新たな問題、危機
「カナタにゃ悪いが……」
こっちも早いとこ片づけなきゃならんので。
クウヤは春都にいた。
少し離れたところでは竜が叫び声を轟かせている。
……え? 叫び声……?
「待て待て待て!!」
竜が何者かに攻撃されていた。竜とは言ってもウォシュレットだから、まあ死にはしないだろうけど……大丈夫ではない。
なぜなら、この世界で竜狩りをするメンバーなど決まっているからだ。そう、竜狩りをするほどの武力を持つのは、王家に仕える騎士団ぐらいのものである。
「お前ら、攻撃をやめろっ!!」
ぴたりと兵士たちの手が止まる。
「この声は……!」みたいな感じで一斉にこちらを向く兵士たち。その隊の中から、一人の青年が現れる。
「シャグル、久しぶりだな」
「くっ、クウヤ様!?」
この青年はシャグル。ウォシュレットが束ねる騎士団の副団長だ。
「まあまあ、積もる話は後にしようや。それより、あんたらが攻撃してたその竜、ウォシュレットなんだけど」
「なんですとぉぉぉ!?」
あの後、騎士団総出でウォシュレットをぼこぼこにして、俺が簡略化した、魔力を外に逃がす魔法をこれまた騎士団総出で使用した。ウォシュレットがこうなったのは、増えすぎた魔力が理由だったようだ。
「いやはや助かった。ありがとうなシャグル。それより、身体のあちこちが痛いのですが、これは?」
「えーっとな、アレだ。多分あれだよ」
「そうですよ団長。アレです」
「はー、アレですか。では仕方ない」
……つっこまないんだ。寛容。
「とりあえず、カナタに連絡しとくか」
「もしもーし」
『クウヤでーす、春都から電話してる』
「あ、春都にいるの。了解でーす」
電波届くの!? 向こうに支部があったりするのかしら?
『うい。ウォシュレットは元に戻ったから心配はいらない。だが、そっちの被害をどうするかが問題だな』
そう。問題はそこなんだよね。
『とりあえずそっち戻るわ』
「はいはーい」
電話を切る。
それと同時に、背後から声をかけられた。
「奏唄」
アリス……じゃない。この声は……
「ち……さ……」
琴結 知砂。ぼくの幼なじみである。




