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R95,プリティ☆ガイ子ちゃんドライ!!!(どこまでも行くよ☆)


「ィーッヒッヒッヒッヒ!! クリスマスヘーキ、クリスマス兵器ヘーキは要らんかねェェェーーーッ!?」


 ガイアが通う大学敷地内に響き渡る、しゃがれた奇声。

 そこには女性物のおパンティーを被った半裸の老人の姿がッ。

 その手には白いクリームと紅い苺がたっぷりのホールケーキ……に見える、改造モデルガン。

 発射される弾丸は、当たった者の性欲を過剰に抑制してしまう超興奮鎮静剤。効能はたっぷり一ヶ月は持続。


「ァァーッハッハッハハ!! 若造若造若造共がァァァーーー!! ワシを差し置いて聖夜に性矢をセイヤァァとズッコンバッコンカラダコネクトなんぞさせはせん、させはせんぞォォオーーー!! イエスの生まれた夜にイエスイエスオーイエスシーハーシーハーなど言語道断!! この絶対性欲断絶弾頭クリスマスヘーキにて貴様らの性機能に一ヶ月ほどの休暇をくれてやるわァァァーーー!!」


 外道、なんたる外道。

 今から一ヶ月、性機能が不能になれば――熱いホワイトのクリスマスは絶対に不可能ッ。


 ナスタチウム王国は少子高齢化問題とは無縁(長命種や寿命無い系の輩が多過ぎて高齢者が全然高齢者じゃないモチベーションで生きてるから全く問題にならない)とは言え、一年で最も新たな生命の種火が仕込まれる日(当社の偏見的調べ)を妨害するなど、神に反旗を翻すに等しい行為ッ。


 冗談じゃねぇ、逃げ惑う大学生達……否、逃げ惑う者のみに非ず……!!

 おお、何と言う事だろうか……!!

 変態ジジィが道中弾丸と共にばらまくパンティとクリスマスヘーキを手に取り、ごく一部の男子と女子が変態ジジィに付き従い始めている……!!


「フヘフヘフヒャハハハハハハァァァーーー!! 見よ見よ!! 我に続くは聖夜を清廉潔白に過ごしたいと願う者共!! あるべき聖夜を取り戻そうと願い立ち上がった聖戦士達よォォォーーー!!」

「「「「「オォォオオオオォオォオオオオオーーーーー!!!!」」」」」

「我が軍勢を燃やす薪は憎悪!! 淫らなる畜生共よ、憎悪に寄って燃え盛る我らが劫火の煌きを目に焼き付け、骨の髄まで燃え尽きるが良い!! さぁさぁ聖なる軍勢諸君ッ!! 正しき聖夜を取り戻そうぞォォォ!! これは、聖夜を救う戦い(セイントウォーズ)であァァァる!!」

「「「「「セイウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」」」」」

「待つなの、そこの品性下劣漢と+アルファ共!!」

「ッ!?」


 小高い室内運動場の屋根の上、寒空の中でもキラキラと輝く太陽を背に、仁王立ちを決めたる少女がひとり。


「聖なる夜……それは偉大なる聖人の生誕を祝福し、それと同時に隣人や家族と生きる事の喜びや素晴らしさを分かち合うために設けられた素敵な一時……これから先の未来、家族になるかも知れない愛し合う二人が結ばれる事は、この夜の趣旨に決して矛盾せず、それを妨げる無粋な輩は馬に蹴られて地獄を見に行く義務があるなの!! 人、それを……【天罰】と言うなの!!」

「誰じゃ貴様は!?」

「変態に名乗る名など無いなの!!」


 登場、我らのプリティ☆ガイ子ちゃん。

 胸には「俺が変身しました」の一文と共にガイアの写真がデカデカとプリントされた大きなワッペンが。


「ぎぎ!? あ、あいつは……!?」

「ぬぅぅ!? 知っているのか戦闘員A!」

「はい親方ァ。あの少女には見覚えがありませんが、あのワッペンに写っている男は間違いねぇ!!」

「国際文化学科二回生のガイア・ジンジャーバルトだ!! あの野郎、俺達と同じ彼女ハートレスのはずだのにどうして!?」

「大体あの姿はなんだ!? 度々猫耳やへんてこなローブを着た幼女達や亀の甲羅を背負った少女を連れ回している姿が目撃されガチロリコン疑惑は囁かれていたが……ついに我慢できず自らがロリになったのか!?」

