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ノア目覚める

最初に考えていたものとイメージを変えた方がしっくりきたので、これも大幅に変更して書き直しました。アップが遅くなりました・・・。いつも読んでいただいている皆様に感謝です。

 気がつくと城のベッドの上にいた。

 だるい身体を起しながら、いつのまにか寝巻きに着替えてることに気がつく。


(……たしか魍魎族たちに名前をつけてたような)


 逸花≪いちか≫の儀式までは、ちゃんと記憶がある。

 あの、可愛らしい姿で花蔦杖≪かちょうじょう≫を掲げ――

 最後の契名の言葉をかけた

 あの瞬間まではバッチリだ。


 ……そのあと。

 たしか城に帰ろうとして、Sigraphを起動――

 そこから先の記憶が、まるっとない。

 気がついたらベッドの上で寝巻き姿。

 ついでに身体が重い。

 力を使いすぎたのかな…?

 アリアも最初の説明でそんなこと言ってたし。


≪そうだよ。契名は連続でやったらだめなんだ≫


 ん?

 ……あれ?

 きょろきょろとあたりを見回す。

 この部屋にいるのは俺1人。

≪もともと強い魍魎族の真名を連続で書き換えて強くしちゃうなんて。

 主人≪マスター≫の力はすごいけど、危ないからもうやっちゃだめだよ≫

 声が――

 零が話してる…!

『覚醒段階があがったことで言語理解の幅が広がりました。以降、零との会話が可能です』

 言語理解…。

 ……なんか、普通に会話できるようになってる!?


≪ぼくはずっと話しかけてたよ。やっと気づいてもらえた≫

 そうだったのか。

 気づけば、まんまるお目めのゼロがこっちを見上げてる。

 そのふわふわの頭を撫でると、手のひらいっぱいの癒し。

「きゅいきゅい」って鳴いてたときも十分かわいかったけど、

 こうしてちゃんと話ができるのは――なんというか、別の意味でうれしい。

 ……これからゼロも、もっと強くなっていくんだろうか?

 なんだか、その未来はちょっと楽しみだ。


≪それにしても、魍魎族。今は別格の存在だね≫

 そうだ…!

 種族進化!

 零の言葉にあの時の光景が鮮明に思い出される。


 儀式の後、驚いたことに魍魎族だった彼らは別の種族へ進化した。

 見た目も中身も変わってて、気配も圧倒的。

 種族が変わるとかありえるの?


『魍魎族は自然と共に生き、その地の力を取り込んで変化し続けてきた民の生き残りです。

 適応と進化の記憶が、遺伝子刻まれていたことが本事案の要因と推察されます』

 ……なるほど、

 “変化”は彼らの本質で

 どんな時代でも仲間や大切なものを守るために変わり続けてきた

 しなやかで強い種族――

 それが、魍魎族なんだな。


 まとめるとこんな感じ。


 焔嶺えんれい

 種族進化:魍魎族 → 煌魍族こうもうぞく

 武器:太刀


 蒼幻そうげん

 種族進化:魍魎族 → 霧氷族むひょうぞく

 武器:刀


 翠月すいげつ

 種族進化:魍魎族 → 朧影族ろうえいぞく

 武器:小双刀、投擲具


 みお

 種族進化:魍魎族 → 潤悠族じんゆうぞく

 武器:双刀


 碧羅へきら

 種族進化:魍魎族 → 冥刃族めいじんぞく

 武器:黒い鞘の和刀


 逸花いちか

 種族進化:魍魎族 → 花苑族かえんぞく

 武器:短刀(護身用)または花蔦杖(管理・サポート)


 そして――

(俺の強さを確認できるって言ってたよね?)

 もう1つ気になっていたことを思い出す。

『然り。記録として脳内表示が可能です』

 脳内表示…

 なんかわからんやつが提示されたが。

(確認したいんだけど?)

