、何も解決してねーじゃねーかっ!」
バンッとホワイトボードを叩くクウヤ。
ウォシュレットが爽やかに微笑みながら言った。
「まあまあ、落ち着いてください」
「「お前が言うなや!」」
ぼくとクウヤに言われた騎士団長は、副団長の胸で涙した。
「奏唄。このままじゃお前は、元の世界に帰れない。帰っても警察の兄ちゃんがやってくる」
ほんまや。
「まずいよ……。でも……」
どうして知砂はあんな風に言ったんだ?
普段とは明らかに様子が違ったし、何よりあんな風に「この人が犯人」なんて言うはずがないんだ。
奏唄の家の近く。
私、琴結 知砂は家に向かって歩いていた。
「私、なんであんなところにいたんだろ」
瓦礫の山になんて近づくはずもないのに、なぜかあんな場所にいた。不思議だ……。
それに、記憶がすごく曖昧だ。
そのとき、
「うふふ。私のお人形さん」
パーカーのフードを目深に被った女性。その細く白い10本の指から伸びた糸が、知砂の身体に絡みつく。
気持ちが悪い。身体が芯から冷えてゆく。
私の身体なのに、動かそうにも動かない。
「オヤスミ♡」
意識が……、飛ぶ。




