桃園の義みたいな
銀髪の青年キッドは桜の木の下をスタスタと歩いていた。
ふとここで疑問になっていることを投げかける。
“いつまで髪留めしてるの?”無言で外すキッド、だが髪には寝癖っぽくついてしまっている。“ざまぁ”何がだといいたげな顔を向けてきたが、イケメンには、どんな髪型も似合って見える。
だが、そんなことを指摘するような優しさはない。
髪の話題には触れないように無難な話題をキッドにふる。
“関係ないけどさぁ、俺の世界にも桜があった。なんで、この世界にも桜がある?”
どうせコイツが返してくる言葉なんて分かっているが聞いてみる。
「知らん。興味などない。」予想していた通りの答えだ。一瞬ぶっ飛ばそうか考えていると、誰かが肩に腕を回すのが見え、キッドの身体がビクッと震えた。
さらに「我輩、さっきの闘い感動したぞ。」という声。聞こえた方に首を傾けると、顔にはメガネ(日光の反射が眩しい。)をかけた。黒髪のさらさらストレート。身長170ぐらいの男がいた。特徴的なしゃべり方と若干デ…、ふくよかな身体つき。とりあえず熱苦しさだけハッキリと感じる。
「いや〜、わいも同感やでぇ〜。」といいながら肩に腕をまわす。こちらも男だ。
えせ関西弁もどきで喋るのが神経にさわる。特徴的なのはエルフ耳だが、その肌は、白くなく浅黒い。髪はちょっとくせっ毛。髪色は白だ。
銀と白かぶっている気がする。しかも映画でマフィアが被るような中折れ帽子みたいなのを被っている。キャラの目立ちぐらいがハンパないのは、否めない。 また、変な奴らに捕まってしまった。
キッドは、術が効いてない驚きよりも人に触られた(しかも男)嫌悪感が顔いっぱいに広がっている。
一言も喋ってないやつは置いといて、二人ともどうでもいいことをベラベラしゃべっている。
だが、そんな会話は聞いてない。キッドは、必要最低限今ここでとてつもなく疑問になっていることを聞く。
「なぜ、オレの術式がきいていない。」
二人はそれまでの話を止め、目配せし「え〜、コホン。」ぽっちゃりが空咳をし、
「それはだな…「やっぱいいや。」バッサリ切り捨てた。
若干涙くんでいるが、気にせず前に進む。
「ま、まずは、わい達の自己紹介やな。わいは見ての通りだが、普通のエルフちゃうでぇ、
ダークエルフっちゅうや。そしてわいの名前はアベノ・セイメイや。ほな、よろしゅう頼みます。」
「アベノ?」ピクリと眉が少しはねる。
「めずらしい名字だろ。これは我輩のご先祖様に関係あるのだが、別の世界ヘイアンという世界から来たらしい。確か、オンミョロロだっけ?」
「ちゃうちゃう。陰陽師や。」
「そうそう陰陽師。たしか月の動きから未来を占ったりするんだっけ。」
「せやな。それだけでもないけど、他にも恋愛成就もやってるでぇ。」
割と最後の方はどうでもよかった。
今度はぽっちゃりに目を向ける。注目が移ったのが分かったのか、そわそわし出す。
「……、え?何、我輩の事がしりたい?いや困ったなぁ〜。でもそんなに知りたいなら教えないこともないけど。」女子のように髪をいじりながら話しているところにイラッとくる。
晴明がそっと耳打ちする。*セイメイは晴明と表記します。
「堪忍なぁ。ちょっと辛抱してぇなぁ。」
二人はコソコソと話しているが、自分の世界に入っているぽっちゃりは気にせず進める。
「我輩の事はあるときはHERO、またある時は、勇者。そう我輩は勇者ヒーローである。ハハハハァ。」
「「……」」静かになるこの場。何とも言えない空気である。
「ちょっそんなイタい人を見るような目で見ないで。晴明も黙らないでフォローみー。あれ、二人とも先に行かないでっ……」
「勇者は当ってんやけどね、ヒーローじゃなくてヒロ。勇者ヒロが名前なんよ。」
晴明のフォローがなければ、ただのイタい人認知で終わっていた。
今度は出番的にキッドだが口を開かない。二人からの無言の視線攻撃。顔なんて見なくてもわかる。
キッドのため息が聞こえる。ため息の数だけ幸せが逃げていくのを今度教えてあげよう。
「レイモンド・キッド二年生。そして、これが相棒の魔剣?妖刀?のケンだ。」
“おい、心の声が聞こえてるそ゛。”
突然の声に驚いたようだが、そこは勇者と陰陽師。
なるほどさっきの手品はこういうことだったのか、と納得された。
俺の名前がケンというのには、キッドに抗議したい。
だが、「キッド氏、ケン氏。」
「キッドちゃん、ケンちゃん。」いきなり馴れ馴れしいが、その顔の笑みを見たら邪険に払うこともできず。二人は拳を掲げている。キッドと俺も二人に習い拳を掲げる。コツンと軽くぶつけ合う。
今度は満面の笑みで「「よろしく(しゅう)。」」
キッドも自然な笑みを浮かべ「「よろしく。」」
こうして始まった俺の異世界物語。いきなり世界観がおかしなことになっているが気にしたら負けだ。キッドと同じくため息がでる。このため息は、この二人に対するため息なのか、これからのことを思ってのため息なのか、まだわからない。
だけど、今日から怒涛の1日が始まるのは確かだ。
……裏話。
(勇)やはり、我輩の目に狂いはなかった。あそこで突き飛ばしといて正解だったな。ハハァハハァ。
(キ)もう一回いってみろ(勇)……、(汗)いや、ほら、あれだよあれ。キッド氏ならやってくれるかな〜って思って。
(キ)コロス
(勇)落ち着こ。人類の偉大な発明「言葉」があるんだから。話し合えばわかる。
(晴)わいは止めんたんやけど。シクシク(嘘泣)
(勇)いや、ノリノリだったよねΣ。
(キ)遺言はそれだけか。(勇)い〜や〜。
*勇者フルボッコ中。
こうして、勇者の死を乗り越え校舎に向かう二人と一振り?だった。
続く
Q 何で桜の木があるの。
A 勇者が持ってきたらしい。(伝説&設定)