終焉の瞳
夜の帳が都市を包み込む。雨が静かに窓を叩き、街の灯りをぼやけさせていた。
薄暗いビルの一室で、彼女は鏡の前に立っていた。コードネーム《フィナ》。その名は、出会う者すべてに終わりを告げる鐘の音のように響く。
「終わりを見届ける――それが、私の役目」
唇に微かな微笑みを浮かべ、彼女はゆっくりとその瞳を手で覆う。特別な瞳、《メモリア・オキュラス》。それは断片的に過去と未来を映し出す呪われた力。
警察組織に潜入して半年。数々の情報を《アレクトラ》に送り続けてきたが、今夜、何かが違った。背後から忍び寄る気配。だが、彼女はすでに感じ取っていた。
「来る……」
薄暗がりの中、静かに身を翻す。現れた男の顔は仮面のように冷たく、言葉はなかった。ただ一つ、《終焉》の意志を背負った銃口が彼女に向けられていた。
その瞬間、彼女の瞳に未来の映像が炸裂した。逃げ場のない廃工場。銃声。倒れる影。そして、絶望の色に染まる夜明け。
だが、《フィナ》は諦めなかった。過去と未来の狭間で、運命を塗り替える一手を探し続ける。その瞳の奥に、確かな決意が灯っていた。
「終わらせるのは、私自身――まだ、終わりじゃない」