夢と記憶の奥底で
わけがわからない。胸の内にあるのはそんなモヤモヤとした感情だけだ。
空には双子の月が浮かび、あたり一面が水で浸されている。向こうの方には赤い光……提灯の優しい光が見え、どこか昔の日本の香りがした。
水で浸されているとは言っても浅いもので、ぼくとクウヤはぴちゃぴちゃと水に足をつけて歩く。
「ここはどこなのか。君は今、そういう疑問を抱いているはずだ」
「うん、思ってる」
「俺がその疑問を解決してあげよう」
「ここは、とある少女が生み出した夢の中さ」
「夢……?」
「ああ、夢さ。そして、この世界の管理者と君は先程対面しただろう?」
「紫の少女……」
「紫の少女……? あんた、私に何したの?」
暗い空間……どこかの、今は使われていない倉庫のような広くて暗い空間にアリスはいた。背には柱のような感触があり、手首はロープのようなもので縛られているようだ。
「夢見せて……、あの男の子を斬らせて……、男の子は逃げたけど……、私の〝暗示〟にかかって……、死んだ」
───言っている意味がわからない。
私は、奏唄と自転車でこの女を捜して、見つけて……見つけて……?
「その後、どうしたんだっけ……」
思い出せない。いや、記憶にないと言うべきか。どうして私、こんな所にいるの?
「ふふふ。アリス、私のこと、わかる?」
「知らない。あんたなんて知らないわ!」
「そう……じゃあ、教えてあげるね」
「私は眠界の姫……」
眠界。
その名は耳にしたことが……ある。
『あのねー、アリス。私たちが生きている世界の他にもね、たくさんの世界があるの。覚えてないかなー、眠界のコトトちゃん。小さい頃はよく遊んでたのよ?』
ママが言ってたんだ! 私たちは幼少期に遊んだことがある……。私たちは初対面じゃないんだ。
「コトト……?」
「ふふっ、お久しぶりね、アリスちゃん」




