アルテミスのお仕事
もやがかった場所を
穏やかな野原の一本道にアルテミスが変えたことで
りおはアルテミスが神だと理解する
アルテミスはりおを神さまの世界に連れてきてしまった
いきさつをはなしはじめた
「はい、そうですよね
たちばなしもなんですし
わたしんちきてください
そんなに遠くはないんで
歩きながら、おはなしさせてください」
「わかりました
あーみんが良くも悪くもキーパーソンなのは
理解できたし
わたしはあーみんについていくしかないしね」
「ありがとうございます
じゃあ、こちらへどうそ」
アルテミスがそういうと
それまでのもやがかった風景が一変した
穏やかな野原の風景に
一本道があらわれて
こっちだよーっていっているみたい
「………あー
なんとなく
あーみんが神さまって理解したかも
この風景はあーみんがわたしにみせてる的な?」
「あ、そうなんです
りおりんすごいね
いま、りおりんがみてる風景は
りおりんとわたしだけが感じている風景なんです
わたしはへなちょこなんで
うまく表現できてるか、ちょっとドキドキしてます
あーみんにとって自然な風景かなって
おかしなとこがあったら
ここが変だよって教えてくださいね」
「ううん
全然いいよ
このほっこり感
あーみんぽい
いまの状況ってほんとはすごい状況なんだけど
あーみんのおかげですごくあたたかく感じるよ」
「そういってもらえると
わたしも嬉しいです
わたしたち神はいろいろな仕事をしています
りおりんたち人間と同じです
広報みたいな感じで人間界で暮らす神もいます
わたしは一般の神の部類
シフト制でりおりんたちの生活を見守っています」
「え、わたしはあーみんに見守られてるんだ…
見守りって具体的にどんなことしてるの」
「んー
あんまり細かいことはいえないかもですけど
チームでなごみ市全体を見守ってる感じです
わたしでいえば5人一組のシフトのひとりで
仕事中はりおりんたち…
そうですね、2万人くらいの生活?をみています
今朝はわたしのシフトでした
で、今回のミスがあったので
りおりんのところに駆けつけたんです
非番の子にシフトを急遽代わってもらったから
少し来るの遅れました。ごめんなさい」
「ううん、いまこうして対応してくれてるし
大丈夫だよ
…2万?
そんなに多くのひとを見守ってるの?」
「えへへ
そうなんですよ
…とかいってみたいけど
神みんながやってることだし
わたしはミスが多いから…
ほかのみんなは、ほんとにすごいと思います」
「えー
あーみんすごいよ
すこしだいぶ尊敬の目キラキラ
あ、人間界にも神さまいるっていってたよね
そっか、天照大神とか卑弥呼とか
お伊勢さんとかもそうなのかな…
あ、聖徳太子もあーみんの仲間なの?」
「そうですね
聖徳太子さんももちろん神ですよ」
「聖徳太子は一度に10人のはなしをきいたって
伝説があるけど
聖徳太子が神だったら
そんなことはたやすかったんだろうね
あーみんは2万人だから
聖徳太子2000人分だ
やっぱりすごいよ」
「ありがとう
だけどほんとにみんなはもっとたくさんのこと
同時にしてるから…
あ、ここがわたしのおうちです
どうぞ」
「あ、はなし途中でついちゃった
あっという間だったね
じゃあ、おっじゃましまーす
もっともっと神さまのおもしろいはなし
きいてみたいよ」
「おもしろいって…
ま、まずは
りおりんをここに連れてきちゃったこと話しますね」
「あ、そうだった。。
すっかり忘れてたよ
ま、戻れるなら
いっそゆっくりしてもいいかなー
こっちも楽しめたら、よい思い出になるし
ただ、あちらの世界もできるだけ途切れなく戻りたいね」
「うん、わたしもそうできるようにがんばります
わたしのせいで連れてきちゃいましたから…
はい
なにもありませんが
お茶とお菓子を召し上がってください」
「あ、ありがとー
神さまのおやつ食べる人間って
そうそういないよね
これもいい思い出になるかな」
「おくちに合えばいいのですけど
で、ですね
わたしはどんな仕事をしてるかってとこからですけど…
簡単にいえば、りおりんたちの生活のお手伝いです
りおりんがこうしたいって考えることに対して
すごく努力していればなんとかできるように
サポートするみたいな」
「え?
