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〇〇〇『可愛いって言ったらぶん殴るぞ』〜歴戦のパーティーがロリショタに!?〜

作者: ひい
掲載日:2026/01/24

「で、報酬は?」


冒険者ギルドの応接室で、疾風のリオンは煙草を咥えたまま言った。三十代半ばの盗賊は、椅子に浅く腰掛け、片足を組んでいる。その態度は、目の前のギルドマスターに対する敬意のかけらも感じさせない。


「金貨千枚だ」


ギルドマスターの言葉に、室内の空気が微かに動いた。


「ほう」


窓際に立っていた巨漢——鋼鉄のガルドが、腕を組んだまま口角を上げる。四十を過ぎた傭兵団長の顔には無数の傷跡があり、その一つ一つが彼の歴戦を物語っていた。


「随分と気前がいいじゃないか。どんな依頼だ?」


「貴族のバカ息子の救出だ」ギルドマスターは溜息をついた。「三日前、デュラント辺境伯の次男坊がお遊びパーティーを組んで、新発見のダンジョンに潜った。で、そのまま音沙汰なしってわけだ」


「愚かですわね」


部屋の隅、暖炉の前に陣取っていた女が冷ややかに言った。氷華のエリシア。宮廷魔導師の称号を持つ三十代の魔法使いは、青白い杖を膝に置き、傲然と顎を上げている。


「身の程も弁えず、準備も不十分なまま未知のダンジョンに挑むなど。死んで当然ですわ」


「エリシア様、そこまで言わなくても……」


四人の中で最も若い——といっても二十代後半だが——聖女アリエルが困ったように眉を下げた。神殿騎士の白銀の鎧が、彼女の動きに合わせて小さく鳴る。


「でも、人命がかかっているなら、私たちが動かないわけには」


「そうだ。だからお前たちを呼んだ」ギルドマスターは四人を見回した。「このメンバーなら、どんなダンジョンだろうと問題ないだろう」


リオンは煙草の灰を床に落とした。


「で、そのダンジョンの情報は?」


「それが……ほとんどない」ギルドマスターは申し訳なさそうに言った。「一週間前に発見されたばかりでな。調査隊を送る前に、あのバカ息子が……」


ただ、とギルドマスターが一言。


「お遊びパーティーとは言え、監視用の魔法水晶を持っている。ダンジョンの外に出れば自動でダンジョン内で記録された映像が放送される仕組みだ」


リオンが目の色を変えた。


「ダンジョンの情報は有用だ。生き死にかかる……無用な死者が出る前にそれはみんなに知らせたほうがいいだろう」


重く、深く頷くギルドマスター。

少しの沈黙、エリシアがため息をついてーー。


「準備不足もいいところですわね」と鼻で笑う。


「だが、報酬は悪くない」ガルドが言った。「俺は受ける」

「私も」アリエルが頷いた。「困っている人を見捨てるわけにはいきません」


エリシアは数秒黙考してから、面倒臭そうに言った。


「……仕方ありませんわね。この私が手を貸してあげましょう」


三人がリオンを見る。盗賊は煙草を灰皿に押し付けると、立ち上がった。


「金さえ貰えりゃ、俺に文句はねぇよ」



ダンジョンは王都から馬で半日の距離にあった。


古代遺跡を思わせる石造りの入口が、森の中にぽっかりと口を開けている。周囲には辺境伯家の私兵が警備のために配置されていたが、その表情はどれも暗い。


「三日間、中から何の音もないんです」


私兵の隊長が説明する。


「魔法通信も通じません。何度か救出隊を送り込もうとしましたが……」


「どうした?」ガルドが尋ねる。


「入口の手前で、強力な魔力反応があるんです。我々のような一般兵では、とても……」


「分かった。後は任せろ」


ガルドが片手を上げ、四人はダンジョンの入口へ向かった。

石造りの通路は薄暗く、湿った空気が漂っている。リオンが先頭に立ち、罠の有無を確認しながら慎重に進む。


「おい」


リオンが立ち止まった。足元を指差す。


「床に魔法陣がある」


四人が見下ろすと、床一面に複雑な幾何学模様が描かれていた。淡い光を放ち、脈動するように明滅している。


「これは……転移魔法?」エリシアが眉をひそめた。「いえ、違いますわ。この紋様は見たことがない」


「危険か?」ガルドが尋ねる。


「分かりませんわ。ただ——」


エリシアの言葉が終わる前に、魔法陣が激しく輝いた。


「っ!?」


リオンが後ろに跳ぼうとしたが、間に合わない。光が四人を包み込み——


ズガァァァンッ!!