「くノ一コスの女を連れ回すコスプレマニアだと聞いて……」

「誰がコスプレですか」

「ぐぇッ」

「ッ……が、ガイア・ジンジャーバルト……!? こ、これは違います! 私はシェリー・カトレアではありません!! 違いますからね!?」

「とにかく何だ!? 幼女ハーレム野郎がついに自らも幼女に成り果てたって事か!?」

「ロリコン恐ェェェーーーーッ!!」

「「「「「ロリコン恐ェェェーーーーー!!!!!!」」」」」

「よし、全員首を出せなの。一人残らず握り殺してやるなの」


 最早悲しみではなく怒りの表情を浮かべ、ガイ子ちゃんがパキパキと拳を鳴らし始めた。

 それはガイ子ちゃんの得意技であり、テレサに実践し続ける事で鍛え上げられた必殺アイアンクローの準備アップである。


「しかしあの姿……まさか、我が孫ピノキオを葬った魔法幼女とは貴様か?」

「そうなの。それが遺言で良いか? なの」

「待てぃ!! 異議があるぞ魔法幼女よ! 貴様は変態・性犯罪者を裁くシステムの具現、そう聞いておる」

「……もうそんな噂になっているなの……?」


 ガイ子ちゃん、本日一番の死にた気な顔である。


「我々の主張は聞こえていたか? 我々は聖夜を汚す蛮族共にあがないを、その血を以て汚された聖夜の浄化をしようと言うだけ。この行為に悪は無い」

「さっき言ったなの。聖夜に恋人同士がイチャついてんのはもう自然の摂理と言うか拡大解釈すりゃあ別に間違った事ではないから諦めろなの。僻みや嫉妬なんぞ時間の無駄なの、無益なの。そんな無益のために人に不幸をばらまこうとしてる奴なんて悪でしかねぇなの。性の物事に絡む悪=性犯罪者なの。はい論破なの」


 大体、どんな大義名分があろうと、人の性機能を無理くりどうこうしようなんて法に触れない訳がないだろう。確実に性的嫌がらせセクシャルハラスメント判定は入る案件だ。


「あの野郎、彼女ハートレスの癖にリア充側につくってのか!?」

「……つぅか、こんな阿呆な真似してっから恋人できねぇんだよお前ら、なの」

「うわァァァーーーーー!! あいつ可愛い格好して今一番言っちゃいけない事を言ったァァァーーーーーーーー!!」

「自分の事を棚上げして!! ……いや待て、まさかあいつ……まさか……【いる】、のか……!?」

「ッ!? そうなのですか!? ガイア・ジンジャーバルト!? 審議を要求します!!」

「……や、やかましいなの。その話は今は関係無いなの」

「あ、目を背けたぞ!! ありゃあ、いねぇな!! いねぇけど率直に『彼女いません』って言うのが微妙に悔しくて明言を避けたパターンの反応だ!! 間違いねぇ、俺は詳しいんだ!!」

「ヒャーハッハハハなんだよォ~おいおいおいおい~素直になれよォォォ御同類ィィィ~!! お前だって少なからずリア充を恨んだ事があるはずだァァァ!!」

「なぁ、お前ら本当に昨日まで一緒に講義を受けてた一般人なのか!? なの!!」


 クリスマスリア充への嫉妬は只人をもモンスターに変えてしまうと言うのか。


「……分かり合う事はできん様だな、魔法幼女」

「応なの。頭痛が酷いからさっさと蹴散らして帰って寝たいなの」

「ならば仕方なし……このリア充爆殺ジェネラル、ジハード親方が相手をしてやろう……!!」

「「「「「ジェネラル!! ジェネラル!! ジェネラル!!」」」」」

「「「「「親方!! 親方!! 親方!! 親方!!」」」」」

「自らが幼女にまでなる真の変態野郎ロリコンに、聖なる鉄槌をくだそう、今、ここで!!」

「【性犯罪者の(グングネイル)心臓を潰す槍(・インフェルノ)】、パンツァー☆ゴー」

「え」


 ガイ子ちゃんの声により、音声認識システム(バンバ)を搭載した木製の忍者戦車が亜空間より登場。

 その木槍めいた砲身の先端から、青白い忍者ビーム(ぶっちゃけ雷)が容赦なく照射される。


「「「「「「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」」」」」」


 雷によって蹂躙され動かなくなったジハード親方とその愉快な仲間達を眺め、ガイ子ちゃんは深い溜息。


「……俺もああなっちまう前に、彼女を探そう……なの」


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