第二章:ハルト、ピンチの連鎖!
シーン1:音楽部の地獄練習
星ヶ丘高校、音楽部の部室。放課後の教室に、ギターの音とカズヤの叫び声が響く。
「よーし、みんな! スターフェスまで気合入れていくぞー!」
大沢カズヤ、音楽部部長の言葉に部員たちは「うおー!」と盛り上がるけど、藤崎ハルト、つまり僕、は部室の隅で縮こまってた。
「ぼ、僕、ほんと歌とか無理なんで…帰っていいですか…?」
気弱な声で呟くけど、カズヤの目がギラッとこっちを向く。
「ハルト! お前、昨日あのビブラート出したろ! 絶対才能あるって!」
「ひっ! あ、あれは…ちょっと真似しただけだって…!」
必死で誤魔化すけど、心臓がバクバク。昨日、ついミアの癖でビブラート出しちゃったのがバレかけてる…。ミア・ステラ、つまり僕が夜に女装して歌ってるアイドルなんて、絶対バレちゃダメなんだから!
そこへ、部室のドアがガラッと開く。現れたのは、ライバル校の小林リコ。ツインテールに分厚いメガネ、肩には「ミア・ステラ推し!」と書かれたトートバッグ。
「ふふん、星ヶ丘の音楽部、偵察に来ましたー! ミアの気配、絶対ここにあるよね!」
リコの双眼鏡がキラリと光り、僕をガン見。
「う、うわっ、な、何!?」
「藤崎ハルト…怪しい! ミアのライブの日に、学校でハミングしてたって噂!」
「そ、そんなわけ…ないよぉ!」
僕、顔真っ赤で手をブンブン振るけど、リコのオタクセンサーがビンビン反応してるみたい。カズヤもノリノリで絡んでくる。
「ハハ! リコちゃん、鋭いな! ハルト、ミアの隠れファンだろ? なあ、ミアのサイン持ってるか!?」
「持ってない! 知らない! ミアって…誰!?」
叫びながら、内心で絶叫。やばい、やばい、バレたら学校生活終わる! ミナミ姉貴の借金も返せなくなる!
シーン2:ミナミの無茶振り
夜、ミナミのボロアパート。僕、制服のままソファに突っ伏してた。
「うう…僕、なんでこんな目に…」
目の前では、ミナミ姉貴がピンクのフリフリ衣装を振り回してる。
「ハルト、グズグズ言わない! 次のライブ、来週よ! 新曲のダンス、練習しなきゃ!」
「で、でも、僕、ダンスとか…足絡まるだけだし…ミア、辞めたいよぉ…」
ミナミ姉貴、ニヤッと笑ってスマホを突きつける。ミアのSNS、フォロワー7万超え。コメント欄は「ミア最高!」「天使の声!」で埋まってる。
「ほら、ファンの期待! 借金返済もあと900万! ハルト、ミアで稼ぐしかないの!」
「うっ…姉貴の借金、なんで僕が…」
グチるけど、ミナミ姉貴のキラキラした目を見ると、断れない。彼女のアイドルの夢、僕がミアになって叶えるしかないんだ…。 ミナミ姉貴が新曲「キラ☆メキ・ドリーム」の振付を教えてくる。フリフリのスカートでターン、ウィンク、ジャンプ。
「ひっ、こんなの無理! スカート、ひらひらしすぎだし…!」
「ハルト、女の子の可愛さ出して! ミアは完璧なアイドルなの!」
試しにウィッグつけて歌ってみると、ボイスモジュレーターが僕の声をキラキラに変える。
「キラキラの夢、つかまえて! ハートに火をつけるよ!」
歌い終わった瞬間、ミナミ姉貴が拍手。
「ハルト、最高! これでライブ、絶対バズる!」
でも、僕、鏡に映るミアを見てドキッ。ピンクのウィッグ、キラキラのメイク。僕じゃない、別の人みたい…。でも、この姿じゃないと、僕の声、怖くて出せないんだ…。
シーン3:ライブ当日の大ハプニング
ライブ当日、ライブハウス「スターダスト」。バックステージで、僕はミアに変身済み。ピンクのドレス、キラキラのコンタクト、胸パッドもバッチリ。
「うう…やっぱり緊張する…バレたらどうしよう…」
ミナミ姉貴が背中をバン!と叩く。
「ハルト、気合入れな! ファンが待ってるよ!」
ステージに上がると、観客の歓声がドーン!
