4/28
静謐なる会議
荘厳な礼拝堂の奥。
重い服に身を包んだ人々が、密やかに集っていた。
「――新たな“適合者”の報告が入りました」
「儀式の準備は?」
「すでに整えてあります。聖具も調整済みです」
重々しい声がやりとりされるたび、長い机に微かな緊張が走る。
古ぼけた箱に安置された“聖なる道具”を一瞥する目はどこか冷ややかで、何かをはかっているようだった。
「……今回の“巡り”は、例年になく兆しが強い。おそらく、近いうちに大きな動きがあるだろう」
「外部への連絡は?」
「最小限に。表向きは“勇者制度”の継承行事として処理する」
「……あの方のお考えに背くわけにはいかぬ。だが、今度こそ“真実”の扉が開くかもしれん」
ふと、重鎮の1人が天井の巨大なステンドグラスを見上げる。
色とりどりの光の下で、聖具の表面がかすかに脈動した。
「全ては、定められし意思のままに――」
会議室の外、遠い回廊で鐘が鳴った。
その響きは、どこか不吉で、しかし新たな時代の到来を予感させるものだった。