白い絹は休憩中
間が開きました。すみません。
あと長いです。
ペラ、ペラと彼が本をめくる音だけが部屋に響く。自分の存在にも気づかないほど熱中しているところを見るに、物語ではなく学書の類いを読んでいるのだろう。朝の配達が終わって帰ってくると、彼は決まってここにいる。家の二階の書斎は、最近では完全に彼の城だ。彼の父、旦那様が元々使っていたらしいが、自分が本ばかりを読んでいるのに気づいて、本を読むならここ、と貸してくれたんだ!と彼が笑顔で教えてくれたのだ。彼が読み物に集中している間は自分も後ろのイスで作業をする、というのが最近のルーティーンとなっている。この時期だと特に編み物をする。彼の母、奥様も裁縫などをする方なので、そこから道具を借りたり、自分にとっては『隣人』とも呼べる彼らに糸の材料をもらったりしている。借りている、と言ってもお二人には自分は見えていないのであるが、、、。
そう思いながら、編み物がひと段落したところで彼の背を見つめる。8歳、この世界に生まれてから8年しか経っていない少年に自分は救われたのである。
ゴウゴウと、風の音が聞こえる。サクッサクッと雪を踏み締める音が聞こえる。吹雪の止まない山を、彼女は歩いている。その身が纏っているのは薄汚い、衣服とも言えないものだった。普通の人間がもし彼女を見れば、驚くだろうが、彼女はそもそも人間とは違うために人には見えない。そして今の彼女にとって寒さなど、足を止める要因にはなり得なかった。彼女は歩きながら、何度目ともなく思い出す。
彼女はシルキー、只人の家に住み着き家事などを手伝う妖精、生まれながらに彼女はその性をしっかりと確立していた。だから、色々な家庭を何日か住み着いてはそれとなく家事を行い、いつのまにか家事が終わっていることに気づいた彼らは皆小さな幸運を見つけたように笑みを浮かべてくれた。彼女はその顔が好きだった。彼女は人間が好きだった。ある時、次に住まわせてもらうのにちょうど良い家庭を探している時である。自分の目の前をこちらに向かって歩いてくる親子に出会った。しかしもちろん自分を見える人は居ない。こちらの方に家があるのだろうと察した。その時である。
「おねえちゃん、なあに?」
驚愕した。彼女は自分が表情に乏しいことを友人に指摘されたことがあったが、その友人が今の自分を見たら驚くだろうなと思うほどに少女はただ驚いた。聡い子、俗に言う善悪の区別がつく前、物心がつく前の人間の子供は、自分達に近いところに居て、故に自分達の存在に気づく者がいる。このことも彼女は友人から教えてもらった。
「ライちゃん?どうしたの?」
彼女に声をかけたであろう子の親が子「ライちゃん」と言う名の子に問いかけた。
「あれぇ?きらきらのね、おねえちゃん?がライちゃんをね、みてたんだけど、、、」
確信した。少年?少女?には自分が見えている、と。しかし彼女は落胆もした。子の言い分を聞く限り、自分を見たのは一瞬だけだったらしいことを察したのだ。しかし、それは彼女にとってはもう些事でしかなかった。自分を見つめてくれた子が居た。それだけで彼女は嬉しかったのだ。これは運命だ。と確信した彼女は次にお邪魔する家をこの家族の家に決めた。
その家族は、平凡だった。父がいて、母がいて、ライちゃんと呼ばれる子が居る、平凡な3人家族。しかし仲は良く、笑顔が絶えない家庭だった。ここでも彼女がやることは変わらず、さりげない家事の手伝い。そして、本当にたまにだが、自分を見る子の反応は彼女を幸せにした。ある時、ルーちゃんはホットミルクを作ると、暖炉の上に置いた。シルキーだけでなく、ライちゃんの両親も不思議に思ったらしい。
「ライ、何をしているんだい?」
「おねえちゃ、、、お姉さんにあげるの!」
「それは良いね、受け取ってくれるといいね」
少女、ライの行動に、父親が理由を尋ねるとルーはそう言った。と言うのも最近ライは、家にいつも居るはずのお姉さんもといシルキーを見つけられないことに悩んでいた。これまでは、会いたいなと思った時には一瞬ではあるが不意に見えることがあった。しかし最近は見つけられないのである。そう、ライは善悪を現実を現実と見ることができるようになった。そして「実は自分が見ていたお姉さんは自分の想像なのではないか。自分が好きなおままごとの延長だったのではないか」と心の中で思い始めたのである。シルキーやその他の隣人、妖精は、その存在を信じる者にしか認識されないのである。存在を信じる。とは簡単なようで難しい。この世界に多くの生き物がいることを当たり前と思うように彼らを捉える人間は、そう居ないのである。そこでライは考え、そして思いついた。自分の好物であるミルクを置いておけば、彼女が喜んで飲んでくれるのではないかと思いついた。もし無くなれば、彼女はそこに「いる」のである。その日の夜、家族が寝静まったのを確認したシルキーは、暖炉の上に置いてあるミルクを飲んだ。施しを一種の軽蔑と捉えるシルキーという精霊にしては異質であるが、1人の少女が喜んでくれたら良いな、という思いを込めて。
そのミルクは、とても優しい味がした。
それから20といくばくの日が過ぎ、ライは、ライ達家族は、帰らぬ人となった。
いつもと変わらない日のはずだった。その日、前から楽しみにしていた旅行にライは浮き足立ちながら出発した。出発直前ライは玄関で振り返り、「行ってきます」と声をかけた。シルキーのことを意識してか、はたまたその時ライにはシルキーが見えたのかは分からないが。
まず何から始めようか、とシルキーは考えた。旅行の期間は3日感。時間は沢山ある。まずは一通り掃除をして、それからは日頃は意識できてないところも見てみよう。帰ってきた時、彼女達が、いつもより綺麗に感じる我が家に笑顔を浮かべてくれることを思い浮かべながら。シルキーは取り掛かった。日を跨ぎながら丁寧に。そして3日後の昼、自分の仕事に満足して、彼女たちが帰ってくるのを待った。
その日彼女たちは帰って来なかった。
1日が過ぎた。
旅行が楽しみすぎて、お嬢様が延長を求めたのかもしれない。
2日がすぎた。
今頃は、楽しげな笑顔を浮かべているのだろう。どうかお嬢様の素敵な思い出になるように
4日がすぎた。
そろそろ帰ってきても良い頃だ。
8日がすぎた。
おか、、、しい
なぜ、お嬢様、、達は帰って、、、こないの?
16日がすぎた、、だろうか?
『カエ、、、テ、、、キテヨォ、、』
普段口を開かず声を発することをしないシルキーの口から、これまで言うことのなかった心が漏れる。
そしてさらに4日以上がすぎた時、唐突に玄関の扉が開く、入ってきたのはこの部屋を家族に貸していた貸主だった。貸主は、綺麗に整えられた室内に目を見張るが、すぐに伏せてしまう。そして、誰に言うでもない独り言を、シルキーは聞いた。
ライの一家が、旅行先から帰る最中野盗に襲われた。
なにを、、、ナニヲ言っていルの?
瞬間、シルキーは文字通り、それ以上になにも考えられなかった。考えたくなかった。理解してしたくない。そんなこと、そのようなこと、、、
ザクッ、、、ザクッと自分が雪を踏み締める音で、ワタシは、私は過去から戻ってきた。また、あの時のことを思い出したらしい。私の記憶は、そこからしばらくの間、ぱったりとなかった。気づいたら、ここに、何処ともしれない雪山を、只々意味もなく歩いていた。そして今も、歩き続けている。自分でもなにがしたいのか分からない。どうしたらいいかも分からない。ただ、歩きながら何度ともしれずに思い出す。自分の中の1番大事で、1番暖かい記憶、そして、同じくらい思い出したくない、そんな記憶
もう、楽になりたい。そう思った。この歩みを辞めて、眠るように倒れてしまえば、楽になるのではないかと考えた。けど、まるで自分の意思に関係なく足は進み続ける。再び、あの思い出が勝手に頭の中で流れようとする。
イヤ、、、
モウ、、、イイノ
『ダレカ、、、タスケテ、、』
「だいじょうぶ、、ですか?」
拍子抜け、空気を読まないとすら思われるほどあっさりと、シルキーの言葉には返答が帰ってきた。そう、返答があったのだ。シルキーはまさしく信じられないものを見る目で目の前の存在をとらえる。子供だ、しかし物心はすでについているとわかる。身長は、自分より頭一つとさらに半分くらい小さい。青い目に白、白銀?のような髪の少年がシルキーの前に立っていた。
そして何より、目が合っている。少し引き気味ではあるが、少年にとってはシルキーへの心配が勝っているのか顔を見ている。
緊張の糸が消えたのか、自分を突き動かしていた力、ナニかが無くなったのか。シルキーの膝が砕ける。
そして、そこでシルキーの意識は途切れた。
森の、、、香りがする
ハッと目が覚める。ああ、、懐かしい
ここは森だ、母なる森、私たちの帰るところだ
「そんな格好で、そんな顔して、だから何度も忠告したんだ、、」
懐かしい声が聞こえてきた。ああ、そうだこの声は彼女の、ワタシの唯一と言っていい友人、知己の声
格好?、、顔?なにを言ってるんだろう、ワタシはそんなに酷い有様だろうか、、、
そこで気づいた。ああこれは、夢か、なにか記憶の類だということに気がついた。というのも私の格好は、破れ、ほつれたドレス、、、あの後だということが分かる。というかそもそも、顔も動かせない。体も動かせない。どうやらこれは、記憶らしい
「なにがあったのか、話して欲しいと言っても、話してはくれないんだろう?」
ワタシはなにも言わない。言っていない。ただ俯いている。きっと顔も酷いことになっているのだろう。
友人が近づいてくる。俯いてるからあまり見えていないが、きっと出会った頃と変わらない綺麗な蜂蜜色の目をしているのだろう、、、フワッと、腕が回される額同士がコツンとぶつかる、、
「そんなに辛いことがあって、心も、体も痛めつけているのに、、、
まだ、腕を回してはくれないんだな」
ワタシの体は、動かない。
「そんなに良いものなのか、、ニンゲンとは、人間と過ごす時間とは、、、そもそも人間がなにをしたか、、、あの時、忠告を聞いて、あんな少女とままごとなん、、、っ」
ワタシの体が動いた。俯いていた顔が上がり、友人の目と合う。思わず、友人は言葉を詰まらせた。
ちがう、それは違う。それは許さない。彼女が人間を嫌う理由もわかる。人という存在が、もっと言えば「勇者」が過去に行った大罪は、許すことなど投擲できないことも、、、
それでも彼女と、お嬢様と過ごしたあの日々を軽んじることだけは赦さない。絶対に、、
「そんな顔を、、するのか、、、では、もう知らん。絶交と言うやつだ。お前の面倒に付き合うのもほとほと飽きた」
ワタシは、なにも言わない。
友人は近づいてきて、私の額に指を2本当てる。
「餞別だ。おまえはいずれ、最後の希望を見つける。忌々しいが再び人と交わるだろう。だが、その先にあるのは今のお前が感じているものと同じ、、、絶望だ。人と関わる道を選ぶ限り、この運命は変わらない。」
そういえば、彼女は予言が得意だった。もしかしたら、ああなることも分かってたのかもしれない。だから、必死に止めていたんんだろう。それに、、、
「おまえは、進み続けると誓ったんだ。歩みを止めるな。ここでの記憶は消す。せいぜい苦しめ、、、」
友人は、彼女はやっぱり、底抜けに優しいから。消したと言った記憶を、今こうして見せてくれている。選別も、今までずっと自分を見てくれていたからなのだろう。足が止まらなかった理由も、これだったのだろう。
気づくと、周りの景色は既に色褪せていて、私と友人しか居なかった。そして唐突に、意識が薄れていく。もう、時間らしい。体が後ろに倒れて行く瞬間、一瞬友人の顔が見えた。優しくて、でも悲しそうな顔だった、、、
意識が浮上し、ゆっくりと目を開ける。だけど、体が動かない。まるで全身に何かがのしかかっているような、疲労。直後、おでこにペタッと何かが乗るゆっくりと眼を動かすと、同族が自分の頭に乗っていた。
「あ、こらっ、のっちゃだめって言ったでしょ!」
元から部屋にいたのか、注意の声が飛んでくる。高く、よくとおる幼い声。、、、お嬢様に似ている声、、
私の顔の上の同族が、ひょいっと持ち上げられそのまま動けないように抱きしめられた。そして、顔を覗き込んできた。白い髪と、そして青い目と目が合う。
「あ、起きたんですね!よかったぁ」
少年が満面の笑みを浮かべる。
そこから、少年はこれまでの話をしてくれた。今は居ない妖精、隣人に付き合って少し深めに森に入ったところでワタシを見つけたらしい。そのあと倒れたワタシを他の隣人たちの力を借りてここまで運んできたと。
なんてことだ。まさか、隣人たち、ワタシたちと途切れて久しいはずの只人の中にここまで自然にワタシたちを受け入れる者が居たのだ。
さらに少年自身についても、教えてくれた。
名前はアルト、この家に両親と一緒に住んでいる。ここはルイスト王国の北の田舎の村であること等々、ちなみに、ついこの前からワタシ達を見ることができるようになったらしい少年曰く「悪いことをしたら、わるーい妖精に、いのちを取られちゃう」という、親から言われた子供騙しのような話がキッカケだという。
詳しくはわかっていないが、そこから隣人たちと話すようになりはっきりとワタシ達という存在を認識するようになったという。
「お姉さんはどうしてあんなところに居たの?」
自己紹介に飽きたのか、少年は、ワタシにこう聞いてきた。途端に、四肢が冷えるのを感じた。大切で、だけど思い出したくない過去が迫ってくるのを感じた。なんとかして、名前だけも言おうとして、、、喉に激痛が走りむせてしまう。「お姉さん大丈夫!?」と少年の声が聞こえる。
『オイオイダイジョウブカ?マッタク』
「あ、ど、、どうしよう!?」
『オチツケヨ、ヒトノコ。トリアエズアレダ、ナニカノミモノヲモッテキテヤレ』
「う、うん」
ぱたぱたと音を立てながら、少年が居なくなったのを感じた。ワタシは痛む喉を抑えながら顔を上げる。居るのはやはり同族だった。小さな体、背には羽、火の系譜を感じさせる気配、、、
『ヨウ、ハジメマシテダ。バンシーイロイロキキタイコトイイタイコトガアルダロウガ、、、ナンデマタコンナトコニイル?オマエラガイルノハ、ハカバトカダロウ?』
同族が聞いてくる。しかしなぜワタシがバンシーなのだろう。ワタシは屋敷使いだ。講義の意味を込めて首を横に振る。
『ウン?オマエバンシージャナイノカ?テッキリ、、、
そこからは、さらに詳しい事情を聞けた。数十日前、ワタシが歩いてきた方からとてつもない叫び声の余波がこの村にも届いたらしい。そして数日前叫び声に似た重い、それこそバンシーと間違えそうなほどの気配を纏った存在、ワタシがこちらに来ていることを感知し、少年を連れて遭遇そこからは少年の説明通りだった。
『、、、テ、オマエヨクヨクミタラシルキーカ!?ナーンデマタソンナオドロオドロシイコトニナッテンダヨ、、、ヒステリックデモオコシタカ?』
キヒヒっと笑いながらそう茶化してくる思わず半目になってしまうが、、理由を言う気にはならない。ヤーイ、ヤーイと飛んでくる声に無視を決め込む
「お待たせ!お姉さんはだいじょ、、ぶ?」
帰ってきた少年は、手には飲み物。顔は、状況を飲み込めてないのかポカンとしている。そこから隣人が、「ヒステリックーバンシー」なんて名前を少年に吹き込もうとしたり、それを無言の圧を向けて防いだりして一悶着あった。
「はいこれ、ちょっとぬるくなっちゃったけど」
そう言ってアルトは持ってきた飲み物を渡す。せっかく温めてきたのだが少し時間が空いてしまった。
『、、、』
シルキーは、痛みが治りがしたが声が出ないので笑顔で、感謝の気持ちを伝えるよう意識しながら受け取り、口にする。それは少しぬるいホットミルクだった。
「お、、お姉さん!?」 『ウオオ!?ドウシタオマエ!?』
『、、、?』
いきなりアルトと妖精が騒ぎ出す。しかしシルキーには訳が分からない。急にどうしたんだろうと思い、そこで気づく。顔が、頬が熱い。
シルキーは泣いていた。
そのことに気づいたシルキーは急いで顔を拭くが涙が止まることはなかった。次から次にこぼれ落ちる。
「ご、、、ごめん!?美味しくなかった!?ハチミツを入れたんだけど、、、」
そこでシルキーは気づく。そうだ、同じ味だと
、あの少女が作ってくれたホットミルクと。少女が、「かくしあじがじゅうようなんだ〜」と得意顔で作っていたあの味なのだ。急いで首を振り少年の言葉を否定する。これは自分にとって大事な味で、苦手なんてもってのほかであると伝えるために。
「そ、そうなの!?」
シルキーの意図を汲み取ったのかアルトは安堵するそして、
「「よかったぁ」」
アルトの声が、アルトが浮かべた笑みが、少女のそれと重なる。
『、、、!!』
決壊した。涙が止まらなくなる。言うなれば、純粋な悲しみの涙、1度目の、絶望の、絶叫と違う。ただただ少女がいなくなってしまったことを理解して溢す涙だった。
「、、、キー、シルキー?」
ハッと、意識が浮上する。どうやら、久々に昔を思い出してしまったらしい。心配そうに覗き込んでくる目と目が合う。
「あ、起きた?珍しいねぇシルキーが熟睡なんて、、、つかれちゃってた?いつもありがとうね」
『ン、、、ン』
どうやら珍しく熟睡してしまったワタシの心配をしてくれている。ただ、疲れている訳ではないので、首を振って否定する。
「そっか、よかったぁ」
心配そうな顔が、一瞬で柔らかい笑みに変わる。時々本当に子供か疑うときがあるが、こういうところは年相応なのだ。あの時から、何度もこの笑みに救われた。
「アルト〜、ご飯ができたよ〜」
「!!、はーい!」
そう言って、勢いよく部屋を後にして行った。
「お姉さんは、これからどうするの?」
あの時、そう聞かれた。明確な答えなんて持っていなかった。
「それなら、ここできゅうけいして行かない?」
そう、言われた。心のどこかで、引き止められるのではないかと予想していた。だからこそ、大丈夫だと首を振る。
「え〜、、、でもその足じゃ、、」
そこで今更ながらワタシは自分の足の有様を思い出す。
「それにその、、、お姉さんは妖精でしょ?妖精は僕たちのりんじん?でおともだちなんでしょ!?」
たどたどしい、おそらく覚えたばかりの言葉でそう言ってくる。おそらく、あの同族にいろいろと吹き込まれたのだろう。
「と、、ともだちがつかれてるなら、きゅうけいするてだすけくらい!」
『キヒヒ、ノッテヤレヨシルキー。コイツサイキン、“オトモダチガ”イナイコトガナヤミデナァ?オマエモアシヲナオシタイダロウ?』
「いや、、、こまってるわけじゃ、、ないし」
『イマハツヨガルトコジャナイゼ〜?キヒヒ』
「もおー!」いつの間にか、勝手に盛り上がり始めてしまった。同族とヒトノコの茶化しあいに、思わず笑いが込み上げてしまう。
ああ、、、たしかにワタシは少し、疲れてしまったかもしれない。
『オイスナオニオネガイシロヨ、“オトモダチニナッテクダサイ”ッテ。キヒヒ』
「うるさーい!!!!!」
『ア、、、ア、、、ノ』
「え!?」 『ウン!?』
2人の視線がワタシに向く。そんなにじっと見つめないで欲しい、、
『オ、、、、オトモダチ、、』
そう、激痛が治らない喉から声を出し、少年の手を握る。
その時の少年の、アルトの笑顔は本当に、はちきれんばかりだった。
お嬢様の死に、折り合いを付けられたわけじゃない。足も、喉も、特に喉はまだまだ痛む。だからワタシは休んでいる。いつまでかなんてわからないけれど、優しいオトモダチは気にしないだろう。あの件もあるし、もしかしたら思っているよりもずっと一緒かもしれないし、、、だと、嬉しい。
そう思いながら、シルキーは友人を追った。
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