決闘
「ボス!また一台やられました!」
シーノが乗るセダンの運転手が大声で報告した。
目の前では逃げる市役所職員の車に追いつきかけた車が、道を大きく外れ電柱に突っ込んでいる。
「んなこたわかってる!構わず追え!」
ルーフから身を乗り出し機関銃を構えるシーノは、車内に檄を飛ばす。
「はっはっは!リースの犬どもめ、蜂の巣にしてやるぜぇー!」
シーノは豪快に笑いながら、前方を走る白いスポーツセダンのテールランプに機関銃をぶっ放した。
「・・・アミス、野郎を月まで吹っ飛ばす。準備してくれ。」
少しの沈黙の後、フタミは指示を出し天井のスイッチを操作してルーフを開放した。
そして、アミスは後部座席の背もたれを倒し、トランクから太い筒状のロケットランチャーを引っ張り出すと、座席の間からフタミに差し出す。
ロケットランチャーを受け取ったフタミは、先端を開いたルーフに立て掛け取り出しやすいよう位置を調整すると、短機関銃のマガジンを新しいものに交換し屋根に身を乗り出した。
外に出ると走行風が容赦なくフタミの後頭部を叩く。視線の先数十メートルには同じように身を乗り出すシーノが笑いながら機関銃をぶっ放している。
フタミも口角を上げ、短機関銃で牽制射撃を始めた。
「ふはははは!一騎打ちか!おもしれぇ!」
銃を持ったフタミの登場に、シーノのテンションは更に上がる。
「おい、ケツを突いてやれ!」
運転手を蹴飛ばしながら指示を出し、四十五口径弾を巻きながら逃げるスポーツセダンに銃撃を加えた。
「アルカ、もっと速度上げろ!シーノが追い上げてる!」
牽制にも怯まず接近するシーノに脅威を感じたフタミは加速を促した。
「アクセルベタ踏みッスよ!そっちでなんとかしてください!」
アルカからネガティブな返事が返ってくる。
「クソ・・・ッ!」
追い込まれ焦りが見え隠れするフタミだが、流れをこちらに向けるべく引き金を引き続ける。
「い・・・っ!!」
フタミの左肩に銃弾が掠め、熱を帯びた痛みが走る。同時にシーノのセダンが接触した。
衝撃で立て掛けたロケットランチャーとともに、フタミは車内に落下した。