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さて、じゃあ話していくよ。僕の名前は三山圭介、前に書いたように、君と同じで学校が嫌いなごく普通の高校生だよ。
高校ってところは凄いもんだよね、中学では考えられなかった事が普通に行われてるんだからさ、そりゃあ地味だった奴も調子に乗って目立って楽しむし、中学の時から楽しく過ごしてきた奴はもっと楽しい時間を過ごすし、中学の時から残念ながら残念だったやつは残念な奴らとそれなりに楽しく過ごしているだろうさ。僕はどれにもなれていない中途半端野郎なんだよ。
高校に入学して最初のクラスっていうのは重要なんだ、そこでグループが作られたり、誰がリーダー格だとかが決まるんだよ。そのときに四谷って奴がいてね、こいつがどうも気違いみたいなんだ。
髪はボサボサで顔はニキビまみれの油でテカテカ、小太りで何も出来ないが図体だけ大きくて、なにかあるとすぐに「なにがあったの?ねえ?」なんて周りに確認するんだ、そのくせして人の言うことなんて殆ど聞いていやがらないんだから。君のクラスにも一人はいるだろう?こういう、四谷みたいな、どうしようもない奴がさ。
なんで僕がこの四谷の話をしたかと言うとね、こういう奴にだって良い所は一つくらいあるものなんだ、ってことを言いたいんだ。例えば奴の場合はだよ、女子の頼みは絶対に断れないタチだから、それを利用して金をせびったりパシったり出来るんだ、すごく便利だろう?みんなのアッシーくんさ。
他にも、一之瀬って奴がいてね、こいつは授業も真面目に受けてるし勉強も頑張ってるんだけど、成績はてんで良くないんだよ、本当に。ほら、君も見たことがあるだろう?ノート頑張って書いて、授業を止めてまで質問しまくってるクセにチンパンジーみたいな思考回路の奴をさ、奴はソレなんだよ。なんだってああいう奴らは自分がチンパンジーだと認めないんだろうね、きっと真面目で勤勉な自分に陶酔してるんだよ。もちろんそれは悪酔いだけどさ。
でも奴にだって良い所はあるんだ。僕が授業中に寝てても、奴にノートを借りて写せば直ぐに肩を並べることが出来るんだからさ。おまけに奴は、真面目で勤勉でいたいから、そういった頼みを断れないんだよ。ほらね、すごく便利だ。
ここまで読んで君は、僕が高校生活を楽しんでいるように見えたかい?そう見えたんなら君は二十回ほど眼科に行ったほうがいいね、いい医者を紹介するよ。だって僕は何も楽しんじゃいないセコイ野郎だからさ。四谷だって解ってるんだよ、「本当は俺にこういう事をさせて申し訳なく思ってるんだろう?三山圭介よ」ってさ。一之瀬だってそうなんだ、こいつはロクに授業も受けきれないダメ人間だなって、チンパンジーみたいな目で見つめてくるんだから。
じゃあ一体だれが本気で高校生活を楽しんでいると思うかい?たぶん、残念ながら残念だった奴らのグループなんだよ。イケてる奴らは楽しんでいるように見えるけど、あいつらは豆腐みたいなメンタルだから、少しでも人間関係が歪むと気違いみたいに騒ぐんだ、本当に気違いみたいなんだ。調子に乗った奴らは無理をしてるから疲れるんだよ、すごくね。でも残念な奴らは、もう自分たちは残念だって解ってるから周りを気にしないで気の合う連中だけで楽しんでるよ。
でも僕は、あいつらにはなりたいと思わないんだ、だってあいつらの趣味ときたら、同じような漫画とかフィギュアやなんかを集めてるんだよ、チンパンジーみたいにさ。