突破
座敷や曲がり角から湧くように出てくるシーノの手下達を、短機関銃で薙ぎ払いながら長い廊下を前進するフタミ、そしてその後ろに連なり、後方や側面からの襲撃に拳銃で対処するアルカとアミス。
「全く、兵隊を何人連れてきやがったんだ?」
空になったマガジンを交換しながらフタミがぼやく。
「弾が持つかしら?」
それに答えるようにアミスが口を開く。
「いやー、銃を統一しとくべきでしたね。」
そう言ってアルカは弾切れの拳銃を捨て、手下が落とした銃を拾う。
三人の使う銃の口径は四十五口径、三十二口径、九ミリとバラバラだ。
「検討した方が良さそうだな。」
進行方向上に人影が飛び出し、フタミは反射的に銃口を向ける。しかし、その人物は割烹着を着た従業員で怯えたように両手を上げた。
フタミは銃口を横に振って退くように促し、道を開けさせた。
従業員の前を三人が通過していく。
しかし、通り過ぎた後にその従業員は懐から小型拳銃を取り出し、三人の背中に狙いをつけるが、それに感づいたアミスが振り返り従業員に扮した手下を排除した。
そして、料亭から外に飛び出す三人。
しかし、出口を複数の黒塗セダンで取り囲み待ち受けるシーノの手下達。
「おっと・・・」
思わず飛び出たフタミの言葉とともに、三人が出口に引っ込む。
しかし、それを見計らったかのように突然一台のセダンが爆発する。それを皮切りに次々と爆発が発生し手下達はパニックに陥った。
「よし、今だ。」
出口から頭を出し、外の様子を確認したフタミはそう言うと二人を引き連れ、包囲された料亭を脱出した。
「ふう・・・」
料亭の向かいにそびえ立つビルの屋上で、リボルバーランチャーを片手に双眼鏡を覗く長身のメガネを掛けた男が一つ息を吐く。
この男はオギノ。秘書の一人でフタミ達実行部隊の援護を担っている。
「久しぶりに派手な仕事やね。」
オギノは目を細め少し楽しそうに言いながら双眼鏡を外し、遠目にグレネード弾の直撃により炎を上げる車両達を眺めた。
「おや?」
しかし、その中に僅かな変化を認めたオギノは再び双眼鏡を覗く。
視線を料亭の玄関に合わせると、そこからのしのしと出てくるシーノが見えた。その手にはベルト状の弾薬がぶら下がる汎用機関銃が握られている。
「あいつらしくじったか・・・。今夜は遅くなりそうやね。」
どこからともなく現れたセダンに乗り込み、去っていくシーノを見届けたオギノは、手早く荷物をまとめ屋上を後にした。
「なんで頭を撃たなかった?」
走り出すスポーツセダンの助手席に座るフタミが、ハンドルを握るアルカを問い詰める。
「いや、そもそもフタミさんがマシンガンで追い打ちをすれば済んでた話っすよ?」
それに対し煽り混じりの開き直りを発動するアルカ。
「んだと?」
「フタミ、バカに構ってる余裕はないわよ?」
後部座席からアミスの声が飛ぶ。
「アミスさん、バカって俺のことですか?ひどーい。」
なおもふざけ続けるアルカ。
「クソ・・・ッ!」
悪態をつきながらフタミがスマホを取り出し、何処かに発信をする。