聖女候補九年目
コルテーゼ邸に宿泊し二日目。
本日もソミールはルードヴィックを追いかけ、フローレンスには結婚式についてなど尋ねている。
それでも、ルードヴィックが領地にフローレンスが教会へ向かうと、ソミールは再び観光する。
「ねぇ、レンスいつ頃帰るの? 」
「明後日でしょうか? 」
「観光とかしないの? 私が案内するよ」
「いえ。私は教会と孤児院へ向かうと報告してありますし、彼らとも約束しておりますから」
「そうなんだね」
二日目にしてソミールは早くも飽きたのか王都に帰りたい様子を見せる。
教会と孤児院にいる間だけはソミールに悩まされることがない。
「明日は、前回と違い屋敷から直接向かう。俺達がいないと分かれば不審に思われるからな」
教会の奥で、ルードヴィックと作戦会議をする。
「そうですね」
「彼女が利用している馬車だが、イリノエ侯爵の紋章だったぞ」
「イリノエ侯爵……そういえば、あの方の支援者に志願と噂で聞きました」
「馬車を手配したのはイリノエ侯爵だとしても、何故ここに来た? 何か勘付かれたのか? 」
「いいえ。今、あの方は聖女候補の行く先々に顔を出しているんです」
「候補者達に付きまとっているのか? 」
「はい。王都では、聖女候補の功績は全てあの方のものになっています」
「……だとすると、今回は……」
「はい。私が何をしているのか探り、あわよくば……」
「そういう事か。だとすると、更に警戒した方がよさそうだな」
「はい。ですので、私達が内密な話をしていると知られたくはありません」
「分かった。今後は使用人を通して連絡しよう」
「はい」
「教会は、彼女が他の聖女候補の功績を奪っている事を把握していないのか? 」
「彼女自身が奪っているわけではないんです。何故か、あの方に有利な噂が流れているんです」
「それはイリノエ侯爵が? 」
「いえ、偶然目撃した者の噂です。悪意はありません。彼女の境遇と言いますか、状況がそうさせたのかもしれません」
「平民で、八年遅れの聖女候補の発覚か……」
「皆さん、あの方を応援したいんだと思います」
「悪意がない分、厄介だな」
「仕方がありません、あの方は今では注目の的ですから。何をしても噂になります」
「俺としては、フローラの功績を奪わせたくはないな」
「私だって奪われるつもりはありませんよ」
「そうだな……そろそろ行くよ。明日の夜、屋敷を出る直前に使用人を送る」
「はい」
今日までの行動でソミールに勘付かれてはいない。
夕食も、彼女が輪の中心でいる。




