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聖女候補六年目 幻想的

大人しくルーイが訪れるのを部屋で待っている。

 領主の息子があのように話すので、窓を開けるのも躊躇ってしまう。

 ベッドに座りノックを待つ。

 

 コンコンコン・コンコン・コンコンコン


「俺だ……ルーイ、準備は出来ているか? 」


 彼の名前と声を確認してから扉に駆け寄る。


「はい」


 扉を開けると、既にローブを身に着けた彼と両脇には騎士らしき姿。

 私も手に持っていたローブを羽織馬車に向かう。

 普段とは違う行動に緊張感が走る。

 一言も会話せず宿の裏に停車してある馬車に乗り込む。


「もう、安心して良い」


「はぃ」


 馬車が動き出し、あの場所へ向かう。

 昼間とは違う町に怖いのかワクワクしているのか自分でも分からない。


「到着したようだな」


 宿からあの場所はとても近い距離だった。

 彼がフードを被るので、私も真似てフードを被る。

 ランプがついているとはいえ周辺は薄暗い。


「フローラ、手を」


「はい」


 前回同様、彼のエスコートであの場所へ向かう。

 

「もう少しゆっくり歩きますか? 」


「だっ大丈夫です……っ」


 彼の腕に掴まる手に力が入ってしまっていた事に気が付き掴む力を緩める。


「いや、確り掴んでもらっていた方がこちらとしても安心する」


 彼が私の手を包み込むように握らせる。


「はい」


「もう少しだから」


「はい」


 一度訪れたことのある場所とはいえ、暗さが怖さを醸し出し以前とは違う場所のように感じる。

 緊張と恐怖から『はい』しか言えなくなっていた。

 

「……到着したぞ」


 ルードヴィックが照らす箇所だけを見ていたので到着したのに気が付かなかった。


「わぁ……綺麗……」


 目の前の沼に月が反射しとても綺麗な光景だった。


「フローラ、あっちだ」


 彼がランプで照らす先に視線を移すと、青白く光り輝く花が咲いていた。


「っ……」


 息を呑む美しさとはこの光景なのかもしれない。

 言葉も出ない程、神秘な光景を暫く眺めていた。


「あの光景を見て、俺も父もあの花が本物だと確信した」


「……そうですね」


「令嬢には時期を見てと言ったが、あの花の存在を知ったら皆が取り合いになる。実際のところ、王族への報告もまだ迷っているところなんだ」


「わかります、侯爵様やルーイが躊躇うのも。伝説の花の存在はこのまま伝説にしておいた方が良いのかもしれませんね」


 貴族であれば貴重な情報は王族へ報告する義務がある。

 その義務を躊躇ってしまう程、あの花は魅力的で危険さがあった。

 私達は花を確認し、宿を目指す。

 帰り道は先程よりも暗いはずなのに、夢のような光景が頭を支配し怖さを忘れていた。


「あれっもう……着いたんですか?」


 馬車を停車していたところにいつの間にか到着した。


「到着しました。あの光景は忘れられないですよね」


「はい」


 馬車の中でもルードヴィックと会話したのだが、ほとんど内容を覚えていない。

 一人部屋に戻り眠ろうと目を閉じるも、あの光景が瞼を離れない。

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