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聖女

「王都から辺境まで、王子にとっては長旅でお疲れでしたでしょう? 」


 私の目の前には我が国の王子、コルネリウス・リヴェラーニ第一王子がいる。

 金色に光り輝く髪は王家特有と言われ、透き通るような青い瞳は王妃譲り。

 幼い頃からとても愛らしく、彼に憧れを抱く令嬢は後を絶えない。

 王子には婚約の話もあるそうだが正式に公表されておらず、令嬢達は僅かな可能性を信じ王子と親密になろうと試みているという噂。

 そんな王子が王宮へ呼び付けるのではなく、本人がわざわざ辺境まで訪れた。


「……いや、問題ない」


「そうですか」


 私は貴族令嬢に珍しく、王都ではなく辺境に滞在している。

 そんな私のところまで、王子自ら訪れた。


「その……手紙では伝えられなかったが、今回令嬢の元を訪ねたのは今代の聖女についての話なんだ」


「聖女様……ご活躍は、この辺境でとても実感しておりますわ」


 聖女……

 我が国では聖女の祈りが国の結界を担っている。

  

「……そうか……令嬢も知っていると思うが、今代の聖女は平民から王宮に上がった者。聖女候補として教会で活動していた頃とは違う環境に……困惑……している様子なんだ」


「……まぁ、そうなんですか? 」


「あぁ……環境の変化や精神的負担が重なっているのではないかと。それで、なんだが……聖女の素質を持ち、補佐出来る人物を求めている」


「そうですか」


「……令嬢は……彼女と共に聖女候補者として教会に、通っていただろう……」


 王子の言いたいことは分かる。

 私は幼い頃に受けた儀式で、僅かだが聖女の素質があると認定された。

 

『今代の聖女とは雲泥の差ですね』


 噂は私達候補者の耳にも届いていた。

 それでも聖女に嫉妬した事は無い。

 私は、聖女候補者として教会に八年程通った。

 王子の言葉通り、今代の聖女に任命された彼女とも顔見知りと言える。


「はい。今代の聖女様とは短い時間ではありましたが、共に聖女教育を受けておりました」


「……令嬢に、このような事を頼むのは気が引けるのだが……聖女を助けてもらえると有り難ぃ」


「助ける……ですか? 」


「あぁ。令嬢には王宮に滞在してもらい……『聖女』の一人として招き入れたいと考えている。勿論待遇も保証する」


「補佐ではなく、聖女の一人として王宮に……ですか……?」


「あぁ。それが難しいようであれば、せめて王都に戻ってきてくれないか? 」


「……この事は、今代の聖女様も存じているのでしょうか? 」


「それについては、まだ……だが、私から直接話し説得する。なので、受けてもらえないだろうか? 」


「……今代の聖女様に相談することなく、私に話をするというのは聖女様に失礼に思えます」


「あぁ、そうだな。令嬢の言うとおりだ……」


「……王子、私の素直な気持ちをお話ししてもよろしいでしょうか? 」


「……あっあぁ」

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