眩い閃光と轟音。

次の瞬間、四人の姿は消えていた。



意識が戻る。


最初に気づいたのは、視界が変わっていることだった。

いや、正確には——視点が低い。


「……ん?」


ガルドは自分の手を見た。


小さい。


明らかに小さい。


ゴツゴツとした傷だらけの大人の手ではなく、柔らかくて小さな——子供の手。


「は?」


声も変だ。自分の声なのに、高くて幼い。

慌てて立ち上がろうとして、ガルドは転んだ。

いや、転んだというより——鎧に潰された。


「ぐぉっ!?」


ぶかぶかの鎧が、まるで布団のようにガルドの体を覆っている。重い。動けない。這いつくばったまま、ガルドは周囲を見回した。


「な、なんですのこれぇぇぇ!!?」


甲高い悲鳴が響いた。


見ると、エリシアが——いや、エリシアだったものが——床に座り込んでいた。


六歳くらいの少女。


青白い髪はそのままだが、顔は幼く、体も小さい。宮廷魔導師の威厳ある姿は消え、代わりにそこにいるのは、ダボダボのローブに埋もれた少女だった。


「わ、わたくしが……わたくしが……!」


エリシアは自分の小さな手を見つめ、そして——泣きそうな顔になった。


「マジかよ……」


低い——いや、今は高い声が聞こえた。

リオンだ。こちらも八歳くらいの少年になっている。黒い外套が床を引きずり、まるで子供が大人の服を着ているようだ。


「おい、これ……どういうことだ?」


「み、みなさん……おちついて、くだしゃい……」


舌足らずな声。


振り向くと、アリエルが——五歳くらいの少女になって——聖槍を持とうとしていた。


だが、聖槍は彼女の身長よりも高く、そして重い。


「あ……」


聖槍が倒れる。

アリエルも一緒に倒れた。


「あうっ」


その様子があまりにも可愛らしくて、ガルドは——いや、ショタ化したガルドは——思わず言葉を失った。


「お、おれたち……ちびくなってる……」


七歳くらいの少年の声で、ガルドは呟いた。


エリシアが——幼女エリシアが——叫んだ。


「こ、こんなの……こんなの……ありえませんわああああ!!」


その悲鳴は、ダンジョンの奥深くまで響き渡った。



「まず、装備をどうにかしろ」


リオン——ショタリオン——が、床を引きずる外套を脱ぎながら言った。八歳くらいの少年の姿だが、口調は相変わらず冷たい。


「このままじゃ動けねぇ」


「お、おまえにいわれなくても……わかってる……」


ガルドは鎧の中でもがいていた。だが、バックルが固くて外せない。子供の力では、金属製の留め具を外すことができないのだ。


「くそっ……ゆびが……とどかねぇ……!」


可愛らしい少年の声で必死に呻くガルドを、リオンは冷めた目で見ていた。


「……お前、声可愛いな」


「うるさい!!」


ガルドが顔を真っ赤にして怒鳴る。その姿がまた可愛い。


「し、仕方ありませんわ……」


エリシアが立ち上がった。ローブの裾を何度も踏みながら、よろよろとガルドに近づく。


「わ、わたくしが魔法で——」


「待て」リオンが手を上げた。「お前、その状態で魔法使えるのか?」


「し、失礼ですわね! わたくしは宮廷魔導師ですのよ! この程度の——」


エリシアが杖を——自分の身長より高い杖を——持ち上げようとした。


重すぎて、後ろに倒れた。


「きゃっ!」


ふかふかのローブがクッションになり、エリシアはそのまま仰向けに転がった。手足をバタバタさせる幼女。


「……無理だな」リオンが断言した。


「む、無理じゃありませんわ! もう一度——」


「やめとけ。怪我する」


リオンは溜息をつくと、ガルドに近づいた。


「じっとしてろ。バックル外してやる」


「す、すまん……」


少年の姿で恥ずかしそうに言うガルドを、リオンは無言で見つめた。


「……お前、マジで可愛いな」


「だから、うるさい!!」



十分後。


ガルドはようやく鎧を脱ぐことができた。下に着ていた服もぶかぶかだが、鎧よりはマシだ。ズボンがずり落ちないように、腰紐をきつく縛る。


「うう……はずかしい……」


七歳の少年が、大人の服を着て恥ずかしがっている。

エリシアは杖を諦め、ローブの裾を膝のあたりで縛っていた。これで少なくとも歩くことはできる。


