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第44話 シラユキ(♂)と七つの大罪②

「あー、やっぱりな」

「ど、どうしたんですか……?」


 スマホを操作し呆れた様に笑うガイアに、アシリアとコウメは不思議そうな視線を送る。


「いや、ちょっと前に聞いた話なんだけど、妙な噂というか、なんつぅか」


 コウメ達に差し出されたスマホに映されていたのは、隣の国に関するウィキペディア記事。

 その家族構成の部分が拡大表示されている。


「前王、王、王妃、それと王子が4人……あれ……?」

「ガイア、これお姫様の事が書いてないよ?」

「ああ、隣の国に姫なんていないからな」

「で、でも、テレサさんは隣の国のお姫様と……あ、もしかして反対のお隣……」

「この国は、その国以外に隣国は無ぇよ」


 この国の周辺はその国か海しかない。


「じゃあ、これは一体……」

「……友達から聞いた噂でしか無いんだが」

「噂?」


 馬鹿らしいゴシップ系の話だと思って聞いていたが……


「……隣の国には、女装好きの『男の娘』な王子がいるって聞いた事がある」

「女装……い、いやいや、いくらテレサさんでも、それくらいは気付……」

「……テレサ、勘違いしてそう」


 3人の中に同意という名の沈黙が生まれる。


「ま、テレサのお友達とやらが男でも女でも、特に問題は無ぇ、だろ」


 人の趣味趣向の問題に口を出すなんて、野暮な事だし。






 息子達も可愛いけど、1人くらい娘が欲しかったなぁ。


 ある国に、そんな事を考えた王妃がいた。


「……この子、やたら女の子っぽいのよねぇ……」

「どうしたの、ママ?」


 その王妃は、中性的というか女性寄りな顔立ちの末っ子に目をつけた。

 そうして女の子グッズばかり買い与えている内に、その末っ子は、そういう趣味の男の娘へと仕上がっていく事になる。


 最初は、女の子らしい事をすると母が喜んでくれるから、そうしているだけだったが、……まぁ、目覚め、という奴だ。

 その末っ子には元々素養があったのだろう。


 そして、その末っ子こそが、後のシラユキ(♂)である。






「お、おと……」

「うん、趣味で女装しちゃいるけど、オカマじゃない。あくまで『女装』が好きなんだ、僕は」


 シラユキは「オカマさんの場合は女装じゃなくて正装になってしまうでしょ?」とか何とか言っているが、テレサの頭は全く追いつけていない。


「あ、あの……」

「さ、お父様達に僕たちの結婚を報せに行こう」

「え、えぇ!? あ、あの…」

「この事を話すのは2人でって決めてたんだ。さぁ」


 テレサの手を引くシラユキ。


 状況が急転し過ぎて思考が追いついていないが、とにかくこのまま流されるのは不味い。

 そう判断し、テレサはその手を振り払う。


「ちょ、ちょっと待ってください!」

「え?」

「あ、あの、頭を整理する時間をください」


 記憶を必死に漁ってみる。


 すると、それっぽい記憶が引っかかった。




 7年前、シラユキと最後に遊んだあの日。

 城の庭で、花の冠を作りながらした会話。


「ねぇねぇテレサ、僕ね、大人になったらテレサちゃんと一緒に住みたい」

「いいですよ。シラユキちゃんとなら毎日面白そうです!」





「あれですか!?」

「何が?」

 

