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R81,あの子は性欲暴走機関車(恋は盲目だし仕方無い)


 明朝の魔地悪威絶商会本社ビル。

 おそらくテレサは王城でおやすみ、アシリアも三階の居住スペースで丸くなっている頃。


 二階、オフィスにて。


 ガイアは久々に『戦慄』と言う物を味わった。

 ガイアだけでは無い。コウメも、恐怖の余りに腰を抜かしてへたり込んでしまっている。


「い、今、何て言ったんだ、お前……!?」


 ガイアとコウメを戦慄させている原因。

 それは、二人の前に立つ一人の少女の発言だった。


「な、何よ……私、別に変な事言ってないでしょ?」


 フード付きのパーカーにホットパンツ姿の、褐色少女。外見から察せる年齢はせいぜい女子高生くらい。顔立ちにどこか子供寄りな雰囲気が残っている。

 パーカーにほとんど隠されているが、その髪色は若草色で、瞳はサファイアの様に透き通った青。


 悪神族アーリマンの少女、ドゥルジャーノイ・ライアー。

 主にドゥル子、たまにノイちゃんと言われるちょっと同性愛マイノリティをこじらせた四〇万歳越えの乙女である。

 高次元生物として『虚偽』を司り、その固有能力『真偽混濁ミストイン・ロストダウト』は、あらゆる生物に『誤った認識を植え付ける事ができる』とか言うえげつない代物。

 端的にわかりやすく言うと……バトル漫画なら、作者に「扱いにくいから仕方無いね」と理不尽な死を演出されるか、物語完結までロクに出番が与えられないパターンの奴だ。


「ただ、お姉様……ううん。コウメちゃん、私と普通の友達としてプラトニックに遊びに行きましょう、って……」

「俺達の知ってるドゥル子はそんな事を言わないッ! 誰だテメェ!?」

「チ●コ引き千切るわよこの野郎」

「え……あ、いや、でも……き、急にどうしたんですか……? ドゥル子さん……? もう私と顔を合わせて一分以上経ってるのに……まだ一回も強制接触が無いなんて……」


 いつもなら既にコウメはもう滅茶苦茶のグチャグチャにされている頃合。

 そしてグリムが「全年齢向けで何してんだクソッタレが」と止めに来るか、又は、カゲヌイが「笑えないレベルのガチ強姦は真の忍者的にNG。もっとネタになる感じでお願いキマシ」と邪魔しに来るのがテンプレのはずだ。


「……私は今、過去の自分の行いを全力で悔いてるわ……」


 やれやれ、と言わんばかりにドゥル子は力無い表情を浮かべつつ、その口で風船ガムをプクーっと膨らませ始めた。最早死に設定と化していたドゥル子風船ガムである。


「あのね……高次元生物アーリマンつったって、私だって生物よ? 日々成長すんの」


 そう言ってドゥル子がポケットから取り出したのは、昨今めっきりその姿を見なくなった折り畳み式の携帯電話。しかも何かめちゃクソごっつい。一昔前に流行った『何されても平気なウルトラタフ携帯』的な売り文句の奴だ。


