ーアサヒの転生ー
処女作です
暖かい目で見守ってください。
プロローグ
暦1600年、後世で魔界大戦と呼ばれた戦火の中に僕はいた。
魔法により、腹を抉られ、僕の命は消えようとしている。朦朧とした意識の中、それだけは感じていた。
人にとって、死とは恐怖そのものであろう。
だが、不思議と、僕の心は落ち着いていて、自分の人生を耐え抜いたという達成感と、苦しみから解放されるという安心感だけが満ちているように感じた。
ああ、なんて僕はシアワセなんだろう。
そう、感じた。
だがこの胸につっかえる感情は何だろう。
ふと空を見た。地上はこんなに苦しいのに、雲は我関せずとばかりに風に流されている。
あの雲を見るといつもあの人を思い出してしまう。
僕の故郷にいて、いじめられていた僕の話をいつも笑って聞いてくれたあの娘のことを。
あの娘も同じ空を、我関せずとばかりに見ているのであろうか、、、
そう思うと寂しい気がした。
だが僕には彼女を想う資格はない。。
彼女とは身分上叶わない恋だったのだ。だから今更、未練を感じるのは烏滸がましいというものであった。
ああ、イイ人生だった。
そうして僕の人生は幕を閉じる
―――はずであった。
瞬間、僕の脳裏に激痛が走り、意識が覚醒する。
体中の血管が浮き出て、血が激しく脈動しているのを感じた。
『オマエはソレでイイのか』
頭に重鈍な声が響く。
その声は戦乱の前に聞いた、家門当主の声に似ていたが、また似つかないような神聖な響きを帯びていた。
「っダレだ!!」
僕は今にも死ぬ寸前だったが、空いた腹に力を込めて、叫んだ。そうじゃないと自分の声が届かない気がしたから。
『オマエはこの世界が憎くナイのか』
憎んでる?この僕が!?
「何を憎もうというのだ!!」
『この世界が憎くないのか』
「憎くないさ!!だってこの世界は僕にとって残酷じゃないか!受け入れるしかないこの世界をどう憎めというんだ!!」
もう痛みなど感じていなかった。腹からは血が溢れ、臓器が飛び出ていたが、そんなことはどうでもよかった。ただこの声に対しての怒りが僕を支配していた。
全てを受け入れ我慢していた。死により全てが解放される気がしていた。それなのに!それなのに!この声は僕の生き様を馬鹿にしている気がした。
「そうさ!!受け入れるしかなかったんだ!この戦争で死ぬことも!初恋のあの娘と結ばれないことも!」
『お前の中に、力が宿っていると知ってもか』
―――!
力?
『そう、お前だけの力だ』
「だから、、どうしろと、、それを知って今更何もできやしないじゃないか、」
『今、それを発現する時が来たのだ。宿ったのは転生の力。お前は再びこの世界をやり直す。』
テンセイ?、、理解が追いつかない、、
『この受け入れるしかない世界を、変えてみろ』
―――僕の記憶はそこで途切れたーーー