「わたくしが……わたくしが、こんな……」


幼女の顔で、エリシアは悔しそうに唇を噛んだ。目に涙が浮かんでいる。


「な、泣くなよ」ガルドが慌てて言った。「も、元に戻る方法を探せばいいだろ?」


「泣いてませんわ!!」


エリシアが怒鳴る。その声も可愛い。


アリエルは聖槍を諦め、腰に差していた短剣だけを手にしていた。それでも彼女の身長には大きすぎる。


「みなさん、とりあえず……奥に進みましょう」


舌足らずな声で、アリエルが提案する。


「貴族の方々を、助けないと……」


「そうだな」リオンが頷いた。「任務は任務だ」



四人は慎重に通路を進んだ。


だが、その姿はもう「歴戦のパーティー」ではない。

ぶかぶかの服を着た子供たちが、よちよちと歩いているだけだ。


「あ」


突然、ガルドが転んだ。ズボンの裾を踏んだのだ。


「いたっ……」


「だから、もっと裾を短くしろって言っただろ」リオンが呆れた声で言う。


「う、うるさい……」


ガルドが顔を赤くして立ち上がる。

その時だった。

通路の奥から、何かが近づいてくる音が聞こえた。


ぐちゅ、ぐちゅ、という湿った音。


「っ!」


リオンが身構える。

暗がりから現れたのは——

スライムだった。


青白く光る、直径一メートルほどのゼリー状の魔物。

普段なら、雑魚もいいところだ。


だが、今は違う。


「く……!」


ガルドが腰の剣を——元々は両手剣だったが、今は大剣サイズに見える——抜こうとする。


重い。


引き抜けない。


「ぐぬぬ……!」


七歳の少年が、必死に剣を引き抜こうとしている。可愛い。


「わ、わたくしが——」


エリシアが叫ぶ。


「氷結魔法! こおりの——」


舌が回らない。


「こおりの、たて……じゃなくて、たておお!!」


魔法が暴発した。


氷の壁が出現する——エリシアとガルドの間に。


「えっ」


二人が凍りついた。物理的に。


「ば、馬鹿野郎!!」


リオンが叫ぶ。


スライムはぐちゅぐちゅと近づいてくる。


「ええい、もう!!」


リオンは短剣を抜くと、スライムに突っ込んだ。


だが——


「っ!」


体が小さすぎる。

リオンの短剣は、スライムの表面をかすめただけだった。


「使えねぇ……」


八歳の少年が、可愛らしい顔で毒を吐く。

スライムが触手を伸ばす。


「あぶない!!」


アリエルが駆け寄り——


転んだ。


「あうっ!」


五歳の少女が、床に倒れ込む。


「もう、無茶苦茶だ……!」

リオンは周囲を見回した。通路の両脇に、排水用の溝がある。そして、その先には——


「……あった」

リオンは溝に向かって走った。スライムも追ってくる。

リオンは溝の先にある、古い機械仕掛けのレバーを見つけた。


「これだ!」

全力でレバーを引く。

ガコン、と音がして——

天井から、大量の水が降り注いだ。


「うわっ!?」


スライムが水流に押し流される。そのまま排水溝に流れ込み、消えていった。


「……やった」


リオンは息を切らしながら、その場に座り込んだ。



氷が溶けた後。

四人は全身びしょ濡れで、通路の隅に座り込んでいた。


「……スライム一匹に、これかよ」


リオンが呟く。

ガルドは膝を抱えて、落ち込んでいた。


「おれ、よわい……」


七歳の少年が、しょんぼりしている。


エリシアは泣いていた。本当に泣いていた。


「うぅ……魔法が……使えないぃ……」

六歳の幼女が、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっている。

アリエルは慰めようとしたが、自分も泣きそうだった。


「だ、だいじょうぶ……ですよぉ……」


舌足らずな声が、まったく説得力を持たない。


「……最悪だ」

リオンが天を仰いだ。

「こんな任務、聞いてねぇ……」



それから二時間。

四人は何とか奥へ進んだ。


途中、ゴブリンに襲われたが(リオンが罠で撃退)、コウモリの群れに襲われたが(アリエルが聖水をぶちまけて追い払った)、落とし穴に落ちそうになったが(エリシアが泣きながら浮遊魔法を使って何とか浮いた)——


