眠り
「ふぇ〜ん」
ぼくの腕の中で、小さな小さな赤ちゃんが「お腹すいた!」と泣き出してしまった。
「アリス! ご飯ご飯!」
「そんなに慌てないで、ア・ナ・タ♡」
「っつあ!!」
昨日の晩に暖房の予約を忘れたが故、クソみたいに寒い部屋で汗びっしょりなぼく。
「うわー、なんだよ今の夢……」
「うぅ……もう朝ぁ……?」
「は? はぁぁぁぁ!?」
掛け布団を引っぺがしてアリスをベッドから蹴り落とした。
「痛いわぁ。朝からやめてよねー」
「いやいや、こっちのセリフだっての! なんで人の布団で寝てんだよ!」
そして、なぜぼくは氷みたいに冷たいフローリングに正座させられているんだ?
「いや……昨日ね……」
深夜にやってる怖い番組を見て寝れなくなった。
「だとぉ? 見んなやそんなもん」
人の安らかな眠りを邪魔してくれちゃって。
「それが正座してる男の言うセリフ? 朝から〝お姫様〟の私にあんなことして、謝る気、ないの?」
お姫様権限の乱用である。ぼくからすればただの居候なんですけど。
「あ〜あ! 今から赤ちゃんにご飯あげるところだったのにぃ……」
「あれ? マジで?」
「なによ。本当のことよ? 夢だけど」
なんだとー? 同じ夢を見ていた……?
「ふぅん。おかしなこともあるもんだな」
「眠い……寝ようか……いや寝ない……」
雪の中、薄紫の装束に身を包んだ少女はぽてぽてと地面に足跡をつけて行く。
両目は横一文字に閉じられており、両側で結ばれた装束よりも少し濃い紫の髪を揺らして行く。