「ミア! ミア!」
スポットライトが眩しい。僕は、ミアとしてマイクを握る。
「みんな、準備OK? ミア・ステラ、行くよー!」
新曲のイントロが流れ、僕、ダンスと歌で会場を盛り上げる。観客のサイリウムがキラキラ光る。やばい、バレないように、完璧にミアでなきゃ! でも、運命のハプニング。ダンスのターンで、ウィッグがズレた!
「ひっ!?」
慌てて手で押さえるけど、観客が「ミア、ウィッグ!?」とざわつく。ミナミ姉貴、袖で「落ち着け!」とジェスチャー。
「え、えっと、ファッションだよ! ミアの新スタイル!」
適当なアドリブで誤魔化すけど、冷や汗ダラダラ。さらに、モジュレーターの電池がピーッと警告音! 僕の地声が一瞬漏れる。
「キラキラの…う、うわっ、ケホッ!」
「ミア、風邪!?」「いや、声低くね!?」
観客が騒ぐ中、僕は必死で咳き込んで誤魔化す。「ゴホゴホ! 大丈夫、ミア、絶好調!」 最悪なことに、客席にカズヤとリコの姿! カズヤ、目をキラキラさせて叫ぶ。
「ミア、声がハルトに似てる! やっぱハルト、ミアの親戚だろ!?」
リコは双眼鏡でガン見。「そのウィッグのズレ…絶対秘密隠してる!」
「うそ、なんでここに!?」
僕、ステージ上で半泣き。ミアの仮面、崩壊寸前!
シーン4:ギリギリの脱出
ライブ後、バックステージに逃げ込む僕。ミナミ姉貴がタオル投げてくる。
「ハルト、ウィッグズレたのヤバかったけど、なんとか誤魔化せたね!」
「誤魔化せてないよ! カズヤとリコ、めっちゃ疑ってる!」
そこへ、楽屋のドアをドンドン叩く音。
「ミアさーん! サインください!」
カズヤの声! 僕、慌ててウィッグとドレスを脱ぎ捨て、制服に着替える。メイク落とす時間ない!
「姉貴、助けて!」
ミナミ姉貴、ニヤニヤしながら僕をクローゼットに押し込む。
「ハルト、隠れてな! 『ミアは帰宅した』って誤魔化すから!」
カズヤとリコが楽屋に突入。リコの双眼鏡がキラリ。
「ミア、どこ!? 絶対ここにいるよね!?」
ミナミ姉貴、堂々と嘘つく。「ミア? もう帰ったよー。ハルトなら、そこに!」
クローゼットから引っ張り出された僕、顔にメイクの残りが…!
「う、うわ、僕、ただの…ファンです!」
カズヤ、僕の顔をガン見。「ハルト、なんかキラキラしてるぞ? メイク!?」
「ち、違う! 汗! 汗が光ってるだけ!」
必死で誤魔化すけど、リコがメモ帳に「ハルト=ミアの可能性80%」と書き込む。僕、心の中で絶叫。「もうダメだ、僕の人生、終わり!」
シーン5:ハルトの決意(?)
深夜、僕の部屋。ベッドに突っ伏して、ミアのウィッグを見つめる。
「うう…僕、こんなドタバタ、いつまで…」
スマホに、ミアのライブ動画がアップされてる。コメント欄は「ミア、最高!」「ウィッグズレても可愛い!」で溢れてる。
「みんな、ミアのこと…こんなに好きなんだ…」
ミナミ姉貴の借金、ファンの笑顔、そして僕の歌。ミアじゃないと、僕、こんな風に輝けない。
「もうちょっと…ミア、やってみるか…」
でも、ミアのSNSにまた怪しい通知。「ミア・ステラの秘密、バラすよ」。
「ひっ!? また!? 誰だよ、これ!?」
窓の外、夜の星がキラキラ。僕のドタバタな二重生活、まだまだ続きそう…。(つづく)