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聖女候補九年目 祈り

 婚約者候補である令嬢とのお茶会ではなく、コルネリウスの教会定期訪問中。 

 コルネリウスとソミールの会話。


「コルネリウスさん、私ずっと待ってたんだよ? 最近来てくれないから寂しかったぁ」


「そうか……最近は色々重なってしまってね」


「大変なんだね。あまり無理しない方が良いって聞くよ」


「ありがとう……最近ソミール嬢の活躍は王宮にも届いている」


「私の活躍……って何の事? 」


「あぁ、孤児院や教会に出向いては食料を配布したり、王都街の花壇手入れに掃除、騎士への激励と犯人逮捕に協力までしたと聞く」


「そんなぁ。平民では皆がしている事だよ。助け合わなくっちゃ」


「そのような行動が自然とできるというのが素晴らしいんじゃないか」


「そう……かな? 自分じゃわからないけどなぁ」


「周囲の方が見えていたりするから、ソミール嬢は今のままでいてくれ」


「はいっ」


「……なぁ、ソミール嬢……祈ってほしい事があるんだ」


「何を祈るの?」


「最近、王妃の容態が悪いんだ」


「王妃様が? 」


「あぁ……個人的な事に聖女候補の祈りを使用してはいけないと分かっている……それでも……」


「王妃様の事心配だよね。いいよ。私一生懸命王妃様の事祈るね。だけど……私だけだと不安だから、候補者の皆の力も借りたいの……王妃様について話してもいいかな? 」


「……あぁ。王妃の体調が悪いのは貴族達の耳に入っているから話して問題ない」


「皆、王妃様の容態について知っているの? それなのに祈らないなんて……」


「……聖女候補の第一優先は国の結界だからな」


「それでも、人の命がかかっていれば少し祈りの時間が長引いてもいいのに、あんなに早く帰っちゃうなんて……」


「……皆が皆ソミール嬢のように考えていないという事だ」


「私ならすぐに祈るのに……」


「ソミール嬢……君の思いだけで十分だ」


「コルネリウスさん……」


 ソミールとの会話を終えるとコルネリウスは王宮へ戻って行く。


「あの皆、最近王妃様の容態が悪いみたいなの。少しでいいから皆で祈ってほしいの」


「……ソミール様? 何を仰っているの? 」


「レンス、私達の祈りを国の結界だけでなく王妃様の健康の為にも祈らない? 少しで良いの。もし予定があるなら仕方ないんだけど……掃除とかだったら私変わるからっ。お願い……ねっ……駄目かな? 」


「ソミール様は司祭様のお話を聞いてはいないのですか? 」


「司祭様の言葉より、王妃様の命だと思うの。皆、お願い。王妃様の回復を皆で祈ってほしいの」


「ソミール様。貴方は祈っていないの? 」


「それはどういう意味? 」


「何日か前に司祭様から王妃様の容態について話が合ったの覚えていないの? その時から、『国の結界と王妃様の容態についても祈りをするように』とお話がありましたでしょう? その時、ソミール様もいらっしゃったではありませんか」


「……えっ、そうだった?」


「えぇ」


 他の候補者達もソミールに向けて頷く。


「良かった……王妃様の容態が回復していないと聞いて、皆は祈っていないと勘違いしちゃった。私ってそそっかしいね……えへ」


 ソミールに願われずとも、候補者達は何日も前から祈っていた。

 それでも王妃の体調が回復する事はなかった。

 聖女候補達は各々調べ始めている。

 王妃がどのような症状を見せているのか、他に回復方法はないのか、薬物療法・物理療法・手技療法・運動療法など調べられる事は手あたり次第。

 聖女候補達が図書室などで調べている間、ソミールは……


「コルネリウスさん。その後、王妃様の体調はどうなの? 」


「日に日に弱っている」


「そうなのね……やっぱり、私一人では……」


「一人? 」


「あっ……えっと……皆、忙しいみたいで……その……次期王妃になる為に……ごめんなさいっ。私に皆を説得する力があればよかったんだけど……平民だから……話、聞いてもらえなくって……」


「……いや、ソミール嬢のせいではない……ハッ……ハハッ……こんな時に王妃候補だなんて……令嬢達は、人の命より王妃の立場なんだな……」


「あっ、違うのっ。色んな事に対処するべく、動いているんだと思う。皆、王妃様の事を心配していると思うっ」


「令嬢達が心配しているのは、『次期聖女』と『次期王妃』という立場だけだろう……本当に心配してくれているのはソミールだけだ」


「そんなこと……ない……と思う……皆、口に出さないだけで心配してるよ……きっと……」

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