それってわたしの人生はあーみんが握っているってこと?
お釈迦さまの手のひらの上でいきがってる悟空みたいな」
「実際そこまで
りおりんの人生を左右するまでのことは少ないけれど
その気になればまぁ…」
「え、そうなの?
わたしはいまからでもあーみんにごますったほうがいい?」
「いやいや、わたしは担当するみんなに平等のつもり
りおりんはすごく努力してるから
幸せなことも起こりやすいんですよ
わたしの仕事
すこし具体的にはなしますね
今回、りおりんがここにきちゃった原因…
わたしはなごみ地区のみんなを見守ってるって
お伝えしました」
「うん、わたしの生活もあーみんが見守ってるって」
「そう
簡単にいうとりおりんの行動や願いに
それぞれポイント……点数ね
ポイントがあって
行動によって加点、減点してるの
だから、りおりんの願い事
ここまでポイントが到達したら
その願い事叶えますみたいな」
「…えー、じゃあさ
わたしの日々の行動それぞれがポイントになって
その累積でお願いが叶ってるの?」
「りおりん
するどいですね
そのとおりです
さすがになにをすると何点とかはお伝えできないですけど
読んでくれているヒトにもわかりやすくいえば
作家になるってお願いは10万点で叶い
クルマがあたるのは30万点で叶う
みたいに思ってもらえるとわかりやすいです
1日の間になにかを努力してすごしたら
きょうは10点獲得とか…
あと、トライアルチャンスみたいなのもあります
賭けにかったら2倍ポイントで10点が20点になる
といった感じです
りおりんの場合
作家さんになりたいって願い事は
ずっと努力してて、実力もあるから
本来10万点のところを3万点達成で願い事叶えたりとか
そのあたりのさじ加減をするのもわたしたちの仕事です
さっきいってた
トライアルチャンスにしてもいろいろあります
たとえば通常はポイント2倍のところ
賭けるものによっては最大10倍まで可能といった感じです
例えば、りおりんみたいに
命を懸けるような大勝負は10倍になります」
「……んー?
えー
わたしそんな大勝負はしてないよ」
「えー
よく命懸けてらっしゃいますよ
わたしはりおりんが毎朝のように
命懸けているってすごいなって思ってますよ
…今朝も命懸けてて
失敗判定になっちゃったから…
えっと、実際はわたしの判定ミスで
成功していたのに失敗にしちゃったからですけど…
命おとして、ここに連れてきちゃったんですよ」
「…あ、あー
確かに『この段差乗り越えられなければ
命をおとす』とか思ってたっけー…
えー?
あれが大勝負だったんだ?
ごめんね…
えっと
あれはわたし自身に気合をいれるための
おまじないみたいなもので…
…いや、そもそもわたし
まけないことしかしないし
今朝だってふつうに勝って
よし、じゃあ、きょうもかんばろーって
気合いれただけだったんだけどなー
そしたら身体が動かなくなって…」
「そうなの
あの大勝負は、りおりんがいうように勝ってたの
だけど、わたしが〇☓判定する段差をひとつ間違えてて
あ、一つ先の段差と勘違いしてて…
わたし実はりおりんのこといろいろ応援してて…
いつも命懸けで頑張ってるし
前向きに自分のしたいことを実現してるし
わたしも見習いたいって。
そしたら、わたしの勘違いだったとはいえ
『わーついにまけちゃった
えーせっかくここまで勝ち続けてたのに
わーどうしよ』
って、わたしひとり悲しんでて
それでもまけちゃったから
ルールに従わなきゃダメかーって
ショックを受けながら
いのちをなくす手続きしちゃったの
そしたら
あ、間違いだって気付いて…
りおりん、ごめんね
ほんとにごめんなさい」
「…って
えっ?
りおりんの命賭けてって
ホントに賭けてるわけじゃないの?
えーそうなの?
