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3話

 俺の部屋は、和風的なデザインで床は畳だったりするのだが、部屋全体の景観を損ねない範囲とデザインでクッションやらも置いてある。

 そんな部屋の一角においてある、元々常設されていた装備変更や衣装変更のための姿見の前に、俺は立っていた。


「やっぱりな……」


 鏡には、頭に鬼の面を付け、青を基調とした着物に身を包む、とんでもない美形が立っていた。

 切れ長の黒目は全てを見透かされそうで、イケメンというより、美形や美青年という言葉がぴったりだった。

 それでいて女性とは見間違うことはなく、男性だと一目でわかるのだ。

 艶やかな長い黒髪を後ろで縛っている。

 この美青年は、他の誰でもない俺自身であり、俺がESで使用していたアバターと同じ姿だった。

 まあ、俺はこういうゲームではリアルの自分とはかけ離れた存在にするのが好きだったからな。ちなみに、アバターの製作時間は4時間です。

 それだけ時間をかけただけあって、ES内でも類を見ない美形に仕上がったと思っている。

 それはともかく、そんなアバターの姿が、今の俺の姿なのだ。


「……すげぇな……」


 ペタペタと自分の体を触ってみると、服の上からは分からないが、とんでもなく筋肉で引き締まっていることが分かった。ナニコレ、鋼?

 そう思ってしまうほど、俺の体は固く、筋肉が膨張することなく、一つに凝縮したような体つきになっていた。これ、脱いだらすごいんです状態だな。

 そこまで考えて、何の気なしに自身の逸物を確認すると――――。


「お、おおぅ……」


 とんでもない化物が下半身にはいました。冗談のつもりだったんだが、本当に脱いだらすごいな、これ。

 くだらないことを考えながら、一通り自分の体を眺めまわした後、俺はとある能力の確認をすることにした。

 それは――――。


「『童子化』」


 そう口にした瞬間、俺の体はみるみるうちに先ほどの美青年が、そのまま子供になったような姿に変わった。だいたい小学5年生くらいだろう。

 俺が使った『童子化』は、【酒吞童子】の固有スキルであり、言葉通り自分自身を子供にしてしまうのだ。

 ESのときのこのスキルのメリットは、子供になることによって敵から狙われにくくなるという点と、NPCなどが経営する店で購入・売却する際、有利になるのだ。

 その代わり、全ステータスが低下するため、使いどころが難しいのは確かだが、あの年齢の格好のまま街に行けば、騒がれるのは目に見えている。もしかしたら、この世界では美醜の基準が違うのかもしれないが。


「それにしても、子どもになってもこの威力か……」


 子供になったはいいが、鏡に映る俺は、天使のような可愛さを誇っていた。

 なんか、ナルシスト的な発言に思えて変な気分だが、事実そうなので、どうしようもない。自画自賛ではなく、本当にヤバいのだ。


「ま、まあこの格好のほうが、すごく可愛い子どもがいる程度で済むだろう。ステータスも、なぜか30000もあるし……」


 この世界ではどれくらいの強さが一般的なのかは分からないが、現在子供状態の俺のステータスは、すべて30000にまで低下していた。

 これでも、頑張れば後半の敵を倒せるので、危険すぎるというほどでもないだろう。

 それに、もう一つ、確認したい能力――――それも、切り札的能力がある。

 子供の姿を確認すると、その能力を発動させた。


「『鬼神化』」


 体が一気に膨らみ、どんどん巨大化していく。

 先ほどまでの天使のような姿は消え去り、現れたのは――――鬼神。

 鬼の形相でありながら、その表情は決して怒りではなく、静かな強者としての風格が漂っていた。

 完全に姿が変わると、身長は5メートルにもなり、最終的には筋骨隆々な着物を着た鬼が立っていた。

 ……『童子化』のときもそうだったが、どうやら装備品のサイズ調整という能力は、これらの能力を使ったときのためだったんだな。おかげで装備をいちいち変更する必要がなくて助かったわ。

 ふと、またも自身の下半身を確認してみると、そこには今の体に見合った、人間のとき以上の化物が目に飛び込んできた。……地球の俺のは普通なはずなのだが、これを見ると貧相に思えちゃうね。

 ちなみにこの『鬼神化』は、一定時間ステータスを5倍にするというアホみたいなスキルなのだが、その代わりこの状態だと回復魔法を受け付けなくなり、なおかつ魔法も使用不可になるというデメリットも存在するのだが、正直そんなデメリットなど気にならない。

 魔法攻撃でしかダメージを与えられない敵でも、スキルの中には攻撃判定が魔法攻撃になるものなんていくらでもあるので、余裕なのだ。

 何より、圧倒的な力でねじ伏せる感じは楽しい。


「見た目も、これはこれで好きなんだよなぁ」


 ぱっと見、恐ろしい容姿だが、よく見ると鋭い視線や厳つすぎない顔だちは、普通にどころか俺的にはすごくカッコイイ。

 まあ、これだけぶっ壊れた性能だからこそ、俺がES内でトップだったのも頷けるのだが。

 もちろん、これ以外にも便利なのスキルはたくさんあるしな。

 ある程度確認が終わると、ひとまず『童子化』の状態になり、俺は再び大広間へと向かうのだった。

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