第3話:偽造封書と無章の判断
※この話は「序章の最終任務」です。
序章(全8話)のラストエピソードになります。
村の天井は黒曜石のように暗く、
ところどころに生える“燐光苔”が青白い光を落としている。
家々は赤土と石を積み上げて作られ、
壁には地下水脈から取り出した淡い青の鉱石が埋め込まれていた。
足元の地底湖は静止した鏡のようで、
風もないのにときどき小さく波紋が広がる。
反政府組織のリーダらしい青年が声をかけてくる。
「人質との交渉か?」
ドキッとして手紙を出す。
和蘭も交渉はしているはずだ。私の手紙までみんな知っている。
だから女がくるってことは、公証人とと思われも仕方がない。
「郵便団のものです。手紙を届けに来ました。」
少し話がズレる。交渉なんて、私にはできない。
「おい、ねぇちゃん。こんなへんぴなところに宅配かい?」
「はい。ヒロト様の母より手紙です。この手紙を届けてほしいとのことです。」
「はぁ? 状況わかってんのかぁ。」
そうなるとは思う。人質をとっているのに、人質に手紙って、私もそう思う。
「ですが、私の任務は手紙を届けることです。どんな場所にも確実に渡すことです。
任務は譲れません。」
強い口調で言う。まぁ研修は“ポーカーフェイス・淡々とこなす”。
(やっちゃったなぁ。)
「まぁいい。渡しておくから帰っていい。」
「待ってください。手紙は直接渡すのがルールです。会わせてください。」
少し、手紙を見つめている。
隠されたりしたら、それで“不達”だ。
それだけだ。
「わかった。手紙を渡すだけだな。」
そう言って、奥の地下牢に連れて行かれた。
地下牢と思ったが、部屋に着くと、
天井は低いが応接間のようで狭さがない空間。
砂漠の文化である厚手の絨毯が一面に敷かれている。
壁には金糸を織り込み古代詩が刻まれている。
地下の洞窟で外は見えないが、中東特有の曲線美でアーチの装飾窓。
まるで“祈りだけに使われる部屋”だった。
「あなたがヒロト様ですね?」
「はい。」
私は本人確認のルールに従う。淡々とこなす。
個人認証問題なし。
手のほくろの位置問題なし。
「足を見せてくれませんか?」
足の確認をする。骨折の癒痕を確認する。
手で触り膨らみを確かめる。
「本人ですね。では手紙を渡します。」
「ありがとうございます。」
何人もの人に手紙は見られている。
内容は一言、「無事を祈っています。 母より。」
それだけだ。メッセージも暗号もない。
なぜこんな手紙を送るのだろうかと疑問に思う。
これで終わり。完達だ。
条件もクリアだ。
あとは帰るだけ。飛行機が離陸し、安堵する。
(国を出るまではミッション。)
さぁ、これで本当に達成だ。