ともかく、何とか進んだ。


そして、ダンジョンの最深部と思われる広間に辿り着いた。

そこには——


「た、たしゅけてくだしゃい……!」


五歳くらいの少年が、泣きながら座り込んでいた。

周囲には同じくらいの年齢の子供たちが三人。みんな泣いている。


「……見つけた」

ガルドが呟いた。

「貴族のバカ息子だ」



話を聞くと、彼らも入口で転移され、ショタ・ロリ化したらしい。


だが、戦闘経験のない彼らは、最初のスライム戦で全滅しかけ、この広間に逃げ込んでそのまま三日間閉じこもっていたという。


「おなかすいたよぉ……」


「おうちにかえりたいよぉ……」


子供たちが泣く。

アリエルが優しく頭を撫でた。


「だいじょうぶ。もう、あんしんして」


舌足らずな声で、アリエルが微笑む。

「わたしたちが、まもるから」


五歳の少女騎士が、必死に勇敢さを装っている。その姿に、貴族の子供たちは少し安心したようだった。



「さあ、帰るぞ」

ガルドが——七歳の少年ガルドが——立ち上がった。


「任務は完了だ」


「そうですわね」


エリシアも立ち上がる。涙の跡が残る顔で、それでも気丈に振る舞っている。


「わたくしたちは、プロですもの」


「おう」

リオンが煙草を咥えようとして——ポケットが深すぎて届かなくて——諦めた。


「とっとと帰ろうぜ」



帰り道は、意外とスムーズだった。

来た道を戻るだけだし、罠の位置も分かっている。


貴族の子供たちは怖がっていたが、アリエルが手を繋いで励ましながら進んだ。


「ほら、もうすこしだよ」

五歳の少女が、同じくらいの年齢の子供たちを励ます。


その光景は、微笑ましいというより——シュールだった。



そして、入口の魔法陣に到達した。


「ここを通れば、戻れるはずだ」

リオンが言う。


「たぶんな」


「たぶん?」ガルドが聞き返す。


「確証はねぇよ。でも、他に方法もねぇ」


「……そうだな」

四人は魔法陣の上に立った。貴族の子供たちも一緒だ。


「じゃあ、行くぞ」

リオンが魔法陣を足で踏む。


ズガァァァンッ!!

再び、光と轟音。



次の瞬間——


四人は元の姿に戻っていた。


「……おお」

ガルドが自分の手を見る。大きい。傷だらけの、ゴツゴツした手。

「筋肉が……筋肉が戻った……!」


ガルドが感動のあまり、両手を天に掲げた。


「二度と……二度とあんな屈辱は……」


エリシアが顔を真っ赤にして俯いている。


「忘れてください……全部、忘れてくださいまし……」


「ああ、最悪の依頼だった」


リオンが煙草に火をつける。大人の指で、大人の動作で。

「もう二度とごめんだ」


アリエルだけは、少し名残惜しそうだった。

「でも……みんな可愛かったですよ?」


「やめろ」

三人が同時に言った。



冒険者ギルドに戻ると、ギルドマスターが待っていた。


「おお、無事だったか」

「ああ」ガルドが頷く。「任務完了だ。報酬をくれ」

「もちろんだ」


ギルドマスターはニヤリと笑った。


「ところでだな」


「……何だ?」

リオンが嫌な予感を覚えた。


「本人たちの希望だから仕方なくなーー」


四人が凍りついた。


「ーー君たちが小さくなった姿は魔法水晶を通して、すべて広まったぞ」


「……は?」


「“ちっちゃくなった伝説の冒険者たち”って題で、ギルドの広報資料にするわ。いやあ、みんな可愛かったぞ。特にガルド、お前が転んで——」


「やめなさああああい!!!」


エリシアの絶叫が、ギルドに響き渡った。



その後、四人は必死にギルドマスターを説得したが——

映像は既に、王国中の冒険者ギルドに配布されていた。


「“歴戦の勇者、ショタ・ロリ化事件”として、後世まで語り継がれるだろうな」


ギルドマスターはそう言って、高笑いした。

四人は——特にエリシアは——その日、何度も何度も絶叫した。

だが、報酬の金貨千枚は確かに受け取った。


プロとして。



おまけ


この事件の後、四人のパーティーは「ショタ・ロリ四人組」という不名誉なあだ名で呼ばれるようになった。


ガルドは酒場で映像を見られるたびに激怒し、エリシアは外出時に変装するようになり、リオンは「可愛かったな」と言われるたびに相手を殴り、アリエルだけは「みんな可愛かったですよね」と微笑んでいた。


そして——


あのダンジョンは「若返りのダンジョン」として、一部の好事家の間で人気スポットになったという。

ただし、二度目に潜った冒険者は、誰一人として戻ってこなかった。


なぜなら——


子供の姿で、ダンジョンから出られなかったからだ。

めでたし、めでたし?


――完――

急に……ロリショタが書きたくなったんだ……他意は、ない。

(`・ω・´)キリッ!

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