聖女候補 卒業後
その後、聖女候補時代にお世話になったデルフィーナ・スカヴィーノに手紙を書いた。
デルフィーナからの返事はすぐに届き、王都での動きを教えてくれた。
『フローレンス様はコルテーゼ領地に滞在しているのですね。
私も他の聖女候補者と連絡を取りました。
皆さん、コルネリウス王子から『補佐任命』の手紙を受け取り『お断りした』と聞いております。
皆さんにフローレンス様にも話して良いと確認済みですのでご安心ください。
ブルネッラ様は既に結婚し、二人目を出産されたばかりの為お断りしたそうです。
アイーダ様も結婚し、今は妊娠中の為お断りに。
アネルマ様も結婚したばかりで聖女補佐は難しいという判断でお断りになりました。
エルネスタ様は侯爵家とは決別し、隣国へ渡り帰国の予定はないそうです。
コンチェッタ様は公爵夫人となり独自の商会を手掛けている為に難しいようです。
クロリンダ様は嫁ぎ先の意向により、目立つ行為は避けているそうです。
カルメーラ様は……伯爵の後妻となり、社交界から姿を消しました。手紙にも『コルネリウス王子の要請を、お断りいたしました』とだけで、字もカルメーラ様の物ではなく……少々気になっていますが、それ以上尋ねることは出来ませんでした。
ベネデッタ様は、離婚の話が持ち上がっているようです。お相手のクロフォード様に色々と発覚したようで、聖女補佐をしている余裕はないと……
スカルノ様はお義母様の容態が良くないようで、お世話をなさっている為お断りしたようです。
そして私も婚約の準備もありますので、お断りさせていただきました。
ですが、コルネリウスは納得できなかったようで直接我が家に訪れました』
これが私達の会話です。
『デルフィーナ、どうして聖女補佐を断った? 』
断られた事が納得のいかないコルネリウス王子は、突然押しかけ挨拶も礼儀もなく単刀直入に言い放つ。
「コルネリウス王子、本日は我が家への突然の訪問は聖女補佐を断った件についてでしょうか? 」
「そうだ」
「コルネリウス王子、私にも婚約の準備があります」
「婚約って、私とソミールの婚約が終わってからでも遅くはないだろう? 」
「お二人の為に私の人生を犠牲にしろと仰るのですか? 」
「犠牲という言い方は間違っている。優先順位があると言っている」
「優先順位ですか? あの方が王妃教育を終えるのは具体的にどのくらいでしょうか? 」
「どのくらいって、ソミールは優秀だ。順調に行けば時間は掛からないだろう。それに、私の婚約者は聖女候補からと決定している。聖女候補が卒業してから王妃教育が始まっても間に合うと判断したのは私ではなく王宮だ」
「それは、聖女候補達は貴族としての基本的教育を受けている前提で決定されたものです。ソミール様は貴族の基本的マナーを習得されておりません」
「習得していないって、王族との謁見の為に講師から学んでいたと聞く」
「学んで……学んでいたら、もっとまともな挨拶をされていましたよ。覚えておりませんか? 姿勢や歩き方、お辞儀の何一つ出来ておりませんでした。それに、国王陛下との受け答え。彼女のあまりに失礼な態度に見兼ねた司祭様が囁いていたのを」
「その事か……私が知らないとでも思っているのか? 」
「なんの事でしょうか? 」
「ソミールは他の聖女候補者から嫌がらせを受けていた。私も涙を流しながら耐えているソミールを何度も見ている」
「それは本当に嫌がらせでしたか? 忠告ではなく? 」
「嫌がらせと忠告の区別はつく。ソミールは間違った時間を伝えられ、講義を受ける事が出来ない日が多々あったと話してくれた」
「そもそも、どうして私達が貴族作法の初歩を学ぶソミール様だけの講義の時間を伝えなければならないのですか? 講義の時間は、前日に講師から直接窺っているとは思いませんか? 」
「それは、変更などがあり令嬢達に伝言などしたのではないか」
「講師の先生が毎回時間を変更なさり、私達はソミール様に誤った時間を伝えていたということですか? 」
「それは……」
「コルネリウス、友人から最後の言葉よ。貴方は一方の言葉や先に話した者の言葉を信じるのではなく、両者の意見を聞き周囲にも確認を取るべきです」
「私が間違っているとでも? 」
「間違わない為に確認を取るべきです。貴方の間違いは国に大きく影響を及ぼすのだから」
「再度調査したところで何も変わらない。寧ろ、聖女候補達のソミールへの横暴が明るみに出るだけではないか? 」
「だとしても、調査なさるべきではありませんか? 」
「あぁ。その時は友人ではなく、王族としてデルフィーナ・スカヴィーノを処罰しなければならなくなるぞ」
「構いません。コルネリウス王子も真実から目を背ける事が無いように」
「失礼する」
『ということがありましたので、今頃コルネリウス王子は聖女候補時代の事を調査なさっている頃だと思います』
手紙を読み終え封筒に戻す。
「大変だったのね。王子と幼い頃からのデルフィーナ様の言葉がどこまで届いたのか……」
そしてデルフィーナの手紙を受け取ってから数か月後。
コルテーゼの領地までコルネリウスが訪れる。




