聖女候補九年目 次の標的
「レンスは聖女活動って何してるの? 」
「……最近は何をするべきか悩んでいます」
「そうよね。私も分からなくて、皆が何しているのか見学しているの」
「何か得られましたか? 」
「う~ん、今のところはまだ……というより、皆の活動って私が普段している事なんだよね」
「そうなのですか? 」
「はい。平民は使用人を雇わないでしょ。自分の事は自分でしないといけなくて、子供の面倒は年上の子達がするの。掃除や食料配布も慈善活動といわれるとなんだか違う気がして……何かあれば皆で助け合うのは、災害が起きた時には当たり前の事だし。それが聖女候補としての活動と言われると……」
「そうなんですね。普段からそのように行動できる事は素晴らしいです」
「素晴らしい……よくわかんないけど、そうしないと平民は大変なのよ」
「そんなあなたが聖女になるべくする活動、とても楽しみです」
「皆の期待に応えられるのか不安だけど、考えている最中よ。それで、レンスはどんな活動しているの? 」
「私は、卒業された先輩方の後を追っているだけです」
「それって、どんなことですか? 」
「孤児院や教会を支援したり、チャリティーイベントに刺繍入りのハンカチを寄付したりとかです」
「支援に寄付……他にも何かしているんじゃないの? 」
「新人の職人さんに仕事を依頼したりです」
「……仕事の依頼……私にはできないわ」
「誰かと同じ事をする必要はないんです。困っている人をどう助けるか、助け方は人それぞれですから」
「……レンスは次の支援先など決まっているの? 」
「……いえ、今のところは決まっておりません」
「そうなんだね……もし、決まったら是非私に見学させてほしいな。いいかな? 」
「えぇ、構いませんよ」
約束した事で、満足したのかソミールは去って行く。
「はぁ……今度は私の手柄を奪うつもりなのね……」
ソミールがまだ活躍を奪っていない聖女候補は、エリベルタとフローレンス。
エリベルタはソミールの存在を強く否定しているので、同行も活動内容も一切伝えないと宣言。
あまりの剣幕だったので、エリベルタをあきらめフローレンスに標的を変えた。
フローレンスにとっては予想出来ていた事なので、活動内容をソミールには出来ないであろう答えを準備しておいた。