 あれは結婚云々の意味合いでは無く、ただ一緒に暮らすのならという意味だ


「あ、そういえばテレサ、会社経営始めたんだって?チャールズさんから聞いたよ」

「そうなんですよー……って違う! 今はその話は置いといて、私の話を聞いてくださいシラユキちゃん!」

「大丈夫。テレサが望むのなら僕が婿入りする形でもいい。この国から離れる必要なんて無い」

「そこじゃないんです!」


 どうやらシラユキは、テレサが喚いているのを「会社の事もあるし、この国から離れたくないです!」という意図だと思っている様だ。


 しかし問題はもっと根本的な所。


「私、まだ結婚する気なんて無いです!」

「え? でもどうせ結婚するんなら早い方が……」

「違うんです! そもそも、私はシラユキちゃんと結婚するつもりが無いんです!」

「!?」

「あ、今のは言い方が悪かったかもですけど……その、私に取ってシラユキちゃんはお友達で……」


 だってテレサはシラユキが男だという事自体、ついさっき知ったのだ。

 そんな状態なのに流れる様に結婚などできる訳が無い。


「て、テレサ、本気で……言ってるの?」

「そ、その…………」


 どうしよう、何か傷つけてしまったっぽい、とテレサは困惑。


 でも、結婚なんてそうそう簡単に決めれやしない。

 だってテレサは初恋だってまだなのだから。


「わかった。何か理由があるんだね?」

「へ?」

「だって、君がそんな事言う訳が無い」

「あの……あれ? 何かおかしな方向に行ってる気が……?」

「もしかして、好きな人がいるの?」

「いえいえ!? 私まだそんな人は……」

「じゃあ何? 一体何で……」

「いや、ですからシラユキちゃんと私はお友達で……」

「何か悪い物でも食べたの!?」

「落ち着いてください!」

「だって昔はあんなに僕の事を好きだって……!」

「あれは女の子同士のノリというか……ラブではなくライクで…」

「僕は男だよ!?」

「だからそれを知らなかったんですよ!?」

「し、知らなか……った……?」


 驚愕にワナワナと震えるシラユキ。

 先程までのクールビューティっぽさは面影もない。


「確かに僕は女の子顔だし女装癖もあるけど……普通気付くでしょ!?」

「いやいやいや! 今でも私は何かの冗談じゃないかと思ってますよ!?」


 シラユキは下手すれば平均的女性より女性らしい外見だ。


 外見だけで判別するのは厳しい物がある。


「と、とにかく、そういう事なので! ごめんなさい!」

「あ、待ってテレサ!」


 どう処理していいかわからないので、とりあえず指輪を返し、テレサは逃走。


「…………テレサ…………」


 突き返された指輪を見つめながら、「そんなの酷いよ」とシラユキはその場に崩れ落ちてしまう。


「僕、今日という日をとっても心待ちにしていたんだよ……?」


 やっと、やっと、幼い頃から愛おしいと思っていたあの子と一緒になれる。

 そう思っていた。


 なのに、まさか向こうに男として認識されてすらいなかったなんて。


「こんなの嫌だ……」


 諦めるべき現実という物が、今、シラユキには叩きつけられている。

 しかし、人間そうそう諦め切れる物では無い。


 特に、色恋沙汰という物は。


(どんな手を使ってでも、君が欲しい……!)


 そんな事を、考えてしまう。


「…………?」


 その時、ふと、違和感を感じた。


 背後に、何かいる。

 いや、何かが、現れた。


 シラユキが振り返ると、ソファーに1人の少年が座っていた。


 フードを深く被った、小学生くらいの少年。

 褐色の肌にブルーの瞳、そして緑色の髪。


「え……?」

「どーもー。えーと……君、一応男? フェロモン的な物はそれっぽいけど……」

「え、あ、……うん、男、だけど……君は?」

「今は男だよ」

「いや、そうじゃなくて……」


 君は一体いつの間に、この室内に?という疑問だ。


 見た感じ、王族関係者、という風でも無い。


「僕は、僕が必要な『お客さん』の前に現れる営業マン。それだけだよ」

「え、営業マン?」


 うん、と元気にうなづき、褐色肌の少年は自己紹介。


「正確には営業マン『でもある』。僕はアンラ。アンラ・マンユ。ちょっとした『組織』を経営してるよ」

「組織……?」

「そう」


 にっこりと、アンラは笑う。


 表面的に見れば、幼い笑顔。

 しかしその笑顔は、言い表し様の無い邪悪な何かを内包する。


欲望ニーズに応じた『チカラ』を提供する。それが僕の趣味であり、僕の組織の業務」


 要するに、


「『悪の組織』、って奴だね」



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