聖女候補七年目 新たな候補者に振り回される毎日
元から下位貴族や平民に対して見下していたエリベルタ。
王子との婚約者兼聖女候補としての個人的な対面を邪魔されたラヴィニア。
二人は完全にソミールと距離を置くように。
「あっ、コルネリウスさん。私に会いに来てくれたの? 嬉しいっ。お茶の準備するねっ」
「いや、今日はソミール嬢に会いに来たんじゃないんだ」
「……あっ、もしかしてラヴィちゃん? なら私が呼んで来るねっ」
「違うんだ」
「では、司祭様? 」
「いや、今日はファビオラ・アンギレーリ嬢に会いに来たんだ」
「……ファビちゃんに? 」
「……ソミール嬢は、そのように呼んでいるのか? 」
「ファビちゃんの事? 他の候補者の皆は違うみたいだけど、私は聖女候補同士仲良くできたらって思って呼んでるの」
「そうなんだな」
「ファビちゃんを呼びに行きたいけど、これから祈りの時間だよ? 」
「あぁ。その後、約束している」
「そうなんだね。祈りが終わるのはいつも違うから……今日は何時頃まで時間があるの? 」
「今日は二時間後には戻らなければならない」
「そうなんだね。なら一生懸命祈らないとっ。それじゃ、コルネリウスさんまた今度」
「あぁ、また」
ソミールが祈りの場に到着すると既に全員の姿がある。
「はぁ、間に合った」
「……ソミール様、遅刻ですよ」
「フィーナさん、ごめんなさい。コルネリウスさんが祈る前の私に会いに来てくれて、ご挨拶したいって言われちゃって……コルネリウスさんに抗議とかしないでね、お断りしなかった私が悪いんです」
「そっ……そうですか。それでも遅刻しないようにしてください」
「はぁい、コルネリウスさんに伝えておきまぁす」
「ソミール様が気を付けることです」
「コルネリウスさんに引き止められちゃって……」
「……デルフィーナ様、ソミール様も今後は遅刻は控えるでしょう。私達は心を静め、祈りましょう」
二人の会話をファビオラが仲裁する。
「……そうね。では、皆さん本日も神に祈りを捧げましょう」
……候補者はいつものように祈りを捧げる。
いつものように誠心誠意の祈り。
「……本日の祈りを終えます」
祈りを終え祈りの場を出ると、司祭が扉の前で待機していた。
「司祭様、どうされたんですか? 」
「いえ、今日はいつもより時間が経過していたので何かあったのではないかと確認に参りました」
「いつもより? 」
聖女候補の全員が時間の確認を求める。
「本日の祈りは二時間ほどかかっております」
「「「「「「「二時間?」」」」」」」
認めたくないが、ソミールが祈るようになり時間は大幅に短縮。
なので二時間は、ソミールが祈る前より長くなっていた……
聖女候補全員がソミールを確認すると、何故か彼女は笑っている。
「二時間……司祭様、あの……コルネリウス王子は……」
コルネリウスがファビオラを訪ねたのは、聖女候補兼婚約者候補としての個人的な対面の為。
「コルネリウス様は、王宮に戻られました」
「……そんな……」
「お茶会は五日後のこの時間に延期と言付かっています」
「……そうですか、承知いたしました」
ソミールの笑みの意味に気が付いた者は数名。
ファビオラとの対面を阻止するために祈らずにいたに違いないと……
実際、ソミールは真剣に祈っていた。
祈りの内容は……
『今日の祈りは二時間かかり、コルネリウス様がファビオラに会うことなく王宮に戻られますように……』
「ふふっ……五日後かぁ……」




