聖女候補七年目 お待たせしました
遅れてきた聖女候補の紹介。
「皆さんに紹介します。この度新たな聖女候補として認定した……ソミールだ。教会では立場関係なく、皆と共に聖女候補の一人として学びます。ソミール、挨拶を」
「ソミールです。今回聖女候補として判定を受け、八年弱の遅れではありますが、皆さんと一緒に学ぶことが出来嬉しいです。仲良くしてください」
笑顔で挨拶するソミール。
彼女はファミリーネームを名乗り忘れているわけではない。
ファミリーネームがない、平民だ。
まさか、八年遅れで聖女候補となった人物が平民とは想定外。
聖女の能力欲しさに貴族達が平民聖女候補を愛人・妾として囲っていた為、ここ最近聖女候補は貴族にしか誕生しなかった。
ソミールの存在は波乱でしかない。
私達候補者達だけでなく、貴族……国民全体を巻き込む可能性がある。
確かに私は子爵令嬢でない事を願ったが、貴族でないとは思わなかった……
神様に祈る時は正確に願わないといけないことを知る。
現実から目を背けていたがったが、挨拶が交わされていく。
「……デルフィーナ・スカヴィーノと申します。私が最年長であり、候補者の指揮を執っています。分からないことがあればお聞きください」
「デルフィーナさん、フィーナさんだねっ。私はソミールよっ。ソミールって呼んでね。よろしくっ」
衝撃的すぎる自己紹介。
候補者達は教会の教えに則り、家門ではなく個人名で呼び合っている。
候補者も、ソミールに名を呼ぶ許可は与えようと思っていた。
だがソミールは名前を通り越して、愛称で呼んだ。
平民が子爵令嬢を躊躇せず呼ぶ姿に動揺した。
ここにきて、エリベルタの意見が正しいのではないかと候補者達は思うように。
「……ソミール様、よろしくお願いしますね」
デルフィーナは貴族令嬢として礼儀を見せる。
私達の呼び方で本人が気気付き自然と修正する事を願ってだ。
令嬢を手本とするように、フローレンスも気持ちを押し殺し挨拶をする。
「私は、フローレンス・バルツァルと申します。よろしくお願いしますね」
「あっフローレンスさんて、私と同じ年齢と聞きました」
「……はい」
「わぁ、大人っぽい。私の周りに貴方みたいに綺麗な人いなかったぁ。レンスッ、これからよろしくねっ」
レンス……
先輩と違い同じ年齢と聞きフローレンスをそのように呼んだんだろうが、あまりの衝撃に訂正できずにいた。
その後も挨拶が続く。
客観的に見たらおかしな光景だろう。
貴族よりも平民の方が砕けた言葉で接しているんだから。
受けてきた教育が違うので仕方がない事と自身を抑えるも、どうしても引っかかってしまう。
そして自身より年齢が下の候補者には失礼過ぎる発言をする。
「えぇー、ファビちゃんは私より年下なの? 確りしてるぅ、偉い偉い」
偉いと言って、ソミールは侯爵令嬢であるファビオラの頭を撫でる。
その行動に全員が硬直。
「ラヴィニアさんはウサギさんみたいで可愛い。ラヴィちゃんだねっ」
令嬢を動物に例える。
「アルテーアさんは控えめなのね、私がお姉ちゃんになってあげるから遠慮なく頼ってねテーアちゃん」
勝手に姉妹発言。
「フィオレさんを見ていると、近所の子供を思い出す。あの子達とも仲良かったから、きっと私達仲良くなれるわ。そんな緊張しないで、フィオちゃんっ」
平民と同一扱い。
全ての挨拶に頭を抱えてしまう。
そんな中やって来たのが、エリベルタとの対面。
普段のエリベルタを知っているので良好な関係は不可能だろうと思いつつも、普段のようにはっきりと『平民蔑視』を断言してくれと願ってしまう自分もいた。
「エリベルタ・ブライアント伯爵令嬢です。私の事はブライアント伯爵令嬢とお呼びください」
いつも通りのエリベルタに密かに気持ちが良いと思う候補者。
「ブライアント……伯爵令嬢? ふぅ……貴方は一番幼く皆さん優しいから注意出来なかったかもしれないけど、私は違うわよ。教会では皆、聖女候補の一人で同格なの。爵位は関係ないのよ」
溜息に諭すような口調。
全てが引っかかる。
ソミールの言葉は普段私達がエリベルタに対して向けている感情なのだが……
「貴方は勘違いしています。私達は貴族令嬢であり、聖女候補なのです」
「教会に貴族は関係なく、皆が神に仕える存在なのよ」
「私は貴族であることに誇りを持っております、それを忘れる事はありません」
「エリベルタちゃん、そんな考えじゃ孤立しちゃうよ? 」
「それは貴方の事です」
「……もしかして、今まで一人で寂しかったの? 大丈夫、これからは私がいるから。私は貴方の味方」
「話が全く通じませんね。私は貴方と仲良くするつもりはありませんからっ。今後は私と彼女を拘らせないようにしてください」
そう宣言できるエリベルタが心底羨ましく思う候補者。




