騎士、本来の姿
「王に聞いて来てみれば、そういうことか」
地球に降り立ったウォシュレット。彼が開いた扉の周りには、たくさんの人々がいるが、その全員が異世界の人間だった。
「私に何の用だ、眠界の王国騎士団よ」
「この地は我々が占領する。同時に、そなたの国の姫の身柄も預かった。春都とかいう田舎の騎士には下がっていてもらおうか」
「姫を……どうしたって……?」
背から銀と青に輝く剣を抜き、普通は両手で構えるそれを右手一本で構える。
殺す気など毛頭ないが、戦闘不能になるぐらいのダメージを与えようか。
【戦いに死はつきものだよ】
その時、脳内に声が響いた。
【我の子孫。全てを斬れ】
無視しようと頭を振った。
だが、頭の中に張り付いた声は、私の意思を拭い去り、新しく塗り替える。
「貴様等、命はないと思え」
キィ───と、ウォシュレットの右頬に、不思議な紋様が光り輝いた。
「くくっ、勇ましいね〜」
「ここは?」
「ここ、ぼくの家の近くだ……」
アリスの魔力を感じたぼくとクウヤは、アリスのいると思われる場所へと駆け出した。
すると夕陽が揺れる空に、無数の影が浮かんでいた。
「ん……? あれは何だ?」
「あれ、全部人間だ! しかも異世界から来てる! この匂いは……眠界……!?」
「眠界?」
「紫の少女の親父さんが王の国だよ。あいつらは多分地球を占領しにきてるんだと思う」
ただ事じゃない。そんなの……
「戦争が、起こるじゃないか……」
「それは避けられない。でも、俺たちが全力で敵を殲滅すれば話は別だ」
「はぁ、はぁ……。アリス……!
私たちはもう友達なんかじゃない……!」
「いきなりどうしたの……?」
「私はあんたを殺す! そのためにこんな田舎の世界に来た」
ぽう……とコトトの頭上に紫と水色の光が集まり始めた。同時に香るこの匂いは……
「魔法……!?」
「この魔法が完成した瞬間、お前の命は消える。お前を消すことが、私に課せられた使命……」
コトトの瞳に光は……ない。そして、今までのコトトとは雰囲気が違う。
「くっ……何で……取れないの……?」
柱に結ばれた両腕は、いくら動かしても外れることはなかった。
「くっ……。はぁ……はぁ……」
想像以上に手強い。敵の数が多いのが第一の問題点となっていた。
「さっきまでの異性はどうしたぁ?」
「ふっ、黙れ。貴様等は負ける運命にある。そこまでの経路がどのようなものでも、結果は変わらん」
横薙ぎで三人の腹を裂く。
「我は竜族の騎士ウォシュレット! 我は今、貴様等の血肉に飢えているのだよ」
ぺろりと顔に飛んでいた返り血を舐める。
「喰わせろ……。お前の肉をくれ……!」




