表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lock up in a GAME?  作者: KAIN
序章:GAME START
3/4

・第三話

 楼蘭は、いつの間にか閉じていた目を、ゆっくりと開ける。

 さっきまで黒板に書かれていた方程式は、いつの間にか消されていたけれど、特に問題は無い、どうせこの範囲は既に勉強しているのだから。

 この羽根山高校に入学したのは、特に理由があった訳じゃない、家から近くて学費も安い、それだけの理由で選んだ、まあ地元には、どうせここ以外に高校は無かったから、選ぶ余地もあまりなかった訳だが。

 とにかくここでそれなりに成績を修め、大学へ行く。その時には家を出る、家を出ることは両親にまだ言って無いけれど、どうせ反対される事も無いだろう、両親はとにかく、自分を追い出して、早く優秀な親戚の子を、『養子』に迎えたいんだ。その為にはむしろ、自分などいない方が、かえって嬉しいに決まっている。

 楼蘭は、微かに笑う、そうだ、もしも家を出たいなどと聞けば、ひょっとしたら両親は喜んでくれるかも知れない、今まで、自分は両親が喜んでいる顔なんか見た事も無かったけれど、ようやく始めて、両親が喜ぶ顔を見られるかも知れないではないか。

 そう考えると、むしろ家を出る、と伝える事は良い事のような気がする。

 思わず声を上げて笑いそうになるのを、軽く頭を振って我慢する。落ち着け、今は授業中だ。

 ちらり、と、黒板の上にかけられた時計を見る。十三時五十五分、授業の時間は四十分だから、あと五分ほどでこの授業も終わりだ、次は何の授業だったかな? 今日は帰ったら何をしようか? 最近では、父の跡を継ぐための勉強も、母の跡を継ぐためのダンスや演技のレッスンもやっていない、両親が、『もう良い』と言ったのだ、それもきっと、『養子』が来る事がほとんど確定しているからだろう。

 だから最近では、学校から帰ってから夕食までの時間、或いは休日などを、ずっとゲームをして過ごしていた、最新型のゲーム機から古い物まで、親がくれる小遣いで、簡単に揃えることが出来た、『養子』が来たらそれらは皆、そいつに取られてしまうかも知れないが、まあ良い、どうせもうすぐ追い出されるんだ、それまではせいぜい、親の金で遊んでやるさ。

 楼蘭は、ふん、と鼻を鳴らしそうになって、またしても軽く頭を振った。

 とにかく今は、授業に集中しないと……そう思い直して、残り五分の間だけでも、教師の声に耳を傾けようと、崩れかけていた体勢を整えた。

 その時。


 ざざ……


 突如として、耳障りなノイズの音が、教室の中に響いた。


「……?」

 楼蘭は、思わず顔を上げていた。

 今の音は……何だ?

 胸の中で呟きながら、音のした方を見る。黒板の上の壁に掛けられた時計、そのさらに上に設置されたスピーカー、校内放送やチャイムの音などを流す為の物だ、だからてっきり、チャイムを流そうとして、何処か故障でもして変な音がしたのか、と思った。

 けれど……


『あー』


 再びスピーカーから聞こえたのは……

 何処か間延びした、恐らくは少女と思われる声。

 そして。


『あー、あー、テステス』


 声が言う。

「……?」

 その声が、何処かで聞いた様な気がして、楼蘭は思わず眉を寄せたけれど、何処で聞いたのか、そして誰の声だったのか思い出せない。


『羽根山高校二年A組』


 声が言う。

 いきなり響いた声に、黙ってスピーカーを見上げていたクラスメイト達も、突如として自分達のクラスの名前を出され、びくっ、と身体を震わせ、動揺した様子を見せる。


『並びに、羽根山高校全校生徒、全教職員に告げる』


 少女の声が言う。


『今から、『ゲーム』を開始する』


 少女の声は、はっきりとそう告げた。


『命をかけた『ゲーム』だ、『マスター』はこの私、そして『プレイヤー』は、二年A組の生徒達、ルール説明は後ほどとさせて頂く、とりあえず今は、頑張ってクリアーを目指してくれ、とだけ言っておこう』


「ちょっと!!」


 がたんっ、と音がして、一人の女子生徒が立ち上がる。

「一体何なのよ!? 今は……」

 その言葉の後に、その女子生徒が何を言おうとしたのかは、結局解らないままだ。

 何故なら。


 どおんっ!!


 次の瞬間。

 轟音が轟き、教室が。

 否。

 校舎全体が、大きく揺れたからだ。

「な 何だっ!?」

 誰か男子の叫ぶ声。

「きゃあああああっ!!」

 さっき立ち上がった女子とは別の女子の悲鳴。

「みんな、机の下に潜りなさい!!」

 さっきまで授業していた教師が叫ぶ声。

 楼蘭は咄嗟に、ばっ、と机の下に隠れた。だが、自分と同じ事が咄嗟に出来た人間は、一体何人いたのか……それすらも解らないほどに激しい揺れが辺りを襲っていた。

 何が起きたのか。

 楼蘭には、解らない。

 だが……

 何かが……

 何かが、始まろうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