違、異世界人類
フライパンの上で、麺がソースと焦げ目によって黒く炒められている。豚肉とキャベツ、それに人参。キッチンには焼きそばの香ばしい、食欲をそそる香りが漂っている。
と、同時に何か甘い匂いが……気のせいか。
「ん……!? なんか匂う!」
「だーかーらー、焼きそばだろ?」
「違うわっ!」
「違うのっ!?」
あり? なんで怒られたんだろ……。
「なんか……こう……」
「はーい焼きそば完成! 食べながら聞くわ」
ズルズルズル……しばし二人で麺を啜る。
「で、なに? 匂いがどうとか」
「はぁ……。奏唄、あんたも魔力持ってるんだからわかるでしょ? 甘ぁい匂いしない?」
「言われてみればする気もする……かな?」
気のせいじゃなかったのか。
「でしょ? 突き止めに行こうよ!」
「じゃあ、ちょっと来て」
「……?」
場所はぼくの部屋。
クローゼットに隠してあった、アリスの服を購入した店の紙袋を取り出す。
「はいこれ」
「え?」
「開けてみて」
頷きつつも、不思議そうに眉をひそめたアリスは、ブランドの袋を開ける。中から出てきたのは
『姫、きっと気に入ってくれますよ』
『そうか……? ならいいんだけどな』
ぼくがあるものを購入するためにレジで支払いをしていたとき、店内が大きくざわついた──
あのときに購入した、ガラスケース内のマネキンも着ていた白いコート。の、色違い。少しだけ黄色っぽい、クリーム色のコート。
「わざとクリーム色にしたんだけど、白のほうがよかったかな?」
「ううん……嬉しいよ。ありがと」
よくある姫のおしとやかで儚げな微笑みとは遠くかけ離れているけど、華やかで本当の気持ちがよくわかる、最高の微笑みをくれた。
「じゃあ、道案内よろしく」
「はーい! 任されたっ!」
ぼくはいつも通りのニットにコートの流行りのファッション……あ、自分の中での流行りね。
アリスは前に買った白のブラウスと淡い水色のフレアスカート、それにクリーム色のコートをあわせている。きゃわゆい。
「そこの角を……右!」
「うーい」
ミラーを確認して曲がる。自転車ドライバーのマナーであり、ルールである。
アリスナビ(仮)に従って愛車を走らせること……何分だろ? わかんないからいいや。
「近い……! てか、あれじゃない!?」
「あの道の真ん中に突っ立ってる子?」
「あ……アリスじゃない……いや、アリスだ……」
目的との遭遇は、突然訪れた。




