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弁当を食べたあとは適当に遊んで、時間を過ごしたよ。本当に適当なんだよ、だってさ、僕は走り回って遊ぶよりも、本やなんかを読んでいる方が好きなんだから。だから奴らのハードな遊びにはついていけないしついていこうとも思わないんだな。
でも、でもだよ、決して『大人しい奴』ではないんだ、そこだけは解ってほしいな。ただ、本が好きなだけであって、ゲームだってするし映画だって見るしカラオケやなんかにも行ったりするんだよ、本当に。でも、ミュージカルってやつはどうも好きになれないんだ、だってさ、よく考えてご覧よ、急に歌い始めて会話が成立するんだぜ?それにさ、観てるこっちが恥ずかしくなってこないかい?どうして歌ってるの?やめてくれよってさ、だから僕はミュージカルが嫌いなんだよ、でも『ダンサーインザダーク』は好きだったな、完全に妄想の世界として描いているからさ、あれは良いと思うよ、僕は。
おっと、話がそれたね、とにかく僕はさ、あいつらとハードな遊びをするのが好きじゃないんだ、それこそ、ミュージカルみたいに踊ったり歌ったりしながら遊んだりしても全く楽しくないと断言できるほどにね。
自由時間が終わったら、ゴミ拾いをして帰るんだけどさ『来た時よりも美しく』なんて言うだろ?あんなの難しすぎるんだよ。例えば、例えばね?全員が真面目にゴミを拾ったとするだろ?その時は確かに『来た時よりも美しい』かもしれない、でもね、そのあとに来たグループがそれをやると、来た時にはすでに完璧なんだから拾うゴミは自分たちの物だけで『現状維持』しか出来ないんだ、どうしても綺麗にするなら、最終的には雑草を抜くしかなくなってくるだろうよ。
そしてそんな『現状維持の時間』が終わったら、また学校まで歩いて帰るんだ。この時ほど憂鬱な時間は無いね、佐々山唯も女友達と帰っちゃってるし。途中で横切った線路を、横切らないでそのまま線路づたいに歩いて『1人スランドバイミー』でもしたい気分だったよ。
『スランドバイミー』いい映画だよね、僕もあんな青春を過ごしてみたいもんだ。でも僕の人生を映画化したら、お客は入ってくれないような内容だろうね。それくらい僕はこの時まで、しょうもない人生を送ってきてたんだよ。
さて、佐々山唯とたくさん話した遠足も、学校についたら終わりさ。みんながそれぞれ帰って行くんだ、友だちとファミレスやなんかに行ってバカみたいにドリンクバーを頼んでみたりする奴もいれば、部活がある人もいる、それぞれの生活に戻る。僕はどうするかって?帰って1人で"おいじり"するのかって?僕はね、家に帰って本を読むさ、あまりにも普通だろ?普通でいいんだ、遠足の後なんてやつはさ、遠足の時に羽目を外して、そのままその時の気分でいたいと思って遊び続けるからイヤになるんだよ、すっかり心を入れ替えてしまえばいいのにさ。
とにかく僕が何を言いたかったかと言うとね、遠足なんてものはミュージカルのように歌って踊っても面白くもなんともないし、ただ疲れるだけなんだ。でも、佐々山唯とたくさん話をする事が出来た、それを君に自慢したかっただけなんだ。君に顔を見せられないのが本当に悔しいよ、君が顔を見たらきっと嫉妬するぜ、三山圭介め!なんだってこんな可愛い子と一緒に歩けたんだ!ってね。