激戦
複数の黒塗りセダンに追われながら、車通りがまばらな市街地を爆走するフタミ達のスポーツセダン。
「奴らも中々しぶといねぇ。」
セダンからの体当たりと一般車を回避しながら、アルカは楽しそうに言う。
「あれだけのことをすれば当然こうなるわ。」
拳銃を手に追手の様子を伺うアミスは、独り言とも取れるアルカの発言にドライな口調で返した。
そして、車の遥か前方に明滅する赤と青の光が出現し、程なくして道路を封鎖する数台のパトカーとバリケードを形作る。
「うおっとぉ!?」
道路封鎖にまっすぐ突っ込みそうになったアルカは、声を上げながら華麗なハンドルさばきで車体を横に向けた。その瞬間、バリケードに張り付いていた警官達の銃が一斉に火を吹く。
車は止まることなく側道に滑り込んでいく。その途中、後部のドアウインドウに被弾し、銃弾がアミスの前を通過した。
「・・・相変わらずシーノと警察は仲が良いな。」
急旋回によってドアに張り付いていたフタミが体勢を立て直しながら言う。
「大丈夫ですかぁ?フタミさん。」
フタミの状態を横目で見たアルカは、満面のわざとらしい笑顔をした。
「大丈夫だ。それより追ってきてるぞ。」
先ほどからミラーに煌々と反射するヘッドライトに加え、パトライトの明滅が周囲の景色にまでチラついている。
「パトカーが三台追加。」
後ろを確認したアミスが報告を上げた。
サイレンの音に混じりスピーカーで止まれ的なことを喚いている。
「数が多いですねぇ。フタミさん、切り札を使いましょう。」
「まだ早い。あれはシーノに使う。」
そんなやり取りをしていると、追いついてきたパトカーが両サイドに並ぶ。
「・・・っ!」
瞬時にアミスとフタミは銃を構えた。
パトカーの中で同じような姿勢を取る警官と、鏡写しのように向かい合う銃口。
次の瞬間、両サイドのパトカーが炎を上げて吹き飛んだ。
「ふぉうっ!!」
アルカはテンション高らかに叫ぶが、フタミとアミスは突然の出来事に銃を構えたまま警戒している。
そして、一台のパトカーが並ぶ。
二人はそのパトカーに銃口を指向し、引き金に指を掛けるが、直ぐに指を外し銃を下げた。
パトカーにはオギノが乗っていた。そして、その手には砲口から煙を上げるリボルバーランチャーが握られているが、すぐに助手席に放り投げられ空いた右手にスマホが持ち換えられる。
不意にフタミのスマホが着信を告げ、確認するとディスプレイにはオギノと表示されていた。
「助かりました。」
通話と同時に感謝の念を伝える。
「フタミさん、派手にやってますけどあんまり仕事増やさんでくださいよ。」
「すみません。保証出来ません。」
オギノの苦言に対し、フタミは率直に返した。
「・・・とにかく、すぐ後ろに機銃を持ったシーノがいます。気いつけてください。私はこれで・・・」
一方的に電話が切られると、パトカーは離れていった。
そして、後部からカン、カンという音が響く。
「奴ら撃って来てますねぇ。」
「シーノのお出ましね。」
実況するアルカに後ろを見ていたアミスが現状を伝える。
三人が乗るスポーツセダンの背後には四台の黒塗りセダンが張り付き、その内の一台からはシーノがルーフから上半身を出し機関銃を乱射している。
「後ろは防弾仕様になってるから抜けることはない。」
フタミは冷静に言い放った。
ガン、ガン、バリン。
しかし、激しい音が鳴り防弾仕様のリアガラスとカーステレオに穴が開く。
「抜けたわね。」
クスリと笑うアミス。そして、一台のセダンが横付けしようと追いすがってくる。
しかし、アミスが真横に来た運転手の頭を正確に撃ち抜き、セダンを強制的に下げさせた。