それじゃあ10倍ポイントもわたし間違えてつけてる?」
「いやいや
ホントに命賭けるわけないじゃん
会社いく気にするおまじないだよ
おまじないで命おとしてたら
命いくつあってもダメじゃん
それに、あーみんみたいな
生真面目な神さまがみてることも想定?して
わたし勝つ勝負しかしないし
今回もいつも通りに勝ってるし…
……あ、あーみん
さっき間違えたっていってた…
間違えたの?」
「うん
間違えたの
だから、取り消してもとに戻したいの」
「うおーーーマジか?
それはあーみん、間違いなく戻してね
あ、こうしてる間に地上のわたしの身体は大丈夫なの?」
「あ、それを先に対応しないとって思って
駆けつけたんでした」
「ちょっとまって
もしかしてまだ、地上の身体はそのままなの?
あ、もしかして時間戻せる?」
「ごめん
わたしは戻せないです
ゼウスじいちゃんだったらできるけど
戻すことはしないと思います
もし戻しちゃったら
すべて、それまであったことがなしになっちゃって
ほかのひとへの影響ありすぎるから…」
「わー
そしたら、わたしの本体はいまどうなっているの?
ちょっと、こんなにゆったりしていられなくない?」
「はい
わたしもそう思います
人間界で
お葬式とかの段取りされちゃってると大変ですよね
一応、意識が戻らないだけで
身体の機能は通常通り動くようにしてありますので
大丈夫だと思いますけど。
歩道で倒れるようにしたから
クルマにひかれたりもしてないハズです
…うん
ちょっとみてみましたけど
いまは病院に運ばれていますね
いろいろ病院が調べてくれてますけど
なんで倒れたか原因が特定できないので
少し慌ただしくなっています」
「ま、そうだよね
魂はここにいるし」
「お母さんと彼氏さんが
心配そうにベッドの横にいますよ」
「わー
そりゃ心配するよね
そっか風もきてくれたんだ
ありがたいことだね
ねー、ねー
ふたりだけでもいまの状況伝えられないかな?
伝えておけば
あとは多少時間がかかっても大丈夫だと思うのね」
「そうですよね
えっと、わたしにはそんなチカラも権限もないから
じいちゃんに相談してみましょうか?」
「そういえば
さっきゼウスっていってた?」
「うん
わたしのじいちゃんのなまえ、ゼウスっていいます」
「えー
じゃあ、あーみんのおじいちゃんは
もしや全能の神のゼウスさん?なの
あ、あ、そうか、あーみんてアルテミスさんじゃん
おー
アルテミスってアルテミス?」
「えっと
わたしの名前は確かにアルテミスです
なんか変?ですか」
「や、変じゃない、変じゃない
そっかアルテミスさんじゃん
それじゃあさ、あーみんて狩猟が得意なの?」
「シュリョウ?」
「あー
狩りのことね
弓矢で狩りをしていたって
私たちのなかでは
アルテミスさんは狩り好きで伝説になってるよ
あとゼウスさんは
全能の神で最高位だけど
いろんなとこでわるさしているんだよ」
「確かにわたしは動物の子たちは好きですよ
よく遊んでいます。弓も得意です
だけど、狩りはしないです
あとゼウスじいちゃんは悪いことはしないと思います
全能の神がそんなことするわけないです」
「そっかー
人間界の伝説では
あーみんは狩猟をいつも楽しんでいることになっているよ
ゼウスさんは全能の神って崇められるけど
伝わっているはなしは
ちょっとよくないはなしなんだ
全能の神がわるさばっかりしてるって
わたしもおかしいなぁって思ってたんだ」
「わたしもゼウスじいちゃんのこと
人間界でいわれていることしっていますけど
わたしには優しいじいちゃんなんです」
「そうなんだ
やっぱりあくまで伝説だからね
どっかで曲がって伝わっているのかな
あ、それよりお母さんと風に伝えていいか
ぜーじーにききにいこうよ」
「あ、そうでした
ごめんなさい
じゃあ、いき…」
ここまで読了いただきありがとうございます
今回は量が多くなってしまいました
伝説の中のゼウスは最高神なのにわるさばっかりしています
わたし(作者)の独自解釈ですけど
今の世は最高神=徳の高い穏やかな神
ですが、伝説の時代は
最高神=チカラが一番強い。自分さえよければなにをしてもいい、やりたい放題こそ正義
だったのかなって思います
そう考えると、いまの世の中は平和で幸せですよね