『承知しました。現段階の能力およびスキルを表示します』

 ――次の瞬間、頭の中にシステムウィンドウが広がる。


【Status】

 名前:ノア・クラヴィス

 種族:魔王(覚醒 第2段階)

 固有支援:アリア(Alia)

 固有能力:高度再生、絶対障壁、完全異常無効、高度魔素制御、空間掌握、魔素吸収

 限定能力:叡智解析コード・オブ・アリナス煌魂共鳴オーヴ・リンク進化干渉リバースリンク原理構築エミュレイト、××××他

 スキル:闇視、飛空展開、魔力圧縮、多重連撃、契名、言語理解、その他


 ……やっぱり人じゃない。

 突っ込みポイントは他にもあるんだろうけど。

 一番に確認した『種族』欄。

 え、魔王って種族だったの?

『現段階ではこれ以上の詳細表示不可。一部スキルと能力については説明可能です』

 俺の気持ちには一切触れない、いつもの淡々としたアリアの解説。

 まあ、言えないっていう展開になるよね。

 だいたい想像してた通りだったよ。

 限定能力とか、聞きたいことだらけだけどね。

 煌魂共鳴オーヴ・リンクってレベルアップの時に言ってたやつ。

 あのタイミングだったってことは、契名に関係してるのかな…。

『然り。真名を共有したものと共鳴が可能です。

 共鳴中は魔力・スキル・身体能力が一部上昇し、彼らの象徴的な能力が発現します。

 ただし現時点では限定解放です』

 やっぱりそういう感じか――。

 アリアの反応に、なぜか妙に納得しながら、とりあえずステータス一覧に目を走らせる。

 スキルって、今まで自分で使ったやつの一覧ってことだよな?

 ……その他って何?

原理構築エミュレイトによってSigraphが構築可能です。

 スキルおよび魔法は理論上無限に作成可能。よって一部のみ表示されています』

 ――えっ。

 プログラムコード組むみたいな、あれ。

 俺、これまでに色々作っちゃったよ。

 え?普通はできないの?

『然り。通常個体では不可能』

 まじか…。

 ……道理で、最初に結界を張ったとき、フロル族がめちゃくちゃびっくりしてたわけだ。

 さすが魔王

 そのあたりの能力は強力ってわけか…。


「ノア様!」

 考え込んでいたところ、ベルムの大きな声。

 心臓が飛び出そうになる。

 大声と同時に、手に持っていたトレーを盛大に落として

 がちゃーん!と豪快な音が部屋に響いた。


「びっくりした。おはよう、ベルム。

 トレー落としたけど大丈夫?足とか打ってないか?」

 俺の問いに、ベルムは

「あいたたた……いや、大丈夫です!それより――!」

 足をさすりつつ、すぐさま立ち上がりって目を輝かせ

「お目覚めになられましたか!」

 と、とにかく大慌て。

 ベルムの慌てぶりに思わず苦笑していると、


「ノア様、ご気分はいかがでしょうか?」

 落ち着いた声が続く。

 扉の側に立つ澪≪みお≫だ。

 栗色のショートヘアがきれいにまとまり、灰色の瞳で静かにこちらを見ている。

 無駄のない騎士風の軽装に身を包み、長身の背筋はまっすぐ。

 その所作に落ち着いた信頼感。


「お身体に痛みはありませんか…?」

 続いて声をかけてくる逸花≪いちか≫。

 銀色の長い髪は柔らかく束ねられ、藍色の瞳が印象的。

 上質な桃色の和装に身を包み、袖口や帯にはさりげない花の刺繍。

 整った立ち姿はどこか静謐で、落ち着いた存在感が漂っている。


「無理はなさらず、しばらくは安静にしてください。

 ここ数日の管理はこちらで進めております。

 記録に纏めておりますので体調が整い次第いつでもご報告可能です」

 逸花≪いちか≫は、優しく微笑みながら静かに告げる。

 なんか…

 どちらも落ち着いていて、すごく安心する…!


「ノア様、ご気分はいかがでしょうか?」

 蒼幻≪そうげん≫が落ち着いた声で話しかけてくる。

 入口に目をやると、翠月≪すいげつ≫と碧羅≪へきら≫が佇んでいて

 控えめながらも温かなまなざしでこちらを見ていた。

 その2人の前を通り、焔嶺≪えんれい≫が堂々とした足取りでやってきて、

「ノア様、お目覚めになられましたか。……ご容体は、いかがです?」

 と、やや砕けつつも丁寧な口調で気遣ってくれる。

 その声には、どこか安心と嬉しさが混じっている。

「ノア様…!肝が冷えましたぞ。どうかご無理はなさらぬよう……」

 フロルの長老が焔嶺≪えんれい≫の隣から心配そうに声をかけてくれながら、頭を下げた。


「みんな…なんか心配させたみたいで、すまなかった。

 契名から城に帰るまでの記憶がなくてさ……」

 正直に告げると、逸花≪いちか≫が小さくうなずく。

「ノア様は、10日間ほど、ご休養されておりました」

 ……えっ

「そんなに寝てたの?」

 いやいや

 感覚的には一晩ぐっすり寝たくらいの感じなんだけど。

 ……お腹も減ってないし

 全然やつれてない…。


 アリアの声が脳内に響く。

『魔王には食事不要。食事摂取は可能でも必須ではありません。魔核が破壊されない限り長期の生存が可能』

 えっ

 食事しなくても生存可能って。


≪ぼくも食事必須じゃないよ。一緒だね≫

 零がどこか嬉しそうに話しかけてくる。

 いやいや、仲間意識は嬉しいけど

 なんというか…そうだけど、そうじゃないっていうか

 その共感が…なんか切ない。


「われらをすべて進化させた能力。やはり主≪あるじ≫として不足はありませんでしたな」

「魍魎族の魂に刻まれた種族への進化…すでに絶滅したものばかり。

 賜りました名“翠月≪すいげつ≫”に恥じぬよう精進します」


 その言葉と共に翠月≪すいげつ≫からまっすぐな視線を向けられ、俺は思わず息をのんだ。

 この“主”とか“進化”って、普通なら重たすぎてプレッシャー半端ないやつだと思う。

 でも、不思議と嫌な感じがしない。

 ……俺、もう人間じゃないけど。

 そのおかげで、仲間と出会えた。

 正直不安は拭えないが

 こうやって仲間からまっすぐ信頼を向けられると、胸の奥がじわっとあったかくなる。


「えっと…ありがとう、翠月≪すいげつ≫。みんなも…心配をかけた」


 ここは素直に感謝を伝える。


「我らが主の事を心配するのは当たり前です」

 蒼幻≪そうげん≫が静かにそう言い、他のみんなもうなずいてくれる。

 その空気に肩の力が抜ける。


「……ところで。

 しばらく寝込んでたみたいだけど、その間、何かあった?」

 焔嶺≪えんれい≫が一歩前に出て口を開いた。

「各地から庇護を求める種族が続々と城に集まってきました。

 変異型と思われる魔物が発生して、集落が襲われている影響のようです。

 城内では収まりきらない状況となったので、暫定的に指揮を執らせていただきました」

 澪≪みお≫が静かに補足する。

「住居の増築や仮設の手配も進んでいます」

 逸花≪いちか≫も、記録用の短冊を手に説明を補足する。

「食料生産や医療体制、庇護した種族の職能ごとの振り分けも整理しています」

 焔嶺がうなずきつつ、さらに続ける。

「各部門に責任者を配置し、役割分担も明確にしました。

 新たに加わった種族も、それぞれの得意分野で活躍してくれています」

 しっかりと頭を下げる焔嶺≪えんれい≫。

 その姿は記憶が飛ぶ以前より、ずっと落ち着いて見える。


 ――焔嶺ってこんなに考えて動けるタイプだったっけ?

 どちらかというと勢いで突っ走るタイプだった気が……

 いや、間違いなく進化の影響だよなこれ。

 なんか頼もしさまで増してるし。


「ノア様には後ほど、より詳しい現状をお伝えし、今後の方針についてご相談したく存じます」

 ……進化ってすごい。


「……ありがとう、焔嶺≪えんれい≫。助かったよ。

 みんなも、ありがとう」

 しみじみと感謝を伝え、周囲に集まってくれた仲間を見渡す。

 頼もしさに、胸の奥がじんわりと温かくなる。


「まずは身支度を整えましょう。必要者を執務室に集めておきます」

 ベルムが張り切った様子で一礼し、準備へと動き始める。

 碧羅≪へきら≫が近づいてきて、支度を手伝おうとしてくれる。

「そうだな…じゃあ各自よろしく頼む」

『承知しました』

 全員の言葉が重なり、場の空気が一つにまとまった。


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