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第05話 野菜を食え(母親感)

「……なんですかこれは」

「飯」


 すっかり陽も落ちた頃、オフィスにて。


 ガイアがテレサのデスクの上に置いたのは、今人気のフライドチキン専門店『剣滝ソードフォールチキン』の紙袋。


「……ガイアさん、1人暮らしなんですよね?」

「ああ。だから何だ」


 …………。


「私は手料理を期待してたんですよ!」

「……はぁ?」




 事の始まりは20分程前。


「晩御飯の時間ですよ、ガイアさん」

「そーだな。んじゃ、帰るか」


 そこで、何かを思いついたテレサ。


「今日は一緒に御飯食べましょう!」

「はぁ? まぁ良いけど……」


「とゆー訳で、ガイアさんよろしくお願いします!」

 ※ガイアさんが料理してるのって見た事ないけど、1人暮らしだし、きっと上手なはず! ちょっと食べてみたいです!


「なっ、ふざけんな」

 ※ただでさえ苦学生なのに、何故金持ちお姫様に飯を奢らにゃならんのだ。


「えー、お願いしますよ、年上でしょ?」

 ※年上なんだから優しくオーダーに応えてくださいよ。


「……しゃあねぇな……」

 ※年上だから奢れって後輩か何かかお前は…まぁいいけどさ。


「流石ガイアさん!」

 ※年上の甲斐性って奴ですね!


「で、何が食いてぇんだよ?」

 ※買ってくるから言え。


「お任せします!」

 ※ガイアさんの自慢の一品に期待!




 ってなやり取りがあった。


「材料を買いに行ったんだと思って待ってたのに!」

「伝わるか! 大体職場(ここ)でどう料理するんだよ!」

「一応、3階が居住スペースでキッチンがあります」

「知らなかったよ!」


 考えてみたらこのビル、ガイアはオフィス以外まともに使った覚えが無い。

 今度掃除がてら3階も見てみよう。


「……まぁいいです。今度はちゃんと手料理お願いしますよ」

「やだよ面倒くせぇ」

「ひどい!」


 一応ガイアには1人暮らしに必要最低限な家事炊事技能はある。

 しかし、好きでやってる訳じゃない。

 他人に出す様な手の込んだモン作るなんぞやってられない。


「むぅー……」


 不満気にむくれながらも、腹は減っているのだろう、紙袋をあさり始めるテレサ。


「……?」


 何かを発見。


「これは?」

「コールスローだ」


 それはセットメニューのおまけ。

 丸っこい形状の白くて小さな容器に収まっている。


「コール…? ……げっ……」


 中身を確認し、テレサが引き攣る。


「……ガイアさん、お使いご苦労様です。お礼にこのコーススクリューはガイアさんに……」

「げっ、つったな、さっき」

「い、言ってませんよ?」

「それと、コールスローな」


 フゥ、と溜息を付くガイア。

 そしてとりあえず核心を突く。


「それくらい食えよ。ガキか」

「な、ななな! 誰も野菜が嫌いだなんて言ってませんよ!」

「そうだな、そして今まさに自爆したな」

「はぅあ!?」


 しまったぁ! と頭を抱えるテレサ。


「つぅかマジでそんくらいの量は食えよ。チキンと一緒に流し込みゃ多少嫌いでもイケるだろ?」

「チキンはチキンで楽しみたいです!」

「なら仕方無いな……野菜には丸腰で立ち向かう事だ」

「薄情な……っ!」


 いや、ガイア的には別に普通の事しか言ってない。

 そんな残虐非道な魔王を睨み付ける様な目は絶対におかしいだろう。


「…………はっ! ガイアさん、私すごいことに気付きました!」

「んだよ?」

「何と……野菜を食べた人は……必ず死ぬんですよ!」

「ああ、そうだな。そして食わんでも死ぬな」


 人間何を食おうが食うまいが、そりゃあいつかは死ぬだろう。


「バレた……!」

「騙せると思ったのかよ、そんな暴論で……」


 ちょっと大学生を舐めすぎでは無いだろうか。


「……あのな、いいから食えよ。少なくとも食って損するモンじゃねぇんだから」

「損します! ストレス溜まります! 寿命縮みます! 老後が心配です!」

「どんだけ野菜嫌いなんだお前は……」

「あ、そうだ!」


 更に何か思い付きやがった様だ。

 腹の音を鳴らしながら不敵に笑ってみせる。


 ……腹減ってるならゴネてないでさっさと食えよ、とガイアは自分のコールスローを食いながら思う。


「いいですかガイアさん……ダークヒーローはワイルドです……! 肉が似合うんです!」

「で?」

「野菜なんか食べません!」

「いや、食うだろ」


 何言ってんだこいつ、とガイアは本格的に呆れた視線をテレサに送る。


「私、ダークヒーローが野菜をモッサモッサ食べてるシーンなんて見た事が無いです!」


 そりゃあそんなシーン入れても映えない。

 当然省略される。

 だが、そう言うのなら、ガイアにも反論がある。


「俺、野菜を食いたくないがために、みっともなくギャーギャーと騒ぐダークヒーローなんぞ見た事が無いな」






「ダークヒーローって難しいですね……」


 すごくしゅんっとしながら、もそもそとコールスローを食べ進めるテレサ。

 1口ごとにおえおえ言っている。



 ……その光景を見てガイアは改めて思う。


 やっぱこいつダークヒーローって柄じゃねぇな、と。

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