「あれ……? ドゥル子さん、確かスマホじゃ……」

「お姉さ…コウメちゃんの写真を見ながらあれこれしてたら、ブッ壊れちゃって。スマホは所詮スマホ。『スーパー防水』を謳ってても信用ならないわね」

「いやいやいや……スーパー防水のスマホってお前、丸三日間海に沈めても大丈夫な奴だぞ? 一体何を……」

「『スーパー防水は無能無能超無能』……はい復唱」

「へぎぁっ………………あー、スーパー防水なんて無能無能超無能だからな、あんなもん赤ん坊が一舐めしただけでブッ壊れるもんうん」

「が、ガイアさん……!? 掌返しが唐突過ぎ……ってまさか今、ドゥル子さんの能力…」

「ま、それはさておき」


 ドゥル子が軽くウルトラタフなガラケーを操作すると、そのディスプレイ上に小さな魔法陣が展開。その魔法陣から飛び出したのは、一冊の書籍だった。

 書籍の題は『純真のふりしてあの子を毒牙毒牙毒牙ッ!! 必勝!! 気になるあの子のノンケ人生に合法的引導を渡すための一〇八手ッ!!』。


「「……………………」」

「我流でダメなら、専門家の助けを借りるのも手。伊達に四〇万年生きてないの、見識は広い方だと自負しているわ。我流に拘泥したりしない。と言う訳で、この指南書に従って、まずはお姉……コウメちゃんとの関係を、友達からやり直そうかと思って」

「……あの、遊びに行くのはやぶさかではないので……ちょっとグリムさんとカゲヌイさん呼びますね。ごめんなさい……」

「えぇッ!? 何で!? ドラゴンとニンジャ何で!?」

「……お前、本気で自分の犯したミスに気付いてないのか……? そんなタイトルの本を参考にしといてプラトニックもクソもあるかよ」


 馬鹿丸出しである。


「え、いや、だ、だってこれ、一〇八手もかけるのよ!? ノンケの人生観ブッ壊すのなんて一週間もどっかに監禁してひたすら犯り倒せばそれで済むのに、この本は一〇八手……『友達として熱く舌を絡ませ合う』所から始まるのよ!? こんなじっくりピュアな所から始めるのに…」

「ドゥル子ちゃん、良いかい? まずは何も言わずにその邪悪なゴミを捨てるんだ。そして君は二度と『ピュア』や『プラトニック』と言った単語を口にしてはいけないよ? 良いね?」

「数十万歳差があるクソガキに何か優しく諭されてるッ!? ってか邪悪なゴミって何よ!? この至極参考になる指南書を掴まえて言ってるの!? 馬鹿なの!?」

「馬鹿は君だよ」

「つぅかその優しいお兄さんみたいな口調と微笑みと雰囲気やめろぉぉぉ!! 何か腹立つし、まずあんた想像を絶するくらい私より歳下でしょ!? おいッ!?」

「……はぁ……あのなぁドゥル子……そもそも、一手目からこんな激しく激しい(ハーダーハーダー)なオーダーに応じてくれる奴を世間はノンケとは言わないんだよ」


 一五〇キロ超の剛速球ストレートを捕球できる素人捕手などいない。

 もし普通に捕球できたなら、そいつはもうその瞬間からシンプルに捕手だ。


 つまりそう言う事だ。


「は……? …………、ッッッ……」


 あ、今「確かに」って顔した。本物の馬鹿だ。


「う、ぐ……うぎぎぎ……でも……でももう私がすがれるのはこの本だけなのよぉ!!」

「おい、四〇万歳の広い見識はどこ行った」

「う、うるさいッ! 見栄に決まってんでしょ!? 悪い!? ああだって私は悪神だものッ!! 悪くて何が悪いっての!? 大体ね、四〇万四〇万つっても、その中の三九万九九九〇年分くらいは何も考えずにノーテンキに生きてきたのよこっちは!!」

「実質一〇歳程度の見識か……」


 妥当なラインにも思える。


「……うぅ……う、ぅぅぎゅぅぅ……ガイアのバーカッッ!! もう良いもう良いもう良いもぉぉぉ良いしぃぃッ!! ッ、ァ、ァアアァァァアアアアアアアアアアお姉様ッ!! ウボァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」

「げっ、平常運転に戻りやがった!? 逃げろコウメッ! 俺がどうにか三秒くらいは……くぺあっ」

「が、ガイアさーんッ!? あ、これあれだ……生霊になってるパターンの白目……」

「邪魔ボァァァさせないゥオォオァァァァ。お姉様のおヘソ撫で撫でツンツンぷにぷにクニクニしながら瞼の裏ペロペロォォォ眼球ハスハスくんかくんかァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」

「ひっ…ひぃぃぃいいいぃいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!?」



 以下自粛。




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