第1部 アカデミー初日①
この世界は神のもの
第一部アカデミー
「はっ!!」
ベットから飛び起きる。
しばらくぼんやりしていたが、途端、急に脳裏がズキズキと痛み出した。
「思い出してきたぞ、、、」
僕、ことリンネアサヒは転生した。部屋のカレンダーを見るに、今は歴1586年のようだ。
転生前のことはうっすらと覚えている。
①僕が1600年に死亡したこと
②力により転生したこと
③僕は何かを諦めてしまったこと
逆にいえばそれ以外のことは覚えていない。
僕が転生前どのような人生を歩んできたのか、なぜ死んだのか、どのように転生を果たしたのか、そして何を諦めたのか。ただ記憶にポッカリと穴が空いている気がした。まるで誰かに改ざんされたかのような、、、
まあ今はそこを気にするべきことではないだろう。今するべきことは現状の把握だ。僕の名前はリンネアサヒで、1600年の時に20歳だったから、今は6歳、、、黒髪一重で白い肌をしている男の子。チャームポイントは両頬についたそばかすで、、ってそこはどうでもいいか。両親は既に他界していて、一人暮らし。僕がいるところは、クレナイ家が治める火の国。6歳までの記憶はあり、関わりのある人は5代目クレナイ家当主のクレナイホムラくらいか。今日は魔導アカデミーの入学式で、、、って!!
「今何時!?」
「ただいま8時50分」
魔力式端末、通称Miriが無機的な音声で答える。
「やばい遅刻する!!」
僕は急いで家を飛び出した。
―――
家のドアを開けるとそこは火の国が広がっている。火の国といっても、街が火に覆われているだとか、近く活火山があって噴火しているだとか、そのような過酷な国ではない。クレナイ家当主の城を中央に起き、そこから放射状に大通りが広がっている。クレナイ家の城に近いほど身分が高く、その近くでは書院作りや数寄屋作りの木造の美しい建築が並んでいる。僕はどこに住んでいるんだって?僕は大通りハズレのボロ小屋だよ!ホムラ様が用意してくださったからこれでもマシなんだけどね!まあ将来は高貴な身分になっているかもしれないな、、、なんて無理があるか。実際、身分は血統で決まる。血筋が全てなのだ。僕のように両親のいない孤児には夢も希望もないのだ。って悲観している暇はないな。アカデミーは北大通りの一丁目である。僕の家は北大通り5丁目、、、つまり4丁目分を走っていかなければならない。今は8時50分で入学式は9時00分。ここからアカデミーまでは走って1時間ってとこか、、
「うん、間に合わないな、、」
誰が見たって絶望的である。どうしようもないな、、とため息をついた時
「誰かあああああああ、助けてくれえええええ」
大きな悲鳴が裏の路地で響いた。裏で誰かがリンチにでもあっているのだろう。このようなハズレの街ではよくあることであった。
僕は勘弁してくれよと思いつつ、見て見ぬ振りをして通り過ぎようとした。おそらく転生前であったらそうしたはずだ。直感的にそう思った。本当なら助けたいところだが、僕には力がない。だから、人が襲われているところを見て見ぬふりをするしかないし、襲われている人にはその現実を受け入れてもらうしかない。それが世界の現実。
しかし、なぜかむしゃくしゃした。ただただ、むしゃくしゃした。それだけだった。脳裏に言葉が響く『世界が憎くないか、世界を変えてみろ』
この感情は憎しみなのか、怒りなのか、哀れみなのか、、、僕にはわからなかった。
しかし、この感情を抱えて、僕は裏の路地へ入っていった。