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聖女候補二年目 先輩の卒業、後輩の誕生

 聖女候補二年目。


「聖女候補、ブルネッラ・ピニャータ。貴方は聖女候補の期間中に救護院を訪問し、その経験で得た知識を災害地で惜しみなく発揮した。貴方に看護を受けたという国民の声は、私にまで届いています。卒業してしまいますが、今後も貴方の活躍を期待しております」


「はい。ありがとうございます。教会での経験は、私にとってかけがえのないものです。聖女候補であったことを恥じぬよう努めていきたいと思います」


 最年長であったブルネッラ・ピニャータは聖女教育を終え卒業していく。

 初めての卒業生を見送り、私は二年目を迎える。


「聖女候補となり一年が経過しましたが、どうですか? 」

 

 司祭は定期的に私達候補者が教会での待遇に不満が無いかを訪ねる。

 貴族として淑女教育や礼儀作法を学ぶ毎日の中、聖女教育が加わわり一年が経過。

 始めての事ばかりで、一年はあっという間だった。


「はい、学ぶことは多いですが毎日充実しております」


「そうですか。最年長であった、ピニャータ様は卒業されました。儀式を終え、数日後には新たな候補者が二名やってきます」


 今年の儀式では、二人の候補者が誕生した。


「……ピニャータ様には大変お世話になり、寂しくあります。戸惑う事の多かった私にいつもさり気なく助言してくださいました。私もピニャータ様のようにはいかなくとも新たな聖女候補の方に、あのように接する事ができたらと思います」


 ブルネッラは自身の立場を理解し、争いが生れぬよう候補者とは最後まで距離を置いていた。

 派閥は無く直接的な嫌がらせもないが、皆アイーダの機嫌を損ねぬように気を使っていた。

 その様な雰囲気の中でも、ブルネッラは他の候補者達をさり気なく助言をして速やかに去って行く。

 私も何度も助けられたのだが、お礼も言えないことが多々あった。


「それは心強いです。よろしくお願いしますね」


「はい」


 それから数日後、新たな候補者と対面。

 

「バルツァル公爵令嬢様。私はファビオラ・アンギレーリと申します。よろしく……お願い致します」


 アンギレーリは侯爵令嬢。

 何度かお茶会で挨拶を交わしたことがある。


「私はラヴィニア・ジラルディと申します。よろしくお願い致します」


 ジラルディは伯爵令嬢。

 彼女もまたお茶会で互いの存在を把握している。


「フローレンス・バルツァルと申します。教会には二年目になりますが、お互い聖女候補です。教会では聖女候補の皆さんはフローレンスと呼んでおりますので、お二人も名前でお呼びください。私にもまだ分からないことは多いですが、答えられる範囲であればお二人のお役に立てればと思います。よろしくお願いしますね」


「ありがとうございます。フローレンス様と呼ばせて頂きます。私の事はファビオラとお呼びください」


「私も、ラヴィニアとお呼びください」


 初対面の自己紹介は当たり障りなくと言えた。

 一人が去り二人が加わり、教会には十二名の候補者となった。 

 そして最近になり王子の婚約者候補にどの聖女候補が相応しいのか見極める為、貴族が頻繁に教会へ訪れるようになった。


「聖女候補様。皆様の日々の祈りのおかげで我が国は平和であり、平穏を実感しております」

 

 張り付いた笑みを見せ、決まり文句を口にする。 

 貴族達は自身の立場を確立する為にも、どの聖女候補を支持するべきか何度も訪れては状況の確認をする。

 未来の聖女兼王妃である令嬢をいち早く見つけ出し、社交界で権力を得るために必死な様子。


「バルツァル公爵令嬢、私はフォルスティー子爵です。公爵には大変お世話になっております。何か必要な支援があれば何なりと仰ってください。私が手配いたしますので」


 父の仕事関係・交友関係は全く知らない。

 なのでフォルスティー子爵が本当に父と関係があるのかも私には分からない。

 フォルスティー子爵の名など、父の口から聞いたこともない。


「……ありがとうございます。何かあればお願いいたしますね」


 聖女候補となり教会に一年通い、先輩達から要領を得ない貴族達の会話のあしらい方は学んでいる。

 最近では来訪者に引き止められることの少ない、目的地への最短ルートを通るようになった。

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