第一章:ミア、絶体絶命のデビュー!
シーン1:ハルトの冴えない朝
星ヶ丘高校、2年B組の教室。朝のホームルーム前、藤崎ハルトは窓際の席で、ぼーっと空を見ていた。メガネをかけた地味な少年、髪はボサボサ、制服はヨレヨレ。クラスメイトの会話が彼を素通りする。
「ハルトって、存在感ゼロだよな~」
「ハハ、ほんと! 空気みたい!」
ハルトは聞こえないふりで教科書をめくるが、心の中ではため息。「いいんだ、これで。目立たないのが僕の生き方…」
そこへ、教室のドアがバーン!と開く。
「よぉ、ハルト! 昼休み、音楽部に来いよ!」
現れたのは、ハルトの幼なじみの大沢カズヤ。黒髪ショートカット、制服のネクタイを緩めた音楽部部長だ。ハルトは目を丸くする。
「え、僕、音楽とか…無理! 歌とか、超下手だし!」
「ハハハ! いいから来い! スターフェスの優勝、俺たちで掴むんだよ!」
カズヤの目は、なぜかキラキラ。ハルトは嫌な予感しかしない。「やばい、関わると面倒なことに…」。その日は音楽部の見学だけで済んだが、カズヤはハルトを音楽部に誘う気満々らしい。ハルトはテキトーにカズヤに話を合わせながら、普通に帰宅しつつ「そういえば、今日はミナミ姉貴のライブの日だっけ…」と独白する。
シーン2:運命の夜、ミアの誕生
夜、小さなライブハウス「スターダスト」。ハルトは、親友の姉・宍戸ミナミに呼び出されていた。ミナミは、派手なメイクとミニスカートの20歳。インディーズアイドルを目指す彼女は、今日が初の単独ライブだ。
「ハルト、お願い! 私、階段で足捻って動けないの!」
楽屋で、ミナミは足を庇いながら泣き顔で訴える。ハルトはパニック。
「え、でも僕に何を!? 歌とか無理だって!」
「いいから! 私の衣装着て、代わりに歌って! 借金返さないと、私、ヤクザに…ううっ!」
ミナミの涙に負け、ハルトは渋々承諾。楽屋の鏡の前で、ピンクのフリフリドレス、ピカピカのウィッグ、キラキラメイクを施される。ボイスモジュレーターのマイクを渡され、試しに歌ってみると…
「うわ、僕の声、めっちゃ高く…可愛い!?」
ハルトの普段の声が、モジュレーターで透き通るソプラノに変身。ミナミも目を輝かせる。
「完璧! ハルト、ミア・ステラとしてデビューよ!」
ハルト「何その名前!?聞いてないよ!」
ステージに押し出されたハルト、いや、ミア・ステラ。スポットライトの下、観客の歓声が炸裂。
「ミア! ミア!」
ハルトは震える足を抑え、ミナミのオリジナル曲「スパークル☆ハート」を歌い始める。
「キラキラの夢、つかまえて! 夜空に届くよ、君のハート!」
ぎこちないダンスと、モジュレーター越しの歌声が、なぜか観客を大熱狂させる。SNSでは「ミア・ステラ、謎の新人アイドル爆誕!」と動画がバズり始める。ハルトはステージの裏で倒れそうになりながら呟く。
「何これ…僕、アイドル!?」
シーン3:学校での危機
一週間後、教室はミア・ステラの話題で持ち切り。カズヤがスマホを掲げ、ミアのライブ動画を見せる。
「な? ミアの声、めっちゃ天使じゃん! 俺、絶対ファンクラブ作る!」
ハルトは冷や汗。動画のミアが、自分だとバレるわけにはいかない。
「へ、へえ、いいよね…」
だが、カズヤが急にハルトの顔を覗き込む。
「そういや、ハルト、お前、昨日の放課後、校庭で何か歌ってなかった?」
ハルトの心臓が止まりそうになる。昨日、ミナミの曲を無意識に口ずさんでいたのだ。
「ち、違う! 僕、歌とか…カエルみたいだよ!」
ハルトはわざと音痴な声で歌い、カズヤを笑わせて誤魔化す。だが、カズヤの目が一瞬鋭くなる。「マジか…似てると思ったんだけどな」
放課後、音楽部の部室。ハルトはカズヤに連れられ、しぶしぶ参加。そこには、ライバル校の偵察に来た小林リコ(女子高のオタク女子)がいた。リコは、ミアの熱狂的ファンで、双眼鏡片手に部室を覗く怪しい行動。
「ふふ、星ヶ丘にミアの気配を感じる…! 絶対、関係者がいる!」
ハルトは、リコの視線にビクビク。部活の練習で、わざと音を外して歌うが、緊張のあまりミアのビブラートが一瞬漏れる。
「お、お前! そのビブラート、ミアと同じじゃん!」
カズヤが叫び、ハルトは慌てて誤魔化す。
「いや、これ、僕のクセ! ミ、ミアとか知らないし!」
部員たちが爆笑する中、ハルトは内心で叫ぶ。「やばい、早速もうバレそう!」
シーン4:二重生活のドタバタ開始
夜、ミナミのボロアパート。ハルトは、ミアの次回ライブの準備に追われる。
「ハルト、ミアのSNS、フォロワー5万超えた! 次はもっと派手にいくよ!」
ミナミがウィッグを手にハルトを追い回す。ハルトは悲鳴を上げる。
「待って!僕、こんなキラキラ衣装ムリ! 学校でバレたら人生終わる!」
だが、ミナミはニヤリ。
「借金1000万、私だけじゃ返せないよ? ハルトも共犯な!断るなら学校に正体バラすから!(ニヤリ)」
ハルトは頭を抱える。ミアとして稼ぐしかないが、学校ではカズヤとリコの追及が待っている。
その時、スマホに通知。ミアのSNSに、謎のアカウントからメッセージ。
「ミア・ステラ、あなたの正体、知ってるよ」
ハルトは青ざめる。「誰、これ!? まさか、昨日のライブでメイクミスった!?」
ミナミは笑いながら言う。「大丈夫、モジュレーターとメイク完璧だったじゃん! ハルト、ミアとして輝きな!」
ハルトは、鏡に映るミアの姿を見つめる。ピンクのウィッグ、キラキラのドレス。
「僕…これ、いつまで続けるの…?」
外では、夜の街が輝いていた。ミア・ステラの次のライブが、運命をさらにドタバタに変える――。(つづく)