王宮
王宮にて。
「今代の聖女様は、お一人で全てを行うのですね」
「王宮では聖女候補者も共に行動するのが通例ですのに」
「それだけ、今代の聖女様は有能ってことよね」
「他の聖女候補者達は誰一人王宮に上がらないなんて、今回が初めてですよね」
使用人達の噂は今代の聖女で持ち切り。
我が国の聖女は、祈りで国全体に結界を張っている。
過去の聖女達は補佐と共に祈りを捧げていたが、今代の聖女は一人でその役目を担う事が出来る程の能力。
「近々、聖女様の能力の噂を聞きつけ隣国の方々が訪れるみたいですよ」
「その中には王族の方もいらっしゃるとか……」
「王族もですか? 隣国にまで聖女様の功績が届くなんて本当に今代の聖女様は凄い方なんですね」
「凄いわよ。これで聖女様と王子の婚約も本格的になるわね」
「王子の婚約者は聖女様で決定という事ですか? 」
「そうでしょ。他の聖女候補を王宮に上げなかったんだもの」
「あの方達を押しのけて聖女様が婚約者になるなんて……」
「聖女候補時代も大変だったみたいですからね」
「身分で判断するなんて酷過ぎます」
「これで、聖女様を苦しめていた方達も社交界で大人しくなるでしょう」
聖女候補は熾烈な争い。
聖女に任命された時、自然と王子の婚約者となる。
その為、聖女候補に選ばれた者同士は王子の婚約者候補という扱いを受けそのように振る舞う。
「はぁ……私、聖女様にお会いしたいです」
「貴方、それは難しいわよ」
「聖女様はいつも祈っているから」
「国の為、国民の為に祈るなんて……流石聖女様です」
王宮で働いている使用人でさえ聖女の姿を確認するのは難しく、噂だけが広まって行った。