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聖女候補五年目 現地の人の言葉は大切

 翌朝。

 昨日の雨が嘘のように晴れている。

 支度を終え食堂へ向かう。

 遅刻した訳ではないと思いたいが、既にルードヴィックの姿があった。


「バルツァル公爵令嬢。昨日は夜明けまで雨が酷かったようですが、ゆっくり眠れましたか? 」


「はい、ありがとうございます」


「それは良かった。令嬢の本日のご予定は? 」


「今日、王都に戻る予定です」


「それは……お勧めできません」


「それは……どうしてでしょう? 」


「昨日の豪雨で王都までの道はぬかるんでいるので、大変危険です。可能でしたら、戻りは明日にした方がよろしいかと」


 確かに昨日の雨は酷く、どこかに問題が生じても不思議ではない。

 昨日の事もあり、現地の人間の言葉は信じるべきだと思う。


「明日……」


「我が家への滞在は問題ありませんので、安全を確認してからの戻りをお勧めいたします」


 提案は受け入れたいと思うも、もう一泊コルテーゼのお世話になってもいいのかを悩む私を彼は見透かしていた。


「本当によろしいのでしょうか? 」


「もちろんです。聖女候補様に何かあってはいけませんから」


「ありがとうございます」


 その後、侯爵からも同じ提案を受ける。

 現地の人の話だと、事故を起こしやす箇所があるのだとか。


「豪雨の後のこの道は危険だ、御者に注意するよう報告しておきなさい」


 いくら助言しても道に慣れていない観光客や商人の事故が後を絶たないらしい。

 侯爵の指示で使用人が御者に予定と注意事項を伝えてくれた。

 食事を終え、私は昨日訪問した教会へ再び向かい祈りを捧げる。

 

「バルツァル公爵令嬢、本日は領地を観光してみてはいかがですか? 」


「観光ですか? 」


「えぇ。聖女候補様は大変忙しく、毎回水晶の手入れと祈りを捧げるとすぐに出発されてしまいますから。今回のような事が無い限り領地を散策などで出来ませんでしょ? 」


 いくら司祭の言葉と言え私は聖女候補として訪問に来たのに、領地を散策してもいいのだろうか?

 水晶の手入れも教会内の掃除も祈りも終えたので、時間はある。


「良いのでしょうか? 私は聖女候補として訪問したのに、領地を観光だなんて……」


「聖女候補様の祈りで国が安定しているのですから、それをご自身の目で確かめる事も必要だと思いますよ」


 こんな簡単に司祭の言葉に納得していいいのか……


「では、俺が領地を案内しますよ」


 私が優柔不断でいると、後方から誰かが会話に加わる。


「コルテーゼ令息?」


 ルードヴィックは侯爵に次期当主として仕事を任せられていると聞いた。

 そんな彼が何故教会に?

 そして「俺が領地を案内しますよ」と聞こえた。

 

「バルツァル公爵令嬢は俺にお任せください」


「ルードヴィック様でしたら安心ですね、聖女候補様をよろしくお願いいたします」


 何故かルードヴィックと司祭で話が決まり、私は彼の領地を観光する事